科学技術基本計画 第2章 重要政策 2.優れた成果の創出・活用のための科学技術システム改革 1.研究開発システムの改革

(1)優れた成果を生み出す研究開発システムの構築

1 競争的な研究開発環境の整備

 創造的な研究開発活動を展開していくため、競争的な研究開発環境を整備する必要がある。このため、研究者が研究機関の外部から競争的資金を獲得することに加え、研究機関の内部でも競争的な環境を醸成するなど、あらゆる局面で競争原理が働き、個人の能力が最大限に発揮されるシステムを構築する

(a)競争的資金の拡充

 研究者の研究費の選択の幅と自由度を拡大し、競争的な研究開発環境の形成に貢献する競争的資金を引き続き拡充する。その際、競争的資金を活用し世界の先頭に立っている米国を参考とし、第2期基本計画の期間中に競争的資金の倍増を目指す。競争的資金の効果を最大限に発揮させるためには、評価を中心に、以下の改革が不可欠であり、これを競争的資金の倍増とともに徹底する。

  • 研究課題の評価に当たっては、研究者個人の発想や能力が評価され得るよう研究費の制度・運用を改善する。具体的には、単独の研究者がポストドクター・研究支援者等とともに行う研究を大幅に拡大する。複数の研究者が行うグループ研究においては、明確な責任体制の下で分担して行うようにする。
  • 一定の研究成果が得られるよう、1研究課題当たりに研究遂行に必要かつ十分な研究費を確保し、また、3~5年間程度の研究期間を重視する。
  • 中間評価及び事後評価を適切に実施し、その結果を運用に反映させる。中間評価については、必要に応じて、その結果を当該課題の規模の拡大や縮小、中止等に反映させ。その際に、特に優れた成果が期待される課題については、より大きな成果に結びつけられるように研究期間の延長を可能とする。また、中間評価及び事後評価の結果を、次に競争的資金に応募する際の事前評価に活用できるようにする。これらにより長期的に優れた研究の発展を図る。ただし、過去に競争的資金の応募実績がない者についても、公平に機会が与えられるようにする。
  • 評価過程、評価結果、評価手続及び評価項目が提案した研究者に適切に開示されるようにする。
  • 専任で評価に従事する人材として研究経験のある者を確保し、研究課題の評価に必要な資源を充てるなど、評価に必要な体制を整える。
  • 課題採択時に研究者の実績等を踏まえた公正かつ透明性の高い評価を行うため、研究の進捗状況や成果については定期的に研究者から報告を受け、データベースとして整備する。
  • 競争的資金を所管する各府省は、その目的にかなう限り、できるだけ多くの研究者が応募できるよう運用を徹底する。
  • 競争的資金のうち、研究者個人に直接配分されるものは、原則として、経理を研究機関に委ねることとして、研究機関が研究費の適切な執行を確保するものとする。
  • 競争的研究資金の倍増を図っていく中で、各府省の持つ競争的資金の目的を明確化し、プログラム・制度の統合・整理を行う。

(b)間接経費

 競争的資金の拡大によって、直接に研究に使われる経費は増加してきた。競争的資金をより効果的・効率的に活用するために、研究の実施に伴う研究機関の管理等に必要な経費を手当する必要がある。このため、競争的資金を獲得した研究者の属する研究機関に対して、研究費に対する一定比率の間接経費を配分する。
 間接経費の比率については、米国における例等を参考とし、目安としては当面30パーセント程度とする。この比率については、実施状況を見ながら必要に応じ見直しを図る。
 間接経費は、競争的資金を獲得した研究者の研究開発環境の改善や研究機関全体の機能の向上に活用する。複数の競争的資金を獲得した研究機関は、それに係る間接経費をまとめて、効率的かつ柔軟に使用する。こうした間接経費の運用を行うことで、研究機関間の競争を促し、研究の質を高める。ただし、当該機関における間接経費の使途については、透明性が保たれるよう使用結果を競争的資金を配分する機関に報告する。
 国立大学等については、国立学校特別会計の中に競争的資金を獲得した大学に間接経費が還元される仕組みを整える。

(c)基盤的経費の取扱い

 競争的資金の倍増を図っていく中で、教育研究基盤校費及び研究員当積算庁費のいわゆる基盤的経費については、競争的な研究開発環境の創出に寄与すべきとの観点から、その在り方を検討する。その際、

  • 教育研究基盤校費については、教育を推進する経費であるとともに大学の運営を支えるために必要な経費としての性格を有すること
  • 研究員当積算庁費については、研究機関の行政上の業務遂行に必要な研究費としての性格を有することに留意する。

2 任期制の広範な普及等による人材の流動性の向上

 若手研究者は任期を付して雇用し、その間の業績を評価して任期を付さない職を与える米国等におけるテニュア制は、米国等での研究開発環境の活性化の源と言われる。我が国も、将来に向けて、このような活力ある研究開発環境を指向し、30代半ば程度までは広く任期を付して雇用し、競争的な研究開発環境の中で研究者として活動できるよう、任期制の広範な定着に努める。また、研究者がその資質・能力に応じた職を得られるよう、公募の普及や産学官間の人材交流の促進等を図る。その際、研究者と産学官の研究機関等とのニーズを合致させることができる「市場メカニズム」が働く環境の形成が重要である。このため、

  • 国立試験研究機関、独立行政法人研究機関、国立大学等の国の研究機関等は、30代半ば程度までの若手研究者については広く任期を付して雇用するように努めるとともに、研究を行う職については原則公募とし、広く資質・能力のある研究者に公平な雇用機会を提供する。国の研究機関等は、任期制及び公募の適用方針(業務や研究分野等により任期制又は公募を適用できない場合はその理由)を明示した計画を作成するよう努める。研究機関の評価に当たっては、任期制及び公募の適用状況を評価の一つの重要な観点とする。
  • 現行の若手育成型任期付任用の任期は原則3年までとされているが、3年では実質的に研究に専念できる期間が短いことが指摘されている。これを踏まえ、十分かつ多様な研究機会を確保する観点から、若手研究者が原則5年間は任期付研究員として活躍できるようにするとともに一定の条件の下に再任もできるようにするなど、必要な措置を講ずる。その際、業績や能力に応じた処遇を図れるよう改善を行う。あわせて、大学における任期付教員をはじめとする教員の業績、能力等を十分に反映した処遇の改善方策について検討する。
  • 研究者が多様な経験を積むとともに、研究者の流動性を高めるため、産学官間の交流や国際交流を重視する。その際、適性に応じて、研究開発のみならず、行政、産業界等幅広い職で活躍できるような多様なキャリア・パスを確保するため、ポストドクターや若手研究者の行政、企業等への派遣を可能とし、促進する。

3 若手研究者の自立性の向上

 優れた若手研究者がその能力を最大限発揮できるように、若手研究者の自立性を確保する。このため、

  • 研究に関し、優れた助教授・助手が教授から独立して活躍することができるよう、制度改正も視野に入れつつ、助教授・助手の位置付けの見直しを図る。あわせて、助教授・助手が研究開発システムの中で存分に能力を発揮できるよう、研究支援体制の充実、大学等における幅広い視野を持つ創造的人材の育成の推進など総合的な取組を進める。
  • 優れた若手研究者が自立して研究できるよう、各研究機関において、研究スペースの確保など必要な配慮を行う。
  • 特に優れた成果を上げた若手研究者に対する表彰等を充実する。
  • 競争的資金の倍増の中で、若手研究者を対象とした研究費を重点的に拡充するとともに、競争的資金一般においても、若手研究者の積極的な申請を奨励する。

 また、研究指導者の下で研究を行うポストドクター等についても、独立して研究できる能力の向上を図るため、ポストドクター等1万人支援計画が策定され、これによりポストドクターが研究に専念できる環境が構築されてきた。今後は、研究指導者が明確な責任を負うことができるよう研究費でポストドクターを確保する機会の拡充や、能力に応じた処遇を行うとともに、ポストドクターの行政・企業等への派遣や優秀な博士課程学生への支援充実等を図り、ポストドクトラル制度等の質的充実を図るとともに、その効果を評価する。

4 評価システムの改革

 研究開発評価は、研究開発評価に関する大綱的指針に従い実施されているが、競争的な研究開発環境の実現と効果的・効率的な資源配分に向けて、

  • 評価における公正さと透明性の確保、評価結果の資源配分への反映
  • 評価に必要な資源の確保と評価体制の整備
    に重点を置いて改革を進める。また、その実施に当たっては、研究開発課題の評価、研究機関の評価、研究者の業績評価が、体系的かつ効率的に行われるようにする。
     このため、以下のような事項を盛り込み、研究開発評価に関する大綱的指針を改定する。

(a)評価における公正さと透明性の確保、評価結果の資源配分への反映

 研究開発課題の評価は、その課題の性格に応じて行う。評価は一律の基準で行うのではなく、研究課題、分野によって柔軟に対応する。とりわけ、政策目的に応じたプロジェクトや研究開発制度による課題については、第三者を評価者とした外部評価により、事前評価においては社会的・経済的な意義・効果や目標の明確性等の評価を、中間及び事後評価においては実施に当たって設定した具体的目標に対する達成度の評価を徹底する。また、競争的資金による課題については、原則として、独創性・先導性等の科学的・技術的視点については長期的視点を持つなど高い資質を有した専門家によるピア・レビューを行い、国際的水準に照らした質の評価を徹底する。その際、その時点までに競争的資金の申請者が関与した研究開発課題の事後評価が制度を越えて次の申請の際の事前評価に反映されるよう運用の改善を行う。
 各府省は、研究開発課題の事前評価、中間・事後評価に加えて、研究開発の終了後における研究開発成果の波及効果に関する追跡評価を実施し、そのインパクトを評価するとともに、過去の評価の妥当性について検証する。また、研究開発制度及びその運用についても、その目的に照らして効果的・効率的なものになっているか等の評価を行う。
 研究機関の評価は、機関の設置目的や研究目的・目標に即して、機関運営と研究開発の実施の面から行う。機関運営評価は、機関長に与えられた裁量と資源の下で、目標の達成のためや研究環境の改善等のためにどのような運営を行ったかについて、効率性の観点も踏まえつつ評価を行う。研究開発の実施の評価は、機関が実施した研究開発課題の評価と所属する研究者の業績等の評価の総体で評価を行う。研究機関の運営は機関長の裁量の下で行われるものであるので、研究機関評価の結果は、運営責任者たる機関長の評価につなげる。
 研究者の業績評価は、研究機関が行うべきものとして、機関長が評価のためのルールを整備し、責任を持って実施する。その際、研究開発、社会への貢献等関連する活動を評価できる多様な基準によって行い、基準の一つにおいて特段優れている場合にはこれを高く評価する。
 以上の評価を進めるに当たって、評価の公正さ、透明性を確保するため、客観性の高い評価指標や外部評価を積極的に活用するとともに、評価を行う者は、被評価者に対し、評価手法・基準等の周知、評価内容の開示等を徹底する。
 また、評価結果については、課題の継続、拡大・縮小、中止等の資源配分、研究者の処遇に適切に反映する。
 なお、大学については自主性の尊重、教育と研究の一体的な推進などその研究の特性に留意する必要がある。また、大学評価・学位授与機構等による教育、研究、社会貢献、組織運営などの第三者評価の推進を図る。

(b)評価に必要な資源の確保と評価体制の整備

 評価は研究開発活動の効果的・効率的な推進に不可欠であり、評価に必要な資源は確保して、評価体制を整備する。

  • 競争的資金の配分機関などにおいて専任で評価に従事する者が質・量ともに不足していることを踏まえ、研究費の一部を評価の業務に充てる、評価部門を設置して研究経験のある人材を国の内外を問わず確保するなど必要な資源を充て、評価体制を充実する。また、研修等を通じて人材の養成に努める。
  • 評価実施主体が国内外の適切な評価者を選任できるようにするため、及び個々の研究開発課題の評価において普遍性・信頼性の高い評価を実現するため、国全体として、個々の課題についての研究者、資金、成果、評価者、評価結果をまとめたデータベースを整備する。その結果、どの様な成果が上がっているか、分かり易い説明にも資する。
  • 評価体制の整備に伴い発生する審査業務等を効率化し、評価をより高度なものとするため、電子システムの導入を図る。

5 制度の弾力的・効果的・効率的運用

(a)研究開発の特性を踏まえた予算執行の柔軟性・効率性の確保

 研究開発は一般的に複数年にわたり継続して実施されるが、その進捗は当初の予定どおりにならないことも少なくない。国の研究開発予算については、その特性を踏まえ、研究の進捗に合った柔軟かつ効率的な使用ができるようにするとともに、翌年度に繰り越して使用することができる繰越明許費の活用を図る。
 また、競争的資金等について、会計事務の効率化を図ること等により、研究者が年度当初から資金を使用できるようにする。

(b)勤務形態等の弾力化

 研究の成果を評価して研究者を処遇し、その能力を十分に発揮させる環境を整備するため民間企業等の研究業務に対して裁量労働制が適用されていることを踏まえ、独立行政法人研究機関における裁量労働制の活用を期待する。
 また、国の研究者等の自発性及び自立性を積極的に促すため、自己啓発等の一定の活動を行う場合に一定期間公務を離れることを認める休業制度については、対象活動の範囲や既存制度との整合性などの課題を検討する。

6 人材の活用と多様なキャリア・パスの開拓

(a)優れた外国人の活躍の機会の拡大

 優れた外国人研究者が我が国において活発に研究開発活動ができるようにする。そのため、例えば、公的研究機関においては、フェローシップ等により日本で研究開発に従事し、成果を上げた若手の外国人研究者を評価して、能力に見合う処遇をする。さらに、競争的資金については、日本で研究する外国人研究者も応募できるよう英語による申請を認めるなど、外国人研究者が日本の研究社会の中で同等に競争できる環境を整備する。

(b)女性研究者の環境改善

 男女共同参画の観点から、女性の研究者への採用機会等の確保及び勤務環境の充実を促進する。特に、女性研究者が継続的に研究開発活動に従事できるよう、出産後職場に復帰するまでの期間の研究能力の維持を図るため、研究にかかわる在宅での活動を支援するとともに、期限を限ってポストや研究費を手当するなど、出産後の研究開発活動への復帰を促進する方法を整備する。

(c)多様なキャリア・パスの開拓

 研究者が、適性に応じて、研究開発の企画・管理等のマネジメント、研究開発評価、知的財産権等研究開発にかかわる幅広い業務に携わることができるよう、多様なキャリア・パスの開拓が必要である。
 若手研究者が将来の可能性を幅広く選択できるよう、行政機関等での採用の機会を拡大する。特に、競争的資金の配分機関などでは、研究経験のある人材の雇用を進める。さらに、民間においても、博士課程修了者やポストドクター経験者等の能力のある若手研究者の採用に積極的に取り組むことが期待される。

7 創造的な研究開発システムの実現

 以上に述べた改革を徹底し、優れた成果を生み出す研究開発システムを実現するためには、研究所等の一定の規模の組織で、機関の長のリーダーシップの下、柔軟かつ機動的なマネジメントを行い、国際的に一流の研究開発拠点を構築していくことが有効である。
 このため、既存の研究開発機関を世界的な研究開発拠点とすることを目指し、当該機関の研究開発能力や成果を活用するための斬新な手法を組織運営に取り入れて行くなど、これら機関におけるマネジメントの改革に取り組むことを促進する。
 さらに、重点化して取組を行う必要のある分野や急速な進展を見せる領域について、以下の諸点において従来の組織運営にとらわれない新たな発想に立ち、欧米の第一級の研究開発機関に比肩し得る、世界最高水準の研究開発を行う理想的な研究開発組織を構築する。

  1. 存続期間を定めた時限的な組織とする。
  2. 研究開発の責任者とマネジメントの責任者を分離し、前者には国際的水準の研究開発実績を有する者を、後者には研究開発と経営の経験をともに持つ者を充てる。
  3. 必要充分な管理、技術支援、成果管理等の支援部門を整備する。
  4. ポストドクターの大幅な採用も含め若手の人材を中心に据える。
  5. 外国人を積極的に登用する。
  6. 産学官の各セクターからの参画を募る。
  7. 研究開発実績、能力を反映した研究開発資金の配分、給与などの処遇を行う。
  8. 資金は弾力的に運用する。
  9. 研究開発活動の共通語と言える英語を使用言語とする。
  10. 国際水準からみて研究開発に必要な施設を整える。

(2)主要な研究機関における研究開発の推進と改革

1 大学等

 大学は、優れた人材の養成・確保、未来を拓く新しい知の創造と人類の知的資産の継承、知的資源を活用した国際協力等様々な面から科学技術システムの中において中心的な役割を果たすことが求められている。
 しかしながら一方で、我が国の大学の現状に関しては、教育機能の弱さ、専門分野の教育の幅の狭さ、組織運営の閉鎖性や硬直性等の課題が指摘されてきている。
 これまで、大学の教育研究の高度化・個性化・活性化という観点から、大学設置基準の大綱化、大学院の量的整備などの大学改革が進められており、組織運営の面についても、すべての国立大学に学外者で構成される運営諮問会議が設置されたり、第三者評価機関として大学評価・学位授与機構が創設されるなどの進展が見られる。今後とも、大学の自主性・自律性を拡大し、主体的・機動的な運営ができるよう更に制度面の改善を進めるとともに、各大学において、こうした制度面での改善を実際の大学運営や教員の意識改革につなげ、大学改革をより実効あるものとしていくことが期待される。
 各大学においては、学部段階から一貫して課題探求能力の育成を重視した教育を進めるとともに、先端的・独創的教育研究の拠点としての大学院の整備・高度化の一層の推進を図ることにより、教育と研究の両面にわたって質的充実を図り、国際的にも魅力と競争力を高めていくことが望まれる。このため、組織編制の弾力化等により、各大学が、経済や社会の情勢の変化をも見通しそれに自律的・機動的に対応しつつ教育研究機能を一層高めることが必要であり、このような制度の弾力性は、特に現状において国家行政組織として制度的な制約のある国立大学にあっては、重要な課題となる。また、各大学において、厳格な自己点検・評価を実施し、その結果を積極的に公開するとともに、大学の教育研究活動や組織運営の改革に具体的に反映していくことが求められる。大学は、全国各地域に存在することから、その利点を活かし、地方公共団体や企業などとの協調・協力関係を強め、地域における科学技術の発展の中核として積極的に貢献することが重要である。さらに、大学が、産業界や他の研究機関等との連携・交流を推進しつつ、多様で高度な教育研究活動を積極的に展開していくことは、大学の教育研究水準を高めていく上で重要である。

(a)国立大学等

 国立大学及び大学共同利用機関については、独立行政法人化に関する検討が進められており、組織運営体制の強化等により、学長等がリーダーシップを発揮し、自律的な運営ができるよう一層の改革を進める。また、卓越した大学院の重点整備を含む大学院の教育研究の高度化・多様化の推進を行う。
 公立大学については、地域における高等教育機会の提供と地域発展のための研究への貢献が求められており、教育研究機能の一層の強化を図り、各大学が特色ある発展を目指す。

(b)私立大学

 私立大学は、我が国の大学の学生数の約8割を占めるとともに、それぞれ独自の建学の精神に基づき、特色ある教育研究活動を積極的に展開するなど、高等教育の発展に大きな役割を果たしており、私立大学としての主体性を生かしつつ、教育研究水準の一層の向上を図る必要がある。
 このため、私立大学については、大学院の充実など教育研究機能を強化する観点から、重点的配分を基調として助成の充実を図るとともに、多様な民間資金の導入を促進するための所要の条件整備を行う。

2 国立試験研究機関、公設試験研究機関、独立行政法人研究機関等

 国立試験研究機関、独立行政法人研究機関、特殊法人研究機関等では、政策目的の達成を使命とし、我が国の科学技術の向上につながる基礎的・先導的研究及び政策的ニーズに沿った具体的な目標を掲げた体系的・総合的研究を中心に重点的に研究開発を行う。また、地方公共団体に設置されている公設試験研究機関は、地域産業・現場のニーズに即した技術開発・技術指導に重要な役割を担っている。科学技術に対する経済社会の期待が高まる中、これら公的研究機関に対し、優れた成果の創出と社会への還元がより一層強く求められる。このような状況にかんがみ、以下の取組を強化する。

  • 国立試験研究機関、独立行政法人研究機関、特殊法人研究機関等は、国家的・社会的ニーズを踏まえた研究やその将来の発展に向けた基盤的な研究等、各機関の任務遂行のための研究を実施し、創出された成果を効果的に普及・実用化できるよう、大学や産業界との連携を一層強化する。
  • 地域に設置されている公的研究機関は、その地域の特性に根ざした産業の発展への貢献が望まれており、そのため、基礎的・先導的研究の成果の技術移転を促進し、成果の企業化等に向けた取組を強化する。

 独立行政法人に移行する研究機関においては、弾力的に組織を運営し、研究機関の特性と機能を最大限に活かしつつ、柔軟かつ機動的な研究開発を行い、優れた研究成果の創出とその活用を行えるようにする。具体的には、

  • 法人の長の裁量の拡大、研究資金の柔軟かつ弾力的な運用、成果の積極的な活用を行う。
  • 機関の使命達成のための各府省からの研究開発費に加え、外部資金の獲得等による研究開発を積極的に行い、機関の機能を高めていく。
  • 人事管理においては、法人の長の裁量の下、優れた研究者の採用や能力に応じた処遇を行う。このため、研究系の職員等の選考採用や研究休職に係る手続の簡素化、任期付研究員制度における採用手続の簡素化を進めるよう、人事院に早期の検討を求める。

3 民間企業

(a)民間の研究開発の促進

 国の活動とあいまって重要な役割を担う民間の研究開発を活性化させるべく、国は、民間の自助努力を基本としつつ広く民間の研究開発の意欲を高めるため、増加試験研究費税額控除制度等の研究開発活動促進に資する税制措置や、研究開発のリスクを軽減する技術開発制度の積極的な活用を図る。その際、我が国経済の発展の基盤となる技術の研究開発を促進する制度については、より効果的・効率的なものになるよう見直しを行う。
 国は、国費を財源とする委託研究により生じた特許権等の成果については、産業活力再生特別措置法の一層の適用による受託者への帰属の促進等により、その活用を図る。
 また、政府調達、社会的規制等は、技術力のある事業者の競争への参加機会の拡大等を通じて技術革新を促す側面を有しているため、その適切かつ効果的な活用を図る。

(b)研究人材の流動化への対応

 我が国全体の研究人材の流動化を促進するとの観点から、民間においても、博士課程修了者やポストドクター経験者等の能力のある若手研究者の採用に積極的に取り組むことを期待する。

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