数物連携宇宙研究機構(IPMU) 1拠点構想等の概要(東京大学)

ホスト機関名 東京大学
ホスト機関長 小宮山 宏
拠点長 村山 斉
事務部門長 中村 健蔵
拠点構想の名称 数物連携宇宙研究機構
拠点名称 数物連携宇宙研究機構
拠点構想の概要 本拠点は、数学、物理、天文の連携により宇宙の起源と進化の解明を目指す世界に類の無い融合研究拠点である。現代基礎科学の最重要課題である暗黒エネルギー、暗黒物質、ニュートリノ、統一理論(超弦理論や量子重力)を主たる研究テーマとし、特に、世界トップレベルの数学者と理論物理学者の共同研究を展開することにより、統一理論に必須な新しい数学の創成を目指す。最新鋭実験施設からの精密データを解析する新しい数学的手法を開発する。また将来の実験への戦略・開発にも取り組む。このユニークな環境によって、創造性に富む優れた若手研究者が育成される。
対象分野
  • 数学と物理学の融合分野

    自然の基本法則の発見は歴史的に新しい数学を必要とし、またこれによって数学の重要な発展を促してきた。たとえば、1990年以降の数学のフィールズ賞の4割が場の量子論や弦理論といった素粒子の最先端の分野と深いかかわりのある研究に対して与えられた。この数十年の間に数学にこれほどインパクトを与えた分野は他にはなく、またこの傾向はさらに加速しつつある。日本では数学と物理学のそれぞれの分野で輝かしい成果がある。本拠点は世界トップレベルの数学者と物理学者を結集し、分野間の垣根を取り払い、より創造的な研究を可能にする環境を提供するものである。

    実験分野におけるわが国の優位は明らかである。スーパーカミオカンデとカムランドに代表されるニュートリノ観測実験では世界の最先端にある。また、すばる天文台を使った広視野撮像探査のための機器も製作中であり、完成後約十年間にわたり観測宇宙論や天体学において、きわめて優位な地位を占めることになる。世界最大の加速器であるLHCは今年度の終わりには運転を始め、宇宙のビッグバンを再現する素粒子衝突実験のデータを使った研究が可能になる。世界トップレベルの数学者、理論物理学者、天文学者および実験物理学者を一箇所に集め、上記すべての実験データを有機的かつコヒーレントに活用することで、宇宙の謎を解き明かすのが目標である。

    この構想は、純粋数学から理論・実験物理、天文学、応用数学に及ぶ広範な基礎科学分野を包含する世界に類の無い研究拠点を構築するものである。わが国が世界的に優位に立っている分野を戦略的に結集することで、国内外の第一線で活躍する研究者を当拠点に引きつけることを目指している。

研究達成目標 本拠点は、自然の基本法則、宇宙の始まりや終わり、暗黒物質や暗黒エネルギーの謎などの、宇宙についての根元的な疑問に答えることを目標にする。宇宙の統一的理解のために新しい数学を創造する。この数学の新展開によって、新しい物理理論から実験的に検証可能な予言を導くことが可能になる。技術革新により新しい実験が可能になり、そのデータを解析する必要性は応用数学の発展を促す。本研究拠点では純粋・応用数学、理論物理、地下観測、天体物理、加速器実験、そしてそれら実験を支える機器の開発が互いに刺激し合い、新たな創造的研究が可能になる。具体的には以下の研究があげられる
  • 地下実験及び加速器実験により暗黒物質の正体を解明し、その実験結果を基に超対称性理論を構築する。
  • ニュートリノの性質の精密測定に基づき大統一理論を構築する。
  • 広視野銀河観測によって暗黒エネルギーの正体にせまり、真空の量子構造との関係を明らかにする。
  • 超弦理論などによる暗黒物質、暗黒エネルギーの統一理解に必要な新しい数学を創生する。
  • 実験物理や観測天文学からの幾何学的データを扱う幾何統計学を発展させる。
これらの研究の結果21世紀の数学と物理の新しいパラダイムが創成される。本研究拠点の推進する学際的研究は国民の科学に対する関心を高め、優秀な人材を数学、基礎科学に引き付ける。ひいては我が国の科学技術の基盤を強化することにつながる。
拠点運営の概要

本拠点の運営機関は拠点長、副拠点長二名、および事務部門長からなり、大学総長室に直属の組織である。総長室の機能を活用することで事務の効率化を図り、研究者に理想的な環境を提供する。また事務員の半数は英語が堪能な者から採用する。総長との合意により、拠点長と主任研究員を除く研究拠点の構成員の雇用、また研究拠点の組織構成や運営について、拠点長にすべての権限が与えられている。

科学諮問委員会(SAC)は4から5人の主任研究員からなり、拠点長に研究員の雇用を含む研究拠点の科学戦略について助言するが、最終的な決定権は拠点長に属する。主任研究員には研究上の様々な裁量権があたえられ、自ら競争的資金の獲得をすることが奨励される。また、研究を推進するために必要な特任研究員及びポスドクの採用を提案できる。このような提案の可否は、SACの助言と拠点長のビジョンに基づいて、拠点長が判断する。

拠点を構成する研究者等

主任研究員22名(うち、外国人7名)、研究者総数195名(うち、外国人69名)、拠点構成員総数225名を平成22年度末までに達成予定。

  • 拠点開始時の主任研究員
    村山斉、鈴木洋一郎、梶田隆章、中畑雅行、福来正孝、相原博昭、柳田勉、佐藤勝彦、野本憲一、神保道夫、河野俊丈、井上邦雄、杉山直、土屋昭博、大栗博司、斎藤恭司、野尻美保子、David SpergelHank SobelStavros Katsanevas

神岡にサテライト機関を設置する。(中畑雅行:宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設と、井上邦雄:東北大学ニュートリノ科学研究センターの主任研究員が滞在する。)

  • 連携研究機関
    国立天文台、高エネルギー加速器研究機構、京都大学物理学教室、数学教室および基礎物理学研究所、プリンストン大学天体物理科学教室、カリフォルニア大学バークレー校物理学教室、フランス高等研究所(IHES)
環境整備の概要 拠点長は海外での研究グループの運営や米国や日本の科学政策に関わってきた。拠点長は、大学との合意や資金獲得の推進によって、研究者が異分野間にまたがる共同研究を含む研究に専念できる環境を作る。研究拠点の建物は、世界中から集まった研究者が自由に交流し切磋琢磨できるように設計、建築する。国際会議やワークショップを開き、海外から研究者を招聘することで、研究活動を活性化し、世界第一線の研究者にとって、理想的研究環境を提供する。主任研究員やその他の研究員の給与は研究者の業績に応じて拠点長が決める制度とする。
世界的レベルを評価する際の指標等の概要 レフェリー付学術雑誌掲載論文件数、論文引用件数、重要な国際会議での招待講演件数等の定量的、客観的データを当該拠点が国際的にトップレベルにあるかどうかを評価する際の指標とする。研究拠点への訪問者の数や外国からの訪問者の数も研究拠点の活動の指標とする。また、数学、物理、天文さらに実験と理論の異なる分野の研究者による共著論文の件数により分野融合の客観的指標とする。
研究資金等の確保 本拠点の主任研究員は過去5年間の間に約68億円の競争的資金を獲得している。また、今後数年の間にも、同程度の資金がすでに保証されている。将来にわたっても、同程度の資金が獲得できることは十分期待できる。
ホスト機関からのコミットメントの概要

東京大学の研究に関する中期目標には、「研究の体系化と継承を尊重しつつ、萌芽的・先端的研究、未踏の研究分野の開拓、あるいは新たな学の融合に積極的に取り組み、世界を視野に置いたネットワーク型研究の牽引車の役割を果たす」ことが掲げられている。それに対する中期計画には、「新しい分野について創造性と独創性に優れた先端的研究のための拠点の形成を図るとともに、領域横断的な学の融合と学際的協調により新たな学問領域の創成を図る」こと及び「学問の進展と社会の変化から生起する新たな課題に対しては、既存の学問領域と組織の枠組みを越えて先駆的・機動的・実践的に応え得る国際的な研究拠点の形成を図る」ことが明記されている。世界トップレベル国際研究拠点は、まさに本学の中期目標・中期計画に完全に合致するものである。従って、総長室直属の組織の中でも最大かつ最重要なものとして位置付け、明確な達成目標の下に、全学を挙げて支援する。

当該拠点に集結した研究者が所属していた学内部局の教育研究活動に支障が生じず、滞りなく発展できるよう、大学本部として当該部局に対し、代替教員の人件費等、必要な財政的支援を行う。これにより、当該部局は代替教員の確保などの措置が可能となるばかりでなく、学内研究者の流動性をさらに高める。現在、総長のリーダーシップの下でキャンパスの国際化を積極的に進めており、キャンパスの周辺に2~3年後を目処に複数の外国人宿舎の整備を進めている。当該拠点のために海外から招聘する研究者に優先入居枠を設けることも考えている。また、本学は、世界トップレベルの研究設備を多数整備し、これらの共用化促進を積極的に進めている。これら研究設備の優先的使用を可能とするよう便宜を図る。また、当該拠点が計画している、研究棟の建設に必要な土地の確保、費用に関し最大限の便宜を図る。なお、柏に新研究棟ができるまでの間は、当該拠点に対し、柏総合研究棟内の居室等、学内研究スペースを優先して提供する。

-- 登録:平成21年以前 --