ここからサイトの主なメニューです

宇宙開発利用

(8) N-Ⅰ型ロケット

第三章 日本の輸送系技術の発展2.N系ロケット

1.実施に至った経緯

 Qロケットの開発に際して解決すべき課題が多く、打上げ対象である気象衛星の当初予定を大きく上回る衛星の大型化、日米技術協力協定に基づいた技術導入の見通しが明確になるなどの状況もあり、1970年(昭和45年)10月、宇宙開発委員会は従来の自主技術による固体燃料ロケットエンジン主体のQロケットとNロケットの二本立てロケットの開発を取りやめ、外国からの技術導入による液体燃料ロケットエンジンを主体とする新Nロケットの開発への変更を決定した。

2.プロジェクトの目的と目標

 N-Ⅰロケットは、以下の主要な要求条件を満たすことで、我が国における実用分野の人工衛星の大部分を必要な時期に打ち上げられる発展性の高い液体ロケットとして、宇宙開発事業団(NASDA)によって開発運用された。

  • 質量約100kgの衛星を静止軌道に打ち上げる能力を有すること
  • 将来、このロケットの改良により、より大型の静止衛星を打ち上げることのできる潜在能力を持つロケットであること
  • Qロケットで培われた技術は極力活用するとともに、必要とする外国技術は積極的に利用し、我が国のロケット技術の早急な向上を図ること
  • 1975年(昭和50年)度に1号機の打上げを行えるよう早期開発を図ること

3.実施内容

 N-Ⅰロケットは、米国のデルタロケットの技術を導入した3段式ロケットである。第1段は米国ソー・デルタの第1段を、当初は輸入し、以後ライセンス生産する。第2段はQロケットの開発成果を活かして国内生産し、必要に応じ、部分的に米国の技術を導入する。第3段はデルタ第3段を購入する。誘導制御方式については、日本で進めていた開発実績を参考にして必要技術を導入する。このように、国外技術と自主技術の両方を活用したロケットとして開発が実施された。

  • 第1段:酸化剤に液体酸素、燃料にケロシン(RJ-1:石油系燃料)を用いるMB-3-Ⅲ型液体ロケットエンジンで、地上推力は77t、推進薬供給はターボポンプ方式である。
  • 第2段:酸化剤に四酸化二窒素(NTO)、燃料にエアロジン50 (A-50:ヒドラジン系燃料)を用いるLE-3型液体ロケットエンジンで、真空推力約5.4t、へリウムガス押し供給方式を用いた。この種の推進薬は毒性は強いが常温で貯蔵ができ、自燃性(混合しただけで自然発火する)という利点があるため、今日でも各種液体ロケットに広く用いられている。第2段はそれまで小型ロケットを用いて国産で開発に着手していたものを米国の技術援助によって完成した。
  • 第3段:デルタロケット用の固体ロケットを購入したが、これはサイヤコール社製TE-364-14型ロケットモータである。
  • 固体補助ロケット:デルタと同じくサイヤコール社製キャスターⅡ (CASTER-Ⅱ)を購入及びライセンス生産した。
  • 衛星フェアリング:FRP製で、直径1.65mでダグラス社から購入された。
  • 姿勢制御:第1段のエンジン燃焼中の姿勢制御は対しては、ピッチ、ヨーについては、主エンジンのジンバリングによって行い、また、一対のバーニヤエンジンのジンバリングによってロール制御を行う。主エンジン停止後はバーニヤエンジンのジンバリングによって三軸方向の姿勢制御が行われる。第2段の姿勢制御は、第1段と基本的に同じであるが、バーニヤエンジンの代わりにガスジェット装置を用いる。第3段及び衛星は、スピンテーブル上に配置された8個の固体スピンモータによってスピン(回転)を与え、それによって方向安定を保つ。
  • 誘導方式:電波誘導と慣性誘導に大別されるが、N-Ⅰでは1968年(昭和43年)当時のデルタロケットレベルということで、それに相当する電波誘導方式を導入した。これはロケットの位置、速度、姿勢を地上で測定・計算し、必要な司令を地上から電波で送ってロケットを誘導するものである。この方式は地上局に依存するため、飛行経路が制約されるという問題がある。
  • 3段式(液体・液体・固体)
  • 全長:32.57m
  • 外径:2.44m
  • 打上げ能力:低軌道 約800 kg、静止軌道 約130 kg

1号機(N1F)

 1975年(昭和50年)9月9日技術試験衛星Ⅰ型「きく1号」(ETS-Ⅰ)打上げ成功。

2号機(N2F)

 1976年(昭和51年)2月29日電離層観測衛星「うめ」(ISS)打上げ成功。

3号機(N3F)

 1977年(昭和52年)2月23日技術試験衛星Ⅱ型「きく2号」(ETS-Ⅱ)打上げ成功。

4号機(N4F)

 1978年(昭和53年)2月16日電離層観測衛星「うめ2号」(ISS-b)打上げ成功。

5号機(N5F)

 1979年(昭和54年)2月6日実験用静止通信衛星「あやめ」(ECS)打上げ。分離直後の3段目が衛星に追突して軌道投入失敗。

6号機(N6F)

 1980年(昭和55年)2月22日実験用静止通信衛星「あやめ2号」(ECS-b)打上げ。衛星のアポジモータ燃焼異常で静止軌道投入に失敗。

7号機(N9F)

 1982年(昭和57年)9月3日技術試験衛星Ⅲ型「きく4号」(ETS-Ⅲ)打上げ成功。

4.成果

 1975年(昭和50年)9月の1号機による我が国初の技術試験衛星「きく1号」(ETS-Ⅰ)の打上げ成功から1982年(昭和57年)9月技術試験衛星Ⅲ型「きく4号」(ETS-Ⅲ)の間に7回の打上げを行っている。我が国では、本機の登場まで実用衛星のための打上げ実績はなく、打上げ技術確立に必要な多くのデータを本機によって取得している。

お問合せ先

研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付

(研究開発局参事官(宇宙航空政策担当)付)

-- 登録:平成23年02月 --