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宇宙開発利用

5.GXロケット(J-Ⅱロケット・先端技術実証ロケット)

第三章 日本の輸送系技術の発展

1.開発までの経緯

 宇宙開発事業団(当時)は1997年(平成9年)にJ-Iロケット改良型の検討に着手し、翌1998年(平成10年)には石川島播磨重工業(IHI)と日産自動車を業者として選定した。これは第1段に米国のアトラスⅡAS用燃料タンクとロシア製のNK-33エンジンを使用することで、安価かつ高性能な中小型商用ロケット打上げ能力を実現しようとするものであった。また2段目には宇宙開発事業団が開発していたLNG推進系を採用し、将来の輸送系に資する先端技術に安価な実証機会を提供することをも狙いとされた。打上げは当初2001年(平成13年)冬とされていた。
 1999年(平成11年)には「先端技術実証ロケット」と改称し、開発研究着手が宇宙開発委員会にて了承された。しかしH-Ⅱロケット8号機の打上げ失敗(1999年(平成11年)11月15日)により、宇宙開発委員会はH-ⅡAロケットの開発を着実に行うためとして、先端技術実証ロケットの開発先送りを決定した。
 その後、同計画は科学技術庁・宇宙開発事業団・通商産業省・民間の四者共同プロジェクト(主導は民間)として継続することが決定された。このために石川島播磨重工業株式会社(現・株式会社 IHI)、株式会社IHIエアロスペース、三菱商事株式会社、川崎重工業株式会社、日本航空電子工業株式会社、富士重工業株式会社、コクサイエアロマリン株式会社の共同出資により、ギャラクシー・エクスプレス社(GX社)が設立された(後に日本電気株式会社、ロッキードマーチン社が参加)。2001年(平成13年)からは契約相手方をIHIから正式にギャラクシー・エクスプレス社に移すとともに、1段にRD-180エンジンを用いるアトラスⅢの1段に変更した。
 2002年(平成14年)、宇宙開発委員会はLNG推進系飛行実証プロジェクトに対し、LNG推進系プログラムのロードマップとLNG推進系飛行実証プロジェクトの位置付け、基盤技術の成熟度、打上げ安全に必要な技術情報の開示などの指摘事項を示し、開発には着手せず研究を継続するのが望ましいとの見解を示した。その後、宇宙開発事業団側が示した対応策を審議した結果、2003年(平成15年)に開発への移行が妥当と判断された。

 しかし2段ロケットの基本設計を開始してみると、比推力の大幅低下、質量の大幅超過、複合材推薬タンクの実機大サイズ試験での剥離の発生などトラブルが相次いだ。その代替策として推薬供給方式をガス押し方式からブーストポンプ方式金属タンクに変更したこともあって、開発予定は大きく遅れた。また、ブーストポンプエンジン成立性確認のための実機大エンジン試験で、「燃焼圧力変動」が発生し、技術問題点とその解決のために、LNG推進系開発費の増大と、スケジュール遅れが明確となり、2006年(平成18年)、宇宙開発委員会にて中間評価が実施されることとなった。宇宙開発委員会の中間評価において、燃焼圧力変動についての技術的対応策は概ね妥当と評価できること、再生冷却エンジンの研究を加速すること、ブーストポンプについてバックアップとして開発を継続すること、遅くとも1年半後までに再評価を実施することとの総合評価が示された。

 その後、アトラスⅢが段階的に廃止されてきたことに伴い、一段としてアトラスⅤを使用することによる民間負担が増大する状況となり、民間から、これまで民間主導で行ってきたシステム設計や一段ロケットなどについて、JAXAが開発主体となって進めることが要望された。
 これに伴い、宇宙開発委員会では「GXロケット評価小委員会」を設置して2008年(平成20年)に調査審議を実施したが、議論で指摘された懸念を踏まえて評価小委員会が提示した課題についてのJAXA側の回答が不十分であったこともあり、評価結果をまとめるには至らなかった。その後宇宙開発戦略本部において、GXロケットに関する検討が実施され、2009年(平成21年)8月25日、宇宙開発戦略本部の構成員である内閣官房長官、宇宙開発担当大臣、文部科学大臣、経済産業大臣の4者により「GXロケットの今後の進め方について」がとりまとめられた。この文書において、

  • GXロケットについては、需要の見通し、全体計画・所要経費についてのデータが不十分であり、GXロケットの本格的着手を判断できる状況にない
  • LNG推進系については、技術的な見通しも概ね得られており、国際的優位性の高い日本発の技術であるとともに、将来の他のプロジェクトなどでの利用が見込まれるものであることから、我が国の技術として確立されることが必須である

とされ、平成22年度概算要求においては、LNGエンジンの地上での開発に係わる経費を計上することとし、GXロケットについては、上記課題への対応に進展が見られた場合に、予算編成過程において必要な対応を行うこととされた。
 その後2009年(平成21年)12月、行政刷新会議が実施した事業仕分けの結果等も考慮して、再び内閣官房長官、宇宙開発担当大臣、文部科学大臣、経済産業大臣の4者により「GXロケット及びLNG推進系に係る対応について」がとりまとめられた。この中で、

  • 政府としては、GXロケットの開発には着手せず、取り止めることとする
  • LNG推進系については、技術の完成に向けた必要な研究開発(高性能化・高信頼性化など)を推進する

ことが決定され、GXロケットの開発は中止されるに至った。

2.ロケットの構成(平成20年のGXロケット評価小委員会への報告資料より)

(a)第1段ロケット

 信頼性が高く、実績も豊富なロシア製エンジンRD-180を使用しているアトラスVの1段を使用する。

(b)第2段ロケット

 JAXAが開発している新型のLOX/LNG推進系を搭載する。
 このLNG推進系は液体酸素と液化天然ガスを使用するもので、H-ⅡAロケットで使用されている水素推進系に較べて性能面では劣るものの、

  • 宇宙空間で蒸発しにくく、長期間の運用に適する
  • 推進薬が安価で、打上げ経費等の低減が可能
  • 爆発などの危険性が低く、安全性が高い
  • 高密度のため推進薬タンクを小型にでき、大型ロケットのブースタに適している

などのメリットが挙げられる。

 GXロケット全体での打上げ能力は、低軌道(LEO:高度200km)で約4,000kg、太陽同期軌道(SSO:高度800km)で約2,000kg。これはH-ⅡAロケットの約2分の1、M-Vロケットの約2倍にあたる。

(c)打上げ運用システム

 種子島宇宙センター大崎射場を使用する計画であったが、打上げコスト低減のため、米国空軍施設の使用も検討されていた。

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)

-- 登録:平成23年02月 --