第3回オープンイノベーション共創会議 議事要旨

1.日時

平成29年3月16日(木曜日)11時30分~13時00分

2.場所

文部科学省3階1特別会議室

3.議題

・組織対組織の本格的共同研究拡大のための大学等のマネジメント機能強化について
・研究開発ファンディング改革について
・これまでの検討項目のまとめ

4.出席者

委員
菅委員、渡部委員、木村委員、橋本委員、松本委員、江村委員、村山委員(代理:田中氏)、吉村委員、鮫島委員(代理:柳下氏もご出席)、林委員、上山委員、斉藤委員
文部科学省
松野大臣、水落副大臣、田野瀬政務官、戸谷事務次官、佐野官房長、常盤高等教育局長、伊藤科学技術・学術政策局長、真先大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、板倉大臣官房審議官(研究開発局担当)、神代科学技術・学術総括官、信濃大臣官房政策課長、増子大臣官房会計課長、氷見谷国立大学法人支援課長、塩崎人材政策課長、坂本産業連携・地域支援課長、橋爪科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)

5.議事概要

1.開会
冒頭、松野大臣及び水落副大臣から開会挨拶があった。発言の概要は以下のとおり。
(松野大臣)
○今回から、産学官連携によるオープンイノベーションへの取り組みを加速し、世界レベルに引き上げるための具体的な方策を議論する。
○すべての大学や研究機関が、同じレベルの産学官連携体制を整備できるとは思わないが、オープンイノベーションには、できることからやっていくというスピード感が必要。
○これまでのご意見を聞いて、「やる気のある大学や研究機関はしっかり支援する。」ということが、今の日本に必要なことではないかと考えている。
○会議の議論の結果については、文部科学省として責任をもって実行したい。

(水落副大臣)
○我が国の経済社会のさらなる成長に向けては、産業構造を知識集約型へと転換していくことが不可避となっており、大学・研究開発法人がオープンイノベーションの本格化の中でもっと大きな役割を果たして欲しいとの声が様々なところで出ている。
○政府内でも、来年度の成長戦略の策定に向けて、活発な議論が行われている。そこへの弾込めに向けて、今回も、率直なご意見を賜れればと思っている。

2.組織対組織の本格的共同研究拡大のための大学等のマネジメント機能強化について
○オープンイノベーション(OI)機構の在り方を考えるにあたっては、研究開発のフェーズといった時間軸を考慮する必要がある。事業化に近づいたときに、OI機構のポジションや姿は変わっていくべきものだし、ベンチャー企業にスピンアウトしていくことも考えられる。
○OI機構は我が国の産学官連携を一歩前進させるものであり、評価している。そのあり方を検討するにあたっては、「規模の経済」を活用することも考えてもよいのではないか。大学同士で競争する場合は各大学に作ればよいし、協調する場合は国に一つ作ればいいということになる。
○これまでの経験から言うと、国立研究開発法人ですら研究者を組織化するのは難しいので、大学で行うとなると極めて難しいと考えられる。大学の研究者は独自の研究スタイルを持っているので、個々の大学を超えたと組織化はさらに難しく、現実的でなくなる。また、連携の形態は研究のステージでどんどん変わるべきである。
○研究者のインセンティブ付けとしては、産学官連携に参加した場合は、研究者が自由に使える研究費を理事長裁量経費から出しているケースがある。また、研究者の組織化にあたって、経営幹部(民間出身者)が一本釣りで研究者を引っ張ってきているが、このような手腕を持つ経営人材のマーケットが日本にはないので、次の世代にどうつなげるかが課題。
○研究者のインセンティブ設計にあたっての自由発想の研究資金は重要だが、それには財源が必要であるだけでなく、研究者や部局ごとにフレキシブルに資源配分できることが重要。そのためには、プロフェッショナルのコーディネータ人材の存在が欠かせないが、こうした人材を見つけてくるのが難しい。また、研究開発法人と大学では、学生への教育の有無などから、研究者のインセンティブづけの在り方は違ってくると考えられる。また、組織に関しては、日本では組織が大きくなると、軽やかに動けなくなるという特徴がある。米国では機動的な組織を編成しているので、OI機構の構造の検討にあたっては参考になる。
○大学では、教員は入試やアドミニストレーションなどの業務があり、これについては皆平等、という業務構造となっているので、OI機構に参加する教員の人事管理に工夫が必要。部局内で他の教員へ業務のしわ寄せが行くといった課題もあるので、制度変更や財政支援が必要となる。
○日本の会社の中で、今まで社内の研究所で実施していた基礎研究を大学にもっていきたいと考えているところが出てきているため、そうした取組を大学で組織的に実行しようとするとOI機構のような仕組みが必要となる。こうした取組は今後産業界を中心にニーズが増えるだろう。また、OI機構は、研究開発のどのフェーズで見るかによっても組織体制は変わってくる。研究の段階ごとに必要となる人材が違う。
○研究開発の時間軸上どこで何をやるのかは、素材系とソリューション系で大きく違う。OI機構自体が時間軸の中のどこの谷を超えるためのものかをよく考えて設計することが必要。そこにあった人材を育てていくことが必要。
○(自分の業務においても)近年、技術ベンチャー関係の相談が増えているので、OI機構の必要性は論を待たない。他方、こうしたベンチャー企業への支援については、省庁ごとに考え方が違い、ベンチャー企業がその狭間に挟まることがあるので、省庁間でも支援策の考え方を整理する必要がある。
○利益相反マネジメント等を考えると、OI機構は外出しの組織がふさわしいという考え方もある。OI機構のマネジメントについては、このようなマネジメントにふさわしい人材がいるかということが論点。企業が基礎研究を実施しなくなってきている状況の中で、大学や国立研究開発法人の人材が企業に出向いていくということもありうる。こうした人材流動には、クロスアポイントメント制度の活用が重要だが、制度を活用しやすい環境を整備していく必要がある。
○これまで大学に足りなかったものは、知財や利益相反も含め大学の中で企業の要求に基づき一括して管理するシステムである。イノベーションをどうアクセラレーションするかを考えた時に、研究開発の進展のどこかのタイミングで大学からスピンアウトするのが現実的であり、スピンアウトへの橋渡しを担うのがOI機構と考えられている。

3.研究開発ファンディング改革について 及び 4.これまでの検討項目のまとめ
○オープンイノベーションに関しては、大学発ベンチャーへのファンディングが重要。大学発ベンチャーを甘やかせるようなファンディング制度ではだめ。また、JSTとJSPSといった異なるファンディングエージェンシーの制度の接続強化が重要。
○民間企業からの資金の出し方についても、研究成果の出方に影響すると考えられるので、どのような資金提供の仕方が適切かということについても検討が必要である。
○OI機構の構造は大変良い。このような改革を進めるためには、大学における組織マネジメントについて、人事、会計の在り方を変えていく必要がある。底上げ的な考え方ではなく、トップランナー方式など、改革に意欲的な大学の努力をさらに促していくような支援の在り方が重要。
○自分の経験からすれば、大学発ベンチャーを立ち上げた場合、軌道に乗るまで重要なのは特許のライセンスを受けることであるが、立ち上がったばかりのベンチャーは資金がないので、対外的に交渉している期間が一番苦しい時期。この時期にストックオプションを受けるなどの支援が効果的であるが、ベンチャーへの多くのファンドは基礎研究費のように使われてしまうという課題もあるので、効果的なタイミングを検討する必要がある。
○研究開発ファンディングでは、ガバナンスの仕組みが重要である。イノベーションの創出において重要なのは結果なのでステージゲート方式のみでガバナンスをシンプルにするなど、効率的なマネジメントを行う工夫が必要。
○新株予約権の取得ケースの拡大はぜひ実現してほしい。インキュベーション施設利用料の対価、経営指導、研究開発データの利活用他、すべてに適用すべきであるが、研究開発データについては、研究開発データの保護の在り方が検討されており、営業秘密に該当しないものであっても何らかの保護が必要になる可能性もあるので、この検討の流れと接続した検討が必要。

5.締めくくり
○水落副大臣より、大学・研究開発法人における産学官共同研究が新たな次元に入りつつあり、こうした動きに対応し、大学等における投資受け入れ体制の整備が重要であることを改めて実感した、ご議論の内容をしっかりと受けとめ、政府の成長戦略にもしっかりと位置付けてまいりたい旨発言。

以上


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