第2章 科学技術の戦略的重点化 3.分野別推進戦略の策定及び実施に当たり考慮すべき事項

(1)新興領域・融合領域への対応

 20世紀における偉大な発明・発見に際して、異分野の知の出合いによる触発や切磋琢磨する中での知の融合が果たした役割は大きい。21世紀に入り、世界的な知の大競争が激化する中、新たな知の創造のために、既存の分野区分を越え課題解決に必要な研究者の知恵が自在に結集される研究開発を促進するなど、異分野間の知的な触発や融合を促す環境を整える必要がある。8つの分野別推進戦略を策定する際にも、これら新興領域・融合領域へ機動的に対応しイノベーションに適切につなげていくことに十分に配慮して進める。
また、国際的に生産性が劣後しているサービス分野では科学技術によるイノベーションが国際競争力の向上に資する余地が大きいほか、科学技術の活用に関わる人文・社会科学の優れた成果は製造業等の高付加価値化に寄与することが期待されることから、イノベーション促進に必要な人文・社会科学の振興と自然科学との知の統合に配慮する。

(2)政策目標との関係の明確化及び研究開発目標の設定

 各分野別推進戦略において選定される重要な研究開発課題については、それぞれが基本計画で示した政策目標及びそれに基づき定められる個別政策目標の達成に向けて、研究開発として目指す科学技術面での成果(研究開発目標)を明確化する必要がある。その設定に当たっては、基本計画期間中に目指す研究開発目標及び最終的に達成を目指す研究開発目標を設定することを基本とする。また、官民の役割分担、各公的研究機関の役割を含め、研究開発目標の達成が政策目標の達成に至る道筋も明らかにすることによって、科学技術成果の社会・国民への還元についての説明責任を強化する。

(3)戦略重点科学技術に係る横断的な配慮事項

1 社会的課題を早急に解決するために選定されるもの

 本章2.(3)1に該当する科学技術は、近年世界的に安全と安心を脅かしている国際テロ、大量破壊兵器の拡散、地震・台風等による大規模自然災害・事故、情報セキュリティに対する脅威、SARS(サーズ)・鳥インフルエンザ等の新興・再興感染症などの社会的な重要課題に対して迅速・的確に解決策を提供するものである。その研究開発の実施に当たっては、国が明確な目標の下で、専門化・細分化されてきている知を、人文・社会科学も含めて横断的に統合しつつ進めることが必要であり、総合科学技術会議は、このような社会的な技術について、分野横断的な課題解決のための研究開発への取組に配慮する。

2 国際的な科学技術競争を勝ち抜くために選定されるもの

 本章2.(3)2に該当する科学技術については、既存の知の体系の根源的な変革や飛躍的な進化に向けた研究競争が激化しているもの、我が国固有の強みを活かして追随が困難な高付加価値化を一刻も早く確立すべき段階にあるもの、大きな付加価値獲得に波及する限界突破を狙う国際競争をリードする好機に至っているものなど、的確な国際的ベンチマーキングを踏まえた競争戦略に基づき、揺るぎない国際競争力を築くための研究開発へ選択・集中することに配慮する。

3 国家的な基幹技術として選定されるもの

 本章2.(3)3に該当する科学技術に対しては、国家的な大規模プロジェクトとして基本計画期間中に集中的に投資すべき基幹技術(「国家基幹技術」という。)として国家的な目標と長期戦略を明確にして取り組むものであり、次世代スーパーコンピューティング技術、宇宙輸送システム技術などが考えられる。これらの技術を含め総合科学技術会議は、国家的な長期戦略の視点に配慮して、戦略重点科学技術を選定していく中で国家基幹技術を精選する。また、国家基幹技術を具現化するための研究開発の実施に当たっては、総合科学技術会議が予め厳正な評価等を実施する。

(4)分野別推進戦略の効果的な実施-「活きた戦略」の実現

 8つの分野で策定される分野別推進戦略について、最新の科学技術的な知見、新興領域・融合領域等の動向を踏まえて、基本計画期間中であっても、必要に応じて重要な研究開発課題や戦略重点科学技術等に関しての変更・改訂を柔軟に行う。また、総合科学技術会議による資源配分方針立案に向けた最新知見の吸収、概算要求前の資源配分方針の提示、概算要求に対する優先順位付け等の実施、次年度の資源配分方針立案に向けた準備といった年間の政策サイクルを確立し、関係府省や研究機関のネットワーク・連携を進める基盤となる「活きた戦略」を実現していく。
 また、関係府省及び関係機関が、基礎的段階から実用化段階までの広い研究開発段階を概観し、先端的な研究開発動向、技術マップ、政策目標につなげていくロードマップ等について、恒常的に意見交換し情報を共有していくことは、「活きた戦略」を府省横断的に展開する上で有意義である。総合科学技術会議も円滑な意見交換・情報共有の促進に努める。

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科学技術・学術政策局政策課

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