対人地雷の探知・除去技術に関する研究開発の進め方について(概要)

平成14年5月27日

基本的認識

  • アフガニスタンをはじめ世界の数多くの国において埋設された対人地雷の探知・除去は、復興・開発上の大きな障害。
  • 文部科学省としては、人道的観点から、対人地雷の探知・除去活動をより安全、確実かつ効率的に実施できるよう、科学技術を駆使して技術を開発し、提供することにより、「顔の見える援助」の実現を図る。
  • 現場のニーズに対応しつつ、実際に使える技術を地雷被埋設国に提供する。
  • 武器輸出三原則等の的確な運用、関係省庁の連携の下で取組みを進める。

1.研究開発をとりまく状況

  • 地雷処理活動を安全かつ効率的に実施していくための技術への期待は大きい。
  • 1990年代以降欧米諸国において研究開発が本格化。
  • 我が国の取組みは国際的には後発だが、一部は優れた技術を開発。
  • 地雷処理活動では、安全性、スピード、コストの3要素が重要。研究開発により早期の復興が可能となれば長期的な社会経済効果は大きい。
  • 新たな技術の実用のためには国際的な評価を得ることが必要。

2.文部科学省として研究開発を進めるべき領域

  • 地雷埋設場所の地質・地形、気象条件や、埋設地雷の種別等は様々であり、こうした状況に対応するため多様な技術オプションを用意することが必要。
  • 研究開発領域の設定の評価軸としては、1.早期に役立つ技術か、2.安全、スピード、コストの面で既存技術を上回る性能があるか、という点。
    また、過酷な条件において安定して作動することや専門家による日常的なメンテナンスが不要であること等も重要。
  • 地雷処理の作業手順の中での位置付けを踏まえた研究開発とすることが不可欠。
    作業 現状 研究開発の可能性 文部科学省との関係
    地雷原の特定 (レベル1サーベイ) ヒアリングや文書による調査 等 人工衛星や飛行機からの探知 軍事技術として重要だが決定的技術無し。
    植生の除去 灌木除去機(重機)等 重機の改良等 基本的に民間主体の取組み。
    地雷の探知 (レベル2サーベイ) 探針作業、携帯型金属探知器 等 複合センサ、マニピュレータ等による探知・アクセス 先端技術であり、取組みの余地は大きい。
    地雷の除去 重機による粉砕処理、 手作業による除去 等 重機の強度改良、手作業支援の技術 基本的に民間主体の取組み。
    地雷除去確認 (レベル3サーベイ) 探針作業、携帯型金属探知器 等 複合センサ、マニピュレータ等による探知・アクセス 先端技術であり、取組みの余地は大きい。

  • 一連の作業プロセスを前提として、開発に取り組むべき技術は、レベル2及びレベル3サーベイにおける
    1. 対人地雷を100%探知できる高度なセンシング技術
    2. 上記1のセンサを地雷原に持ち込み、安全かつ効率的に地雷の探知・除去活動を行うためのアクセス・制御技術
  • 具体的には以下の研究開発領域に取り組むことが適当。
      センシング技術 アクセス・制御技術
    現状 金属探知器(金属のみを探知) 熟練作業員による携帯型機材での手作業
    当面の領域 地雷(プラスチック)と土壌とを識別 比較的平坦な地雷原向けの遠隔操作機材
    中期的領域 TNT等の火薬を高精度で探知 多様な地形の地雷原向けの自律制御機材
    - センシング技術については、現状の金属探知器等を上回る技術として、
    • 地中レーダ技術や複数のセンシング手法の融合によるセンサフュージョン技術【当面の研究開発領域】
    • 化学センサ、バイオセンサ等の先進的センシング技術【中期的研究開発領域】
      の研究開発を進めることが適当。
    - アクセス・制御技術については、現状の手作業を代替するべく、
    • センサを搭載して比較的平坦な地雷原を自由に移動可能な遠隔操作型のアクセス機材(小型車両)技術、センサを自由な姿勢で地表に接近させることのできるマニピュレータ技術【当面の研究開発領域】
    • 複雑な地形の地雷原を自律的に移動可能なアクセス機材技術、機材間の協調制御技術、地雷除去にも活用可能なバイラテラル(力覚)制御技術【中期的研究開発領域】
      の研究開発を進めることが適当。
      なお、マニピュレータ技術については、地雷除去作業にも利用が可能。
  • これらの技術については、材料、地下埋設物の非破壊検査、テロ対策用の爆発物検査、レスキュー活動支援、遠隔手術用の制御等への応用可能性を有する。

3.研究開発の実施

  • 研究開発は現地の状況への対応、評価の実施、技術成果の提供・実用化等を適切に行うため、関係省庁の連携協力体制の下、実施。
  • 実証試験を行うための試作機の開発を目標とする。
  • 研究開発実施に当たり、以下のような特徴を持つ体制を構築する。
    • 公的機関による運営、研究統括責任者の配置等、目的達成を強く指向
    • 基礎研究から試作機開発までの一貫した取組み
    • 産学官の幅広い研究ポテンシャルを結集
    • ユーザ側機関(国際機関、NGO等)からの参画(評価等)

4.研究開発のスケジュール

  • 現地における実証試験までの期間として、当面の研究開発領域については3年程度以内、中期的研究開発領域については5年程度を目途とする。

お問合せ先

科学技術・学術政策局基盤政策課

(科学技術・学術政策局基盤政策課)

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