参考資料3‐1 米国トップクラス研究拠点調査の結果概要報告
平成19年3月22日
文部科学省科学技術政策研究所
調査概要
(1)調査目的
本調査は、我が国の研究拠点にとってベンチ・マーキングの対象となる米国のトップクラスの研究拠点を対象とし、その組織が持つ競争力の源泉を明らかにすることを目的とする。
(2)調査方法
米国のトップクラス研究拠点を選定し、現地インタビュー調査を実施。
A.調査対象拠点の選出
- 重点4分野および基礎科学領域において、米国で世界トップクラスの研究拠点であると目される研究拠点を選出するため、まず論文被引用数、研究開発金額ランキング等に基づくスクリーニングを実施した。
- スクリーニングの結果を参考にし、検討委員会において、調査対象拠点を選出(選出された拠点は次ページ参照)。
B.現地調査の実施方法
- 1次調査: 選出された研究拠点のトップ等を対象とし、組織構造や戦略・ビジョン等、トップ拠点たる所以についてインタビュー調査を実施。
- 2次調査: 調査対象拠点を絞り込んだ上で、研究者レベルを対象とし、研究者自身の視点からの研究環境や組織の特徴を調査。結果は現在取りまとめ中。
1次調査対象拠点リスト
※ 現在とりまとめ中の拠点
- スタンフォード大学・スタンフォードリニア加速器センター(基礎科学):Dr. Stephan Williams,Deputy Director
- ボストン大学・ナノサイエンス&ナノバイオテクノロジーセンター(ナノテクノロジー・材料):Prof. Mario Cabodi,Deputy Director
2次調査対象拠点リスト
- カーネギーメロン大学・ロボット研究所(情報通信):Prof. Christopher Atkeson,Dr. James Kuffner,Assistant Professor
- コールドスプリング・ハーバー研究所(ライフサイエンス):Prof. Nicholas Tonks
調査結果の概要
1.トップ研究拠点の要件として指摘された事項
(1)調査対象機関がトップ拠点である理由
- 世界中からトップクラスの優れた人材を引きつける力を持っていること。
(2)トップクラスの人材を集める具体的な要件
- 拠点創出のトリガーとなる明確なビジョンを示すビジョナリー・リーダー、優れた研究者を引きつける研究リーダーが存在すること(両者を兼ねるリーダーがいる場合と、別個に存在するケースとがある)。
ビジョンの例:MITグローバルチェンジサイエンスセンター
- 気候に関する個々の研究領域を統合した学問領域の“ビジョン”を提示
- 掲げたビジョンを実現するために、関連学部のキーパーソンとの連携を構築
- これらの結果として、学際的(inter-disciplinary)な研究領域を創出
※ 学部を超えたファカルティの連携を奨励するというMITの文化を背景に、経済学、マネジメント専攻、エネルギー部門の研究者が参画する学際的なプロジェクトを実現。
- 高いサラリーが必要であるだけでなく、研究パートナーとなりうる優れた研究者が在籍していること、特徴的な研究プログラムや研究設備等が存在すること。
2.マネジメントの特徴
(1)人事評価における定性的評価の重視
- 人事評価では定性的評価を特に重視。具体的には学内だけでなく、学外の一流研究者によるピア・レビューを重視。
- 定量的指標(論文被引用数)等はあくまでベースライン、分野に与えるインパクトが大きければ“数”は問題ではない。
(2)外部資金獲得の重視
- 外部資金獲得の重要性はほぼ共通。ただし、拠点によって研究者のオブリゲーションは異なる(資金獲得ができないと組織を追われるケース/インパクトある研究成果があれば獲得額を問われないケースの両方が存在)。
(3)リサーチトラックの採用
- 教育義務を課す通常のテニュアトラックだけではなく、研究に専念可能なリサーチトラックを積極的に採用している。
3.人材流動性と国際性
(1)ジュニアレベルとシニアレベルの流動性の違い
- 調査対象とした研究拠点に共通して、テニュアを持っていないジュニアレベルの人材の流動性は高い。ただし、研究者採用時のスクリーニングを重視し、その結果、内部昇格する研究者が多く、相対的に流動性が低いカーネギーメロン大学・ロボット研究所のケースも存在する。
- シニアレベルではテニュアを獲得し、流動性が低くなるケースが多い(例外としては、テニュア制度がないコールドスプリング・ハーバー研究所)。
(2)研究人材の国際性
- 人材の国際性が高い拠点が多いが、これは最優秀の人材を採用した結果であり、米国では、特に外国人比率を意識していない。ファカルティの国際性が低いトップ拠点もある(例:スタンフォード大学・スクール・オブ・アースサイエンス等)。