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宇宙開発利用

(3) H-ⅡAロケット

第三章 日本の輸送系技術の発展3.H系ロケット

1.実施に至った経緯

 H-ⅡAロケットはH-Ⅱロケットで蓄積された技術に依拠しつつも、部品調達、構造、組立作業に至るまで全面的な見直しが図られている。
 その基本的なコンセプトは、徹底的な簡素化による信頼性の向上とコストダウンである。
 例えばメインエンジンとなるLE-7AはH-Ⅱロケット用のLE-7エンジンを改良したものであるが、高温にさらされるメイン噴射器部分の溶接個所が1/10まで減少し、代わってコンピュータ制御の工作機械による一体削りだしが多用されている。LE-5Aエンジンを改良したLE-5Bエンジンや補助固体ロケットブースターSRBを改良したSRB-Aでも同様な簡素化が図られ、この結果、部品点数はH-Ⅱロケットの35万個からH-ⅡAロケットでは28万個まで減少している。
 またH-Ⅱロケットでは部品レベルまで純国産化が目指されていたが、H-ⅡAでは信頼性が高く価格も安い外国製部品の導入によって打上げコストを大幅に低下させ、例えば4号機の場合はH-Ⅱロケットの半分近い93億円まで低下させた。

2.プロジェクトの目的と目標

(a)多様な宇宙活動の展開への柔軟な対応能力の向上

 宇宙への運搬手段には、多くの種類の人工衛星打上げ、宇宙ステーションへの資材運搬など様々なミッションが要求されるようになってきた。H-ⅡAロケットでは、固体ロケットブースター(SRB)、補助ロケットブースター(SSB)の数を調整することで、打ち上げられるペイロード質量を変えることができ、様々なミッションに対応できるようになった。

(b)ロケットの製作、整備作業費用の削減

 H-ⅡAロケットでは、機体の開発期間の短縮やコストダウンが図られ、ロケットの打上げ費用をH-Ⅱロケットの半分とすることが目標とされた。
 設計の簡素化、製造作業・打上げ作業の効率化により、同じ打上げ能力では、H-ⅡAロケットの半分の打上げ費用で打上げられるようになった。第1段ロケットのメインエンジンであるLE-7Aエンジンでは、H-ⅡロケットのLE-7エンジンから配管の取り回しをシンプルにしたり、溶接部分を減らしたりする簡素化を行い、費用を削減するとともに信頼性を向上させた。

3.実施内容

(a)H-Ⅱロケット8号機の原因究明からの反映

 H-Ⅱロケット8号機失敗の主な原因が、LE-7エンジンの燃料ターボポンプ用インデューサ翼が疲労破壊したためと推測されたため、この教訓を反映して、H-ⅡAロケット用LE-7Aエンジンの開発に当たっては、

  • エンジン作動確認範囲の拡大
  • 飛行時ターボポンプ入り口圧力条件での作動確認の強化
  • 水素ターボポンプインデューサ確認試験の実施(インデューサ単体/ターボポンプ単体)

などの対策が盛り込まれた。
 このうち、水素ターボポンプ単体での試験では、入口圧力がある値以下になると軸振動が急増することが判明した。このため、H-ⅡAロケット初号機ではエンジン推力を低めに設定することでターボポンプ回転数を抑制し、またタンクの加圧制御を見直すことで圧力を高めに設定し、ターボポンプの使用条件を緩和するなどの対策がとられた。またH-ⅡAロケット2号機以降に搭載されるLE-7Aエンジンについてはインデューサの吸い込み特性を改善する設計変更が適用された。

 また、H-Ⅱロケット8号機の事故原因であるLE-7エンジンの故障原因究明や宇宙開発委員会特別会合の審議などから、H-ⅡAの開発体制には以下のような改善が加えられることになった。

◎宇宙開発事業団とメーカの役割・責任関係
 ・ 製造現場における品質保証責任の明確化

◎宇宙開発事業団の組織・体制・業務運営の改革
 ・ 品質保証活動の強化
 ・ 研究開発活動の強化
 ・ 技術基盤の確立と確実な開発
 ・ 独立技術評価体制の強化
 ・ 高度情報化環境への移行

◎H-ⅡAロケットの開発強化
 ・ LE-7Aエンジン合同開発チームの設置

 H-Ⅱロケットの打上げが2回連続で失敗したことを受け、初号機打上げ前の試験検証を強化し、H-ⅡAロケットの開発を確実なものとするために、以下の試験を実施して信頼性の向上が図られた。

  1. LE-7Aエンジンを追加製作してより厳しい条件で燃焼試験を行い、耐久性に関するデータを蓄積する。特に、LE-7エンジンの事故要因と考えられるエンジン入口のキャビテーションに伴う圧力変動に関する試験を重点的に行う。
  2. 従来よりも厳しい条件(高圧燃焼作動、長秒時累積作動)下でLE-5Bエンジンの燃焼試験を行い、エンジン各部の設計余裕(耐久性)に関するデータを取得し、信頼性の向上(実証)を図る。
  3. 固体ロケットブースタ(SRB-A)の地上燃焼試験において、ノズルの一部に設計条件を越えるエロージョンが発生したことから、改良型ノズルを搭載したSRB-Aを使用して地上燃焼試験を実施し、対策の妥当性を確認する。
  4. SRB-Aと1段目の分離に際して使用される火工品の衝撃が弁などのエンジン機器類に悪影響を与えないことを確認するため、実機と同じ火工品を点火作動させて、1段エンジン部に分離衝撃を負荷する試験を行う。
  5. H-ⅡAロケットではH-Ⅱロケットに比べてフェアリングと第2段付近の分離機構が簡素化されており、分離用火工品の作動温度が低下することから、従来よりも低い温度で火工品の作動試験を行う。
  6. 実機と同一仕様の誘導機器と搭載ソフトウェアを用いて、誘導制御系の組合せ試験を行い、誘導機能を確認する。
  7. H-Ⅱロケット8号機の打上げ失敗により中断されていた地上試験機の総合試験を実施したのち、H-ⅡAロケットの打上げに移行する。

(b)H-Ⅱロケットからの主要変更点

a)H-ⅡAの第1段エンジン
 H-Ⅱロケットの8号機は、第1段ロケットエンジンの燃焼異常停止により、指令破壊を行い、打上げに失敗した。
 第1段ロケットのメインエンジンであるLE-7Aエンジンでは、H-ⅡロケットのLE-7エンジンから配管の取り回しをシンプルにしたり、溶接部分を減らしたりする簡素化を行った。結果、LE-7エンジンと同じ真空中での約112トンの推力を維持しつつ、信頼性の向上に成功した。

b)第2段エンジン
 H-ⅡAロケットの第2段ロケットでは、エンジンをLE-5Aエンジンから改良したLE-5Bエンジンに改良した。H-Ⅱロケットでは、第2段ロケットの宇宙空間での再着火により、複数の軌道に衛星を投入することができたが、H-ⅡAではLE-5Bの再々着火機能により衛星の静止軌道直投入、複数衛星の異なる軌道への投入、月・惑星探査軌道投入など多様なミッションに対応できるようになった。

c)固体ロケットモータ
 H-ⅡAロケットでは、H-Ⅱロケットの固体ロケットブースターを改良したSRB-Aと補助ロケットブースターであるSSBの2種類の固体ロケットモータを装着できるようになった。SRB-Aは2基または4基、SSBは0基、2基、4基の装着が可能であり、下記のバリエーションにより、打上げ能力を調整することができるようになり、より多様なミッションに対応できるようになった。

  • 202型:SRB-A 2基
  • 2022型:SRB-A 2基、SSB 2基
  • 2024型:SRB-A 2基、SSB 4基
  • 204型:SRB-A 4基

 H-ⅡAロケットのSRB-AはH-ⅡロケットのSRBから次の改善を行い、低コスト化、信頼性の向上を行っている。

  • セグメント結合部を配した一体型CFRPモータケースの採用
  • ノズル・スロート材に3DC/Cの採用
  • 電動アクチュエーターの採用
  • 取り付け方式を発射台からの切り離しが必要なホールドダウン方式から発射台との切り離しが不要なストラップ・オン方式への変更。
  • 推進薬製造工程の簡素化

d)電子機器
 H-ⅡAロケットの誘導制御機器はH-Ⅱロケットと同じストラップダウン慣性誘導方式で、完成センサユニット、誘導制御計算機で構成される管制装置を搭載している。

e)部品
 設計の簡素化により、信頼性向上、コストの削減がなされている。また、H-ⅡAロケットでは、独自の部品選定基準を設定した。1段目と2段目をつなぐ段間部では、H-ⅡAで炭素繊維複合材と発砲材のコアによるサンドイッチ構造により軽量化を達成した。

(c)認定試験及び実機製作段階に発生した問題点と対策

 LE-7Aエンジンの認定試験は、1999年(平成11年)から2台の認定エンジンによって開始された。この過程で発生した不具合と対策は以下のとおりである。
a)プリバーナ燃料エレメント折損
b)ノズル再生冷却チューブ溶損
 また機体システム試験(GTV-I)に供されていた実機型3号機では、
c)始動停止過渡時横推力過大
という問題も発生した。
 このうち、a)については、フィルム冷却流量変更による共振回避という対策がとられたが、b)とc)についてはいずれもノズル下部を板金、フィルム冷却とした構造に起因するため、H-ⅡAロケット初号機打上げ予定である2000年(平成12年)までの完全な対策は困難と判断され、当面の打上げには下部ノズルを装着しないエンジンを使用することとした。

 その後、H-Ⅱロケット8号機の失敗により認定試験は一時中断される。 H-ⅡAロケット初号機が2001年(平成13年)に延期された上で認定試験は再開されるが、2000年(平成12年)10月に実施された試験機1号機用エンジン領収燃焼試験では以下のような不具合が発生した。
(ア)酸素タンク加圧用配管ベローズの流体励起振動による破損
(イ)酸素ターボポンプケーシングニッケルのメッキ剥れ
(ウ)ノズル冷却管ロウ付け侵食
 このうち(ア)についてはベローズの設計変更、(イ)についてはメッキ補修の非適用という形で対策がとられた。(ウ)についてはバインダ混合量の抑制と炉の圧力・温度制御によりバインダ揮発を促進することで対策した。

 LE-5Bの認定試験にあたるフェーズ2試験は1997年(平成9年)から1999年(平成11年)にかけて行われた。ここで発見された不具合としては、
(エ)ニューマティックパッケージ作動不良
(オ)エンジン作動点シフト
(カ)水素ターボポンプディスクシャフトクラック
の3点で、(エ)については部品寸法公差見直しとベントポート共通化、(オ)については酸素ターボポンプタービン入口に整流ベーン装着、(カ)についてはショットピーニング適用と隅R拡大の対策がそれぞれとられた。

  • 2段式
  • 全長:53m
  • 外径:4.0m
  • 打上げ能力:低軌道 約10t、静止軌道 約2.5t

(d)H-ⅡAロケットの実績

 H-ⅡAロケット初号機は、2001年(平成13年)8月29日に種子島宇宙センターより打ち上げられた。
 打上げ形態はSRB2本を装着する最も基本的な形態とされ、ペイロードには実用衛星ではなく性能確認用ペイロード(VEP-2)レーザ測距装置(LRE)が搭載されていた。
 打ち上げられたH-ⅡAロケット初号機は予定された飛行経路を飛行し、40分後にLREを所定の静止トランスファ軌道に充分な精度で投入した。

試験機1号機
 2001年(平成13年)8月29日 H-ⅡAロケット性能確認用ペイロード(VEP-2)、レーザ測距装置(LRE)の打上げ成功。

試験機2号機
 2002年(平成14年)2月4日 民生部品・コンポーネント実証衛星「つばさ」(MDS-1)H-ⅡAロケット性能確認用ペイロード(VEP-3)及び高速再突入実験機(DASH)の打上げ成功。

3号機
 2002年(平成14年)9月10日 データ中継技術衛星「こだま」(DRTS)次世代型無人宇宙実験システム(USERS)打上げ成功。

4号機
 2002年(平成14年)12月14日 環境観測技術衛星「みどりⅡ」(ADEOS-Ⅱ)小型衛星スピンバス技術衛星「マイクロラブサット」(µ-LabSat)鯨生態観測衛星「観太くん」(WEOS)及び豪州小型衛星(FedSat)打上げ成功。

5号機
 2003年(平成15年)3月28日 情報収集衛星1号A・B(レーダー衛星及び光学衛星)打上げ成功。

6号機
 2003年(平成15年)11月29日 情報収集衛星2号A・B(レーダー衛星及び光学衛星)打上げ。SRB-Aの分離に失敗し、高度及び速度が不足することから指令破壊された。

7号機
 2005年(平成17年)2月26日 運輸多目的衛星新1号「ひまわり6号」(MTSAT-1R)打上げ成功。

8号機
 2006年(平成18年)1月24日 陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)打上げ成功。

9号機
 2006年(平成18年)2月18日 運輸多目的衛星新2号「ひまわり7号」(MTSAT-2)打上げ成功。

10号機
 2006年(平成18年)9月11日 情報収集衛星光学2号機打上げ成功。

11号機
 2006年(平成18年)12月18日 技術試験衛星Ⅷ型「きく8号」(ETS-Ⅷ)打上げ成功。

12号機
 2007年(平成19年)2月24日 情報収集衛星レーダ2号機、光学3号機実証衛星打上げ成功。

13号機
 2007年(平成19年)9月14日 月周回衛星「かぐや」(SELENE)打上げ成功。

14号機
 2008年(平成20年)2月23日 超高速インターネット衛星「きずな」(WINDS)打上げ成功。

15号機
 2009年(平成21年)1月23日 温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)小型実証衛星1型(SDS-1)打上げ成功。公募により選ばれた以下の小型副衛星も同時に打ち上げられた。

16号機
 2009年(平成21年)11月28日 情報収集衛星光学3号機打上げ成功。

17号機
 2010年(平成22年)5月21日 金星探査機「あかつき」(PLANET-C)及び小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」打上げ成功。公募により選ばれた以下の小型副衛星も同時に打ち上げられた。

4.H-ⅡAロケット6号機の原因究明からの反映

 H-ⅡAロケット6号機は2003年(平成15年)11月29日に情報収集衛星(IGS)を搭載して種子島宇宙センターより打ち上げられた。しかし2本搭載したSRB-Aのうち1本が分離できず、高度及び速度が不足することが予想されたため、打上げ約10分後に指令破壊された。
 この事故の後、宇宙開発委員会調査部会は、H-ⅡAロケット6号機の打上げ失敗の原因究明及びその対策について調査審議を進め、メーカを含めたJAXAの業務の進め方について、これまでの提言等をフォローアップし、潜在的な問題が残っていないかを再検討するための「特別会合」を設置した。さらに、H-ⅡAロケットの確実な打上に向けて万全を期すための「H-ⅡAロケット再点検専門委員会」を設置し、JAXAの行う再点検について調査審議を行った。

 打上げ失敗の原因であるSRB-Aの分離失敗は、以下の過程で至った可能性が高いと考えられる。

  1. SRB-Aのノズル部内面にはノズルスロートとライナアフトB2の材質の違いによる表面後退の差で、ライナアフトB2前端部に周方向に一様な段差が発生する。
  2. この段差の影響により燃焼ガスの流れが乱れ、加熱率が高くなり、表面後退が進行する。
  3. 加えて、燃焼初期には、推進薬の光芒の影響による燃焼ガスの渦が形成され、表面後退の大きい領域が発生する。
  4. この領域のなかには、流れの揺らぎとCFRPにおける炭化層の形成に伴う、炭化層の保持力の低下等の影響が重畳されて、領域によっては、比較的深い溝に発達するものが現れる。
  5. 深い溝が進展し、CFRPの積層面と加熱面のなす角度が小さくなり、かつ、一定の幅を持った領域が形成されると、熱分解ガスの発生に伴う層間の圧力の増加や炭化層の保持力の低下等によって、層間剥離が発生し、CFRPの積層の脱落が起こる。この剥離と脱落が繰り返されることにより局所エロージョンが加速される。
  6. また、燃焼ガスが深くなった溝に向かって流れ込み渦を形成し、一段と動圧及び熱負荷の高い環境下となり、局所エロージョンが一段と加速される。
  7. ライナアフトB2の局所エロージョンの進行によって、ホルダBに燃焼ガスが到達し、その熱によりホルダBが溶融・破孔し、その結果、燃焼ガスが後部アダプタ内に漏洩した。
  8. 漏洩した燃焼ガスにより導爆線が加熱され、導爆線が機能を喪失したことから、SRB-Aの分離に失敗した。

 「特別会合」においては、信頼性向上のために速やかに実施すべき改革として、以下の具体的な対策を提言した。

  • JAXA及び製造企業の間の開発(設計を含む)・製造の責任分担体制の改革
  • JAXAにおける信頼性確保体制の強化

 さらに、国民から信頼される宇宙開発の実面に向けて、JAXA及び関係機関に着実な取り組みを求めるべき以下の事項を助言した。

  • 信頼性工場に重点を置いた開発の在り方
  • 組織運営、組織文化、教育・訓練
  • 宇宙開発に関する社会への説明責任と国民の理解

 「H-ⅡAロケット再点検専門委員会」においては、以下の項目をとりまとめ、技術的助言がJAXAにおける再点検に有効に反映されるよう、適切なタイミングで技術的助言を行った。

  • 課題の抽出手法及びリスク評価手法と当専門委員会の技術的助言
  • 課題の抽出結果及びリスク評価による課題の選別と当専門委員会の技術的助言
  • 「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」の対処方針と当専門委員会の技術的助言

 なお、JAXAにおける再点検の概要は以下のとおりである。

  • JAXAは、客観的な評価のため、製造メーカと共働作業を行うとともに、機構内外の有識者で構成される独立した立場の点検チームを設けた。
  • 点検対象範囲については、ロケットの機体機能だけではなく、飛行解析/飛行安全、ペイロードインタフェース系、射点/射場設備系を点検対象とし、設計から開発・試験・製造・運用までを対象とした。
  • JAXAが行った課題の抽出においては、(1)現在識別している課題の再評価を行うとともに、潜在的な課題に関しても、(2)詳細FMEA、(3)製造・検査・整備作業、(4)連鎖事象、(5)審査会指摘事項、の4つのアプローチ((2)~(5))により、あらゆる課題が抽出されるよう配慮した。
  • JAXAは、抽出された課題については、発生可能性と発生時の影響度に着目したリスク評価を通じて、「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」とそれ以外の課題に選別し、「打上げ再開に向けて対処を検討すべき課題」に対しては、対処方針案を作成した。

 「H-ⅡAロケット6号機打上げ失敗の原因究明及び今後の対策について」(平成16年6月9日宇宙開発委員会)において、今後の対策を以下のように取りまとめた。

H-ⅡAロケットに係る取組みについて

  • H-ⅡAロケットの打上げ再開に向けて、JAXAでは、ロケット全体の再点検において、設計の基本にまで遡り、疑わしい事項についてはそのリスクを評価し、必要な対策を講じるとともに、発生機構(メカニズム)が解明されていない要因は極力取り除くとの方針の下で、万全の措置を講じること。
  • 固体ロケットブースタについては、地上燃焼試験により十分なデータを取得した上で設計変更を行うとともに、今回の事故の原因となったと考えられる局所エロージョンについては、データの取得など基礎的な実験等を継続して行うことにより、定量的な評価が可能となるように努めること。

責任分担体制等について

  • 技術的な課題だけでなく、失敗の背後にある体制・システムの問題にも対処し、総合的に信頼性を向上させていくこと。
  • JAXAの能力・資源を開発に関する役割・業務へ集中するとともに、製造企業が能力に見合った役割・責任を負うため、プライム制へ移行することによって、この弱さを克服していくこと。
  • JAXAにおいて広く外部専門家の能力を活用して、第三者的な冷静な目で信頼性を確保する組織を設置することにより、JAXAの体制を強化すること。

今後の開発の進め方について

  • 開発の企画構想段階から、官民が連携・協働体制を構築し、イコール・パートナーシップの下で宇宙開発を進めること。
  • JAXAと製造企業の間だけでなく、製造企業相互間においても情報共有をより一層進めるとともに、徹底した問題解決志向でオープンに問題点を議論する風土が形成されること。
  • 各プロジェクトの要求条件(ミッション)について、意義・目標と技術上のリスクとのトレードオフを一層厳密に評価するとともに、性能と品質・信頼性を両立させることを第一義として開発を進めていくこと。
  • 重要なサブシステムは冗長化したりするなど、重要な機能を最後まで維持できるような高信頼性システム設計の構築に努めること。
  • 地上試験や解析を充実させ、飛行実証によるデータを含めた基礎データを蓄積し、確固たる基盤技術の獲得を進めるとともに、信頼性を高めるための手法等の充実に努めること。

JAXAの取組みについて

  • 原因究明及び業務の進め方等の調査審議を通じて指摘された点について、確実に実行すること。
  • JAXA設立の原点に立ち返り、旧3機関統合による総合力を発揮するとともに、国内外の関係者の協力を得つつ、一日も早く、我が国の宇宙開発の中核機関として前進する姿が明らかにされるようにすること。

 この事故の後、JAXAは、開発基本問題検討委員会、開発基本問題に係る外部諮問委員会、信頼性改革本部、開発業務・組織検討委員会、信頼性推進評価室などを立ち上げて信頼性の向上を図った。

 また、2002年(平成14年)6月には、H-ⅡAロケット標準型の技術を民間企業に移転して民間企業がH-ⅡAロケット打上げ輸送サービスを主導するとの方針が、総合科学技術会議及び宇宙開発委員会で打ち出された。2006年(平成18年)より三菱重工(MHI)がプライム企業として打上げを担当し、2007年度(平成19年度)よりMHIによる打上げ輸送サービスが開始された。

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)

-- 登録:平成23年02月 --