第2回オープンイノベーション共創会議 議事要旨

1.日時

平成29年2月24日(金曜日)11時30分~13時00分

2.場所

文部科学省5階1会議室

3.議題

・本格的共同研究の促進と大学・研究開発法人の民間資金導入拡大を図る上でのマネジメントの制約要因と解決方策について

4.出席者

委員
上山委員、木村委員、鮫島委員(代理:柳下氏)、菅委員、高田委員、林委員、吉村委員、渡部委員
招聘有識者
渡辺 裕司 氏 株式会社小松製作所 顧問(株式会社ギガフォトン元社長)、財満 鎭明 氏 名古屋大学副総長(学術研究・産学官担当)
文部科学省
松野大臣、水落副大臣、田野瀬政務官、戸谷事務次官、常盤高等教育局長、伊藤科学技術・学術政策局長、浅田大臣官房審議官(高等教育局担当)、真先大臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)、板倉大臣官房審議官(研究振興局担当)、板倉大臣官房審議官(研究開発局担当)、神代科学技術・学術総括官、信濃大臣官房政策課長、坂本産業連携・地域支援課長、橋爪科学技術・学術戦略官(制度改革・調査担当)

5.議事概要

1.開会
冒頭、松野大臣から挨拶があった。発言の概要は以下のとおり。
○大学・研究開発法人がオープンイノベーションへの貢献を拡大すると同時に、民間投資から自己財源を生み出し、さらに魅力的なオープンイノベーションのパートナーに成長していくためのシステム構築に向けて、本日は共同研究のマネジメントの改革の観点から、踏み込んだ議論をお願いしたい。
2.本格的共同研究の促進と大学・研究開発法人の民間資金導入拡大を図る上でのマネジメントの制約要因と解決方策について
資料に基づき出席委員からプレゼンがあり、その後、意見交換等を行った。主な意見等は以下のとおり。

(研究コーディネータ人材について)
○(研究コーディネータをどのように育成するかとの松野大臣の質問に対し)このような人材は自然発生的に出てきている。さらに増やすには、この職種の輪が広がっていくための場を作っていくことが重要。こうした人材の大学内での重要性の価値は認められており、あとは具体的にその行動に移るのみである。欧米では、job hoppingしながらキャリアを積んでいる。研究者よりも研究マネージャのほうが給料が高いなど好待遇の場合があり、若いうちに研究を卒業してマネジメント層になりたいというインセンティブが働く。
○米国のマサチューセッツ工科大学(MIT)では、インダストリアル・リエゾン・オフィスを設けており、年間700億円ある収入のうちの約20%は企業からの資金となっている。さらに、MITは企業会員からメンバーシップ・フィーを取っており、年間15億円ほどの収入となっている。同オフィスでは、研究コーディネータとして、博士過程を終了し、かつ、起業経験のある人材を25名程度、年収2000万円程度で雇っている。その活動の成果として、昨年度は62億円の収入を得ている。自分がMITにいた25年前はこのような仕組みは無かった。研究コーディネータ人材の育成プログラムは、米国には存在しないが、博士過程を終了した人材がやりたいこととともに大学に戻って来ている現状である。

(オープンイノベーション機構の経営の仕組みについて)
○(OI機構創設にあたっての制度的な阻害要因やOI機構からのスピンオフベンチャーと大学との利益相反に関する田野瀬政務官の質問に対し)OI機構を実現する上での制度的な障害はない。他方、このような新しい仕組みを作る時には自分でやりたいと考える教員も大学には多く、部局との調整が必要となるので、大学内部のガバナンスが重要となる。また、大学がこのような取組を実施しようとする上では、「場所」が重要である。研究室で共同研究を行うと、利益相反が問題となる。
○利益相反に関しては、大学の中にいる研究者との利益相反は完全になくなる。実際、自分はペプチドリームの社外取締役だが、会社の経営に参画することはなく、ほとんど事業の進捗の報告を受けるだけである。
○名古屋大学におけるコンソーシアムでは、産学連携本部のURAが、企業との利益相反、知財の考え方を整理している。大学がOI機構を整備しようとすると、本部が相当のガバナンスを効かせる必要がある。また現在の規模以上のURAが必要となり、財源の問題等がネックとなる。大学におけるURAの重要性が増してきている状況であり、URAのキャリアパスの構築も重要である。
○菅委員が、MITのインダストリアル・リエゾン・オフィスは、25年前にはなかったとのことだが、我が国でもこれに倣い、研究者だけでなくURAも決定権を持つなど、大学の文化を変えるような枠組みを政治主導で作っていってほしい。OI機構は、各大学でそれぞれ構築していくのは、特に地方大学などで体力的に厳しい大ところも出てくるだろう。TLOのように、ブロックごとにつくる等してはどうか。
○OI機構は、大学の外に作るのではなく、あくまで大学内の組織である。ただし、部局の外に置くことで、インダストリアル・リエゾン・オフィスと同様に分野に閉じない形とすることを想定。
○(現在の産学連携本部には独自資金がないのでOI機構のような機能が持てないとの菅委員の指摘に対し)産学連携本部に資金がないということは法人として問題にはならない。大学自体に投資資金があるかどうかである。また知財管理については、ひな型主義から脱却しないと産学連携の大型化には対応できない。東大では弁護士を担当部長に迎え、大型案件を個別に対応するようにしたが、このような体制にすると処理が進む。
○企業から見て、スピード感は重要。単独特許が好ましいのは研究のスピード確保という面もある。国立大学の過剰な平等主義の元ではスピードで勝てなくなる状況。
○研究マネジメントのツールのひとつに契約がある。大学における共同研究契約については、平成14年に出されたひな型の中で特許は共有となっていることから、現場では「とりあえず共有」、ということになってしまう。現在、こうした課題に対応すべく、英国の「ランバートツールキット」を我が国に応用した契約モデルの作成に取り組んでいる。
○OI機構は、これまでの産学連携体制を変えるモデルとなるだろうから、いくつかの研究大学を選んで実施させることも一案。ただし、産連本部やTLOなど、既存の仕組みを残すのではなく、政治主導で大学の構造をドラスティックに変えていただきたい。そうして成果が出れば、各地の大学が学びに来るようになる。
○(博士課程の学生がOI機構に入るのは問題ないかとの高田委員の質問に対し)博士過程学生は、第一に学位取得が目的であるため、OI機構に入るのは難しい。OI機構で共同開発を担うのはポスドクであり、研究室の先生の下働きではなく、独自の研究者として認められ、また新たなキャリアデザインも考えられるというシステムを想定。博士課程学生は、その手前の橋渡し研究をコンソーシアムで行う。
○大学は、定員未充足であるにも関わらず研究科の定員が変わらないなどの問題も抱えており、大学には新陳代謝のメカニズムが無い。OI機構も含めて組織の新陳代謝を高めることを議論すべき。
○大学に資金がないから産業界から資金を得るということが今回の議論の本質ではないと理解。OI機構のような新たな仕組みを議論すると、制度的にはできるという話がよくでてくるが、それでは仕組みを作る意志、能力があるのかという議論が出てくる。むりやりやらせるような話ではないので、インセンティブ設計をうまくやることが必要。知の拠点として、活動の領域をどのように広げるか、大学主体のビジネスモデルは何か、という議論を深めることが重要。

(民間資金と公的資金の区別について)
○公的資金と民間資金の使用方法について区別をつけることが重要。研究者からすると、公的資金は使いにくく、民間資金のほうが、縛りが少なく使いやすいはずだが、実際には、いったん大学の財務に入ると、公的資金、民間資金に限らず、すべて同じルールの元で扱われてしまっており、民間資金であるのに自由につかえない状況である。こういった規制が外部に資金をためる不正な処理の原因となっている面がある。規制緩和により国立大学でも民間資金を公的資金とは別のルールで取り扱えば、大学人の意識も変わり、民間資金導入について大きなインセンティブが生じるはず。
○自分も過去に、特許のライセンスから得た数千万の資金を研究室に入れたことがあったが、研究室に入れると、大学の管理のもとでしか使われず、不自由であった。企業との協力で利益が出れば、大学に還流して自由な資金として使えるというシステムがまだできていない。
○財源多様化の議論の中で、企業の研究開発は利益を生むためのものという考え方のもと、大学との共同研究についても間接経費に利益分を入れてよいのではないかという考え方が産業界から出た。これを戦略的産学官連携経費として打ち出し、産業界も認めてくれたのは画期的なこと。これは米国ではないアイデア。大学を動かしていくには自由な資金が必要であり、将来的投資を確保していく仕組みが重要。

(大学の業務の概念について)
○OI機構の創設や民間資金の扱いの問題に関する一連の議論は執行のルールの在り方に行きつく。産学連携をもっと拡大するには、OI機構が行おうとする共同開発も大学の業に明示的に含めるという形で、大学の業の概念を広げるとやりやすくなり、執行の仕方も変わってくる。
○基礎研究の結果が直接にイノベーションに結び付くなど、基礎と応用といった区別がなくなっている状況であるので、OI機構の活動範囲も大学の業として位置付けられるはず。

(クロスアポイントメント制度について)
○クロスアポイントメント制度を実施するには、企業側の事情を踏まえる必要がある。企業の就業規則は一般的に大学よりも厳しく、クロアポよりも大学に委託したほうがやりやすいという話になる。
○大学においてクロスアポイントメント制度を実施する上で最も困ることは、クロスアポイントメントで外部に出た人のデューティーが他の人にしわ寄せされてしまうので、部局から抵抗を受けるということ。名大ではそれを避けるために、クロアポによって浮いた人件費を部局に渡すという仕組みを導入した。
○大学の先生の時間管理は大雑把であるので、組織を超えて厳密にエフォート管理しようとしてもうまくいかない。クロスアポイントメント制度の実施によって給与を分けることはできるが、エフォートを分けることは難しく結果的に仕事が増えるだけになることを懸念。
○企業側からすると、クロスアポイントメントをせずとも、代わりとなる人事上の制度をいろいろと持っている企業が多いので、様々なハードルを越えてまでクロスアポイントメント制度を使う動機が生じていない。また、企業にとって、ポジティブな若手研究者を迎えるのはいいが、鼻が高いだけの先生には来てもらっても仕方が無い、ということもある。産業界・大学はお互いにクロスアポイントメント制度の必要性について議論を深める必要がある。

3.締めくくり
○松野大臣より、自分は現行の制度で改革が進まないなら制度を変えればいいと考えている、本日頂いた具体的提案についてはしっかりと受け止め、政治主導で改革を進めていきたい旨発言。

以上


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