拠点構想等の概要(九州大学)

ホスト機関名 九州大学
ホスト機関長

有川 節夫(九州大学総長)

拠点長

Petros Sofronis

事務部門長

倉崎 高明

拠点構想の名称

カーボンニュートラル・エネルギー研究拠点

拠点名称

九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所

拠点構想の概要

次世代に対して環境にやさしいエネルギーを持続的に供給するためには、再生可能およびCO2排出を伴わないエネルギーを使用するグリーンイノベーションが求められる。この実現には、従来の学問体系を越えた基礎科学の融合から生れる技術的ブレークスルーが必要である。本拠点はカーボンニュートラル・エネルギー社会の実現を目標として、水素の製造・貯蔵・利用およびCO2回収・貯留に関する種々の課題を究明し、解決策を提示する。九州大学はイリノイ大学と連携して、国内外の多くの科学者が異分野融合研究を展開できる環境を提供する。外国人拠点長のリーダーシップにより運営される本拠点は、日本の大学の研究組織を変革するモデルとなる。

対象分野

対象分野:
化学、物理、材料、機械、地球科学、海洋科学、生物模倣学等を含む研究分野

対象分野として取り組む重要性:
地球温暖化、化石資源価格の高騰、化石資源の有限性などの問題は、代替エネルギー源やエネルギーキャリアの開発に向けて、社会的、経済的、技術的な駆動力となる。水素は、太陽光や次世代原子力エネルギーなどのCO2を排出しないエネルギー源を利用して供給するか、あるいはCO2の回収・地中・海洋貯留およびCO2の有用物質への変換技術などとの併用によって、上記の問題を解決できる主要なエネルギーキャリアとなりうる。この拠点の使命は、科学技術の融合的な展開によって解決策を提示し、環境調和型で持続可能な水素エネルギー社会の実現に貢献することである。本拠点の主要な研究課題は、高効率かつ低コストな水素製造、水素吸蔵材料、耐水素脆化材料、次世代燃料電池、物質変換、CO2の分離・回収および地中・海洋貯留、さらにCO2の有用物質への変換などであり、これらの課題に対して学問領域を融合させた研究を展開し、課題解決に貢献する。

研究達成目標 本拠点の最重要達成目標は、水素エネルギーの革新的で安全な製造・貯蔵・利用やCO2分離・回収、CO2地中・海洋貯留およびCO2の有用物質への変換技術等に関しての既存の学問体系を越えた基礎科学の確立である。そのためには、混相界面における気体と物質との相互作用を特徴づける反応、吸着、吸収、固溶、拡散などの原子・分子レベルの現象を解明する基礎科学が重要である。カーボンニュートラル・エネルギー社会の実現に向けての個々の研究における主な研究達成目標は次の通りである。
・人工光合成や革新的な環境調和型水素製造プロセスの実現
・安全・高信頼性耐水素脆化材料の創製
・最先端材料・デバイスによる次世代高性能燃料電池の創製
・水素貯蔵量6%以上の革新的水素貯蔵材料の実現
・廃棄物を最小化する高度な物質変換の実現
・革新的で低エネルギーなCO2分離・濃縮プロセスの実現
・CO2貯留技術およびカーボンニュートラルな水素社会への移行の科学的利点に関する情報発信
拠点運営の概要

本拠点の研究・運営スタイルは、拠点長の米国大学での経験や世界最高峰の研究大学の運営手法を取り入れたものであり、九州大学の機構改革のモデルとなる。
拠点は九州大学総長の直轄組織とし、拠点長及び部門長等から構成される運営委員会の意見を参考にしながら、拠点長が研究計画、研究体制、研究テーマ、予算執行等の管理運営に関する事項を直接決定できる体制を整える。また、国内外の著名な有識者から構成される外部アドバイザリー委員会は、拠点長の指導力、マネジメント能力、各研究領域の研究テーマの立案・計画・進捗状況などを含む拠点全体の評価を毎年行う。拠点長の下に、拠点のマネジメントを補佐する2名の副拠点長(九州大学に1名、サテライト拠点であるイリノイ大学に1名)をおく。事務部門長は拠点事務部門を統括し、研究者の支援を行う。英語を拠点事務部門の公用語とする。米国イリノイ大学にはサテライトオフィスを設置し、米国内の連携機関との共同研究等に関するマネジメント機能を持たせ、本拠点における国際共同研究の強化を図る。

拠点を構成する研究者等

主任研究者30名(うち、外国人11名)、研究者総数130名(うち、外国人55名)、拠点構成員総数204名を2013年度末までに達成予定。
主要な主任研究者:P.Sofronis、香月勗、成田吉徳、石原達己、安達千波矢、高原淳、小江誠司、草壁克己、堀田善治、中嶋直敏、佐々木一成、秋葉悦男、岡田益男、柳哲雄、L.Schlapbach、R.Ritchie, H.L.Tuller、L.J.Gauckler、J.A.Kilner、P.Chen、C.A.Chen
連携機関は、東北大学、東京大学、米国イリノイ大学、米国カリフォルニア大学、米国マサチューセッツ工科大学、米国サンディア国立研究所、英国インペリアルカレッジ、スイス連邦工科大学、中国清華大学、中国科学院大連化学物理研究所など。

環境整備の概要

拠点研究のミッションを推進するため、また、各研究領域に必要な研究者を確保するため、拠点長は主任研究者と共に、各研究課題の目的や目標の実現にどのように貢献できるかを記載したホワイトペーパーの提出を国内外の関連分野研究者に定期的に呼びかける。拠点長は、外部アドバイザリー委員会の意見も取り入れながら、これらのホワイトペーパーの内容を拠点全体のミッションと照らし合わせて評価し、研究部門に必要な研究者を採用することにより、研究環境の活性化・充実を図る。
拠点長は研究評価会議を毎年度開催し、この会合には外部アドバイザリー委員に加えて、当該研究分野の国内外の先導的研究者を招へいし、拠点の指導・運営体制を含む拠点全体のプログラム評価を依頼する。各研究プログラムを担当する主任研究者は、研究成果および他の拠点メンバーや連携機関研究者との共同研究によるシナジー効果、さらに今後の研究活動計画を報告するものとする。研究評価会議は各研究者の成果と研究計画に対して評価報告書を提出する。拠点長は、この評価報告書の結果を踏まえ、各研究分野・テーマへの研究費の配分を決定する。拠点は、大学、産業界、国立研究所などの研究者が参加する国際学会、シンポジウム、ワークショップを開催し、カーボンニュートラル・エネルギー社会の有用性を社会に情報発信する。拠点にふさわしい研究環境を整えるため、九州大学は最新鋭の研究施設を建設するとともに、最先端の研究設備・実験機器、テクニカルスタッフ等を充実させる。

世界的レベルを評価する際の指標等の概要

研究拠点の世界的な認知度と地位の指標として、1)掲載学術論文の質とインパクト、2)国際会議における基調講演および招待講演、3)拠点研究者による国際学会でのシンポジウム・討論会の主催、4)各国の政府機関が参加を希望するような新機軸を打ち出すワークショップ・シンポジウムの開催、5)拠点研究者の国際学会参加、6)拠点研究者の政府パネルへの招聘および国家的研究プログラムへの参加、7)特許や技術実用化実績、を挙げる。
また、研究拠点の国際的認知度の指標としては、九州大学への海外からの訪問者数と長期滞在外国人研究者数を考慮する。

研究資金等の確保

過去5年間の主な日本人主任研究者による獲得研究資金は、年平均21.5億円以上であり、今後も同程度の資金の獲得が十分期待できる。

ホスト機関からのコミットメントの概要

九州大学の中期目標・中期計画における研究戦略の柱は、「世界的研究・教育拠点としての位置づけ」、「卓越した研究者に対する魅力ある研究環境の整備」、「学問領域の融合による新たな学問領域の創成と発展」である。これに沿って、全学の資金的・人的資源を活用して研究拠点を支援する。具体的には、九州大学は以下の支援などを行う。
・拠点研究体制や予算執行等の拠点事務部門の設置
・部局と連携した拠点研究参加者への支援
・国際業務における英語対応の充実などの学内制度の見直し
・人事・報酬制度の見直し

-- 登録:平成23年03月 --