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地球規模問題を解決に導く新たな国際研究開発の在り方に関する調査 ‐食料に関する課題を中心として‐[第175号]

‐第175号‐
平成10年7月10日

 本調査は、平成8年度科学技術振興調整費により実施された、地球規模問題を解決に導く新たな国際共同研究開発の在り方に関する調査の結果を踏まえ、引き続き平成9年度において食料に関する問題に的を絞って実施した調査結果を取りまとめたものである。本調査では、世界の食料需給見通しをもとに、2040年頃までに「世界の食料需要に見合った持続的食料生産」を達成するための研究開発領域と研究課題の設定及び、研究開発推進体制を検討することを目標とした。

 将来の食料問題の解決を目的とした高効率食料生産には、まず、高機能作物の作出が必要である。複数遺伝子を効率的に導入し、制御するといった次世代の遺伝子組み換え技術等を用いた「新技術による飛躍的食料生産」を中心の領域と設定した。また高機能作物の使用による環境の悪化を考慮し、優れた土壌及び水の維持はもとより、周囲の生態系に与える影響まで含め環境と調和するための「持続的生産のための環境保全技術」を、主軸を支える領域とした。さらに、2040年の目標達成のために必要なる植物機能に関する基礎知識はまだまだ不十分であり、「植物機能の解明」に関する研究が今後も不可欠である。この領域で得られた植物機能に関する新たな知識は、順次「新技術による飛躍的食料生産」に応用されることが必要である。
 各領域ごとに、解決せねばならない研究開発課題を2040年の達成目標から遡る形で検討し、2040年までの研究開発計画を作成した(表1、2参照)。

 また、各課題を解決するための研究開発体制として、2010年までは基礎研究の推進が、2020年までは各研究機関の連携による研究成果の融合が、2040年までは対象地域と連携した成果普及が特に重要であるとの結論に至り、2010年までの具体的な研究体制として個別研究と融合研究の2つを提案した。効率的な研究開発のためには各研究推進体制を国際的枠組みの中でとらえることが重要であり、持続的食料生産に必要な科学技術上の取り組みをOECD等の国際機関に提案してゆくことの重要性が指摘された。
 なお、本件については、科学技術庁と農林水産省を中心に、関係省庁も含め、具体的な方策を検討する場を設けることとしている。

1.調査目的

 今後の人類の発展には、人口、食料、資源・エネルギー、地球環境等の地球規模問題を総合的に捉え、科学技術面からの総合的な取り組みを各国が協力して行っていくことが必要である。これについて我が国は、先駆的な役割を果たすことが期待されており、科学技術会議では、国際問題懇談会において、今後の各省庁の地球規模問題への対応に関する施策検討の指針及び新たな国際協力プログラムの課題についての検討が行われた。
 このような動きを受け、平成8年度の科学技術振興調整費において「地球規模問題を解決に導く新たな国際共同研究開発の在り方に関する調査」を実施し、地球規模問題の中の「食料」と「環境」問題の関連に焦点をあて、この解決に資すると考えられる「持続的食料生産」及び「環境の維持・修復」の分野での国際共同研究開発を推進するため、その研究内容、実施体制、既存の研究体制・機関等との連携、我が国の役割等を検討するために有効な資料・情報の収集を行った。
 平成9年度は、引き続き「持続的食料生産」について以下のような調査を実施した。

(1)研究課題の絞り込み及び設定のための調査

 平成8年度の調査を通じて、潜在的な人口問題を抱えている地域において食料増産を成し遂げるためには、高収量作物の作出とともに、その生育を支える「土」と「水」の研究が重要であるとの結論に至った。
 このため、平成9年度の調査では、世界の食料需給予測を踏まえた上で、研究開発が必要な領域と、各領域ごとの詳細な研究開発課題について検討を行った。

(2)国際研究実施体制の在り方に関する検討及び具体的指針の設定

 地球規模問題の解決には国際研究が不可欠であるため、平成8年度の調査では、主に現在の国際研究としての枠組みの中で様々な問題点、検討課題等をヒアリングを通じて明らかにした。これらについては特定の分野における問題から国際研究全般にまたがる問題まで様々なものが指摘された。
 平成9年度の調査は、地球規模問題を解決に導くための新たな国際研究の枠組み、手法について検討を行い、提言を取りまとめた。

2.調査方法

 本調査は科学技術庁から財団法人日本科学技術振興財団に委託し、同財団では第一線の研究者からなる調査検討委員会(委員長:貝沼圭二 生物特定産業技術研究推進機構理事)を設置して検討を行った。

(1)実施体制

1)調査検討委員会の設置

 本調査を実施するにあたって、研究開発領域及び研究課題の設定、及び、研究開発推進体制の検討を行うため、以下の13名の研究者による調査検討委員会を設置した。

委員長 貝沼 圭二 生物系特定産業技術研究推進機構理事(全体監修)
委員 魚住 武司 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
内嶋 善兵衛 宮崎公立大学学長
篠崎 一雄 理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センター
植物分子生物学研究室主任研究員
中川原 捷洋 農業生物資源研究所長
中西 友子 東京大学大学院農学生命科学研究科助教授
林 健一 農林水産先端技術産業振興センター顧問
松本 聡 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
陽 捷行 農業環境技術研究所企画調整部長
山谷 知行 東北大学農学部教授
吉田 茂男 理化学研究所植物機能研究室主任研究員
渡邊 和男 近畿大学生物理工学部助教授
渡辺 雄一郎 東京大学大学院総合文化研究科助教授

2)ワーキンググループの設置

 下記のメンバーによるワーキンググループを設置した。

  貝沼 圭二 生物系特定産業技術研究推進機構 理事
  山田 英徳 財団法人日本科学技術振興財団振興部 部長
  山口 孝和 財団法人日本科学技術振興財団振興部 課長
  泉 博子 財団法人日本科学技術振興財団振興部 主任
  大野 力 財団法人日本科学技術振興財団振興部 副主任
  平井 真司 財団法人日本科学技術振興財団振興部
  金原 克範 元東京工業大学研究生

(2)実施方法

1)調査検討委員会における検討

 以下の日程で調査検討委員会を開催し、各議題についての議論を行った。

  (開催日) (議題)
第1回 平成9年12月10日 調査研究の内容及び調査方法についての検討
第2回 平成10年1月27日 地球規模問題-食料に関する課題-の研究戦略についての検討
第3回 平成10年2月25日 研究領域全体構想及び研究開発テーマ詳細についての検討
第4回 平成10年3月30日 研究開発推進体制及び報告書内容の検討

2)情報収集

 ワーキンググループは、「植物機能の解明」、「新技術による飛躍的食料生産」、「持続的生産のための環境保全技術」の各領域におけるそれぞれ10年後、20年後、40年後に達成すべき研究課題についての情報を、委員に対するヒアリング等を通じて収集した。さらに、平成8年度調査結果や第6回技術調査予測等を参考に、具体的な草案等を作り、調査検討委員会に提出した。
 また、これを達成するために必要な研究推進体制について、委員のヒアリング、海外調査等をもとに具体的モデル案を作成し、調査検討委員会に提出した。

3)海外調査

 地球規模問題に対する各国の考え方、及び、国際共同研究における指針設定及び業績評価の進め方を調査することを目的として、下記のとおり海外調査を実施した。

  • OECD/科学技術政策委員会/メガサイエンスフォーラム/地球規模問題に関するワークショップへの出席(平成10年3月2日~8日)
  • CGIAR事務局ヒアリング調査(平成10年3月10日~14日)

3.調査結果

(1)研究テーマの絞り込み及び設定

 人口の大幅な増加等に伴い、世界の食料需要は増大することが予想されるが、供給は農地減少、灌漑用水の枯渇などによる頭打ちに直面しており、長期的には食料需要が逼迫することが懸念されている。これは人類に対する脅威であり世界の安定のため我が国としても主導的役割を果たすべき問題である。特に我が国は、先進国の中で最も自給率が低く世界最大の食料輸入国であるため、大きな経済的・社会的影響を受ける恐れがある。この問題の解決のためには、途上国への技術移転、土地改良・灌漑排水等の基盤整備、流通の改善、生産国の経済的・政治的安定化等に対する様々な取組が必要である。しかしながら、このような措置を講じても、肥料や水を大量に使う従来方式による近代農法では、長期的には食料需要は満たせず、かつ、それ以前に窒素汚染等の環境上の制約に突き当たるものと考えられる。本調査では、2040年を目標年と設定し、そのために必要な科学技術上の課題の検討を行った。
 この結果、将来の食料問題の解決を目的とした高効率食料生産には、まず、高機能作物の作出が必要であり、遺伝子組み換え技術等を用いた「新技術による飛躍的食料生産」を中心の領域と設定した。また高機能作物の使用による環境の悪化を考慮し、優れた土壌及び水の維持はもとより、周囲の生態系に与える影響まで含め環境と調和するための「持続的生産のための環境保全技術」を、主軸を支える領域とした。さらに、2040年の目標達成のために必要なる植物機能に関する知識はまだまだ不十分であり、「植物機能の解明」に関する研究が不可欠である。この領域で得られた植物機能に関する新たな知識は、順次「新技術による飛躍的食料生産」に応用されることが必要である(下図参照)。

世界の食料需要に見合った持続的食糧生産

 本調査では、上記の各領域ごとに調査検討委員会を設けて、2040年から遡る形で、2020年、2010年までに解決すべき研究開発課題について、さらに絞り込みを行った(表1)。

表1:研究開発計画

表1:研究開発計画

 以下に、表1の各3領域内、及び領域間の関係を説明する。

 「植物機能の解明」の領域は、持続的食料生産達成のための基礎研究となるべき領域であり、幅広い研究が求められる。2010年までに「環境適応機構の解明」、「生物間相互作用の解明」を、さらに2020年までに「遺伝子機構の解明」、「植物ゲノムの構造及び機能の解明」を行う。これらの研究成果と、他領域の研究成果を合わせて、「環境耐性、耐病性を高めた多収量高品質型品種の開発と普及」を達成する。

 「新技術による飛躍的食料生産」の領域は、応用研究が中心であり、早期から各テーマの成果の融合を行っていく領域である。2010年を目標に「新遺伝資源の探索と解析」、「生物の遺伝的多様性の解析」、「主要作物への遺伝子導入、発現方法の開発」、「制限環境下への対応技術の確立」を、さらに2020年を目標に、「新遺伝子資源の機能解明」、「生物集団自身の遺伝的多様性の解明」、「植物機能の増強と付与、環境耐性品種、超多収性品種の開発」、「遺伝子操作と育種技術の融合・協調」を達成する。これと平行して、「植物機能の解明」の領域の研究結果も用いて、2020年までに「作物多収性機構の解析・利用」を行う。これらの研究成果が、2040年の目標である「環境耐性、耐病性を高めた多収量高品質型品種の開発と普及」、「生物における遺伝的多様性の維持・保全」、「持続的生産のための資材開発と普及」につながる。

 「持続的生産のための環境保全技術」の領域は、持続的食料生産の達成に必要な農業環境面の技術開発を行う領域である。2010年頃を目標に、「環境資源の保全及び有効利用技術の開発」、「環境負荷軽減技術の開発」、「肥効調節型肥料の開発」、「微生物の利用による化学肥料・化学農薬の削減」、「養分、疾病害診断システムの確立」、「環境における生物の多様性の維持」、「物質循環(エネルギーの有効活用)」を達成し、さらにこれらの研究結果を基に、2020年までに、「有用土壌微生物等の制御」、「肥効調節型資材の開発」、「生物圏を含めた環境資源の解明」、そして「環境を保全する農業技術の開発」を行う。これらの研究成果が、2040年の目標である「生物における遺伝的多様性の維持・保全」、持続的生産のための資源開発と普及」につながる。

 当面10年間に達成すべき研究課題について、さらに詳細な検討を行った結果を以下に示す(表2)。

表2:研究テーマ詳細

領域 2010年までの研究テーマ 研究テーマ詳細
植物機能の解明 植物ゲノムの構造及び機能解明 重要穀物であるコムギやトウモロコシ、主食に用いられるジャガイモやヤムなどの(塊茎・塊根)類、マメ科植物などのゲノム解析の推進
遺伝子利用手法の研究開発(核ゲノム機能の動態解析、ノックアウトプラントの作出法の開発、組織特異性や成育時期特異性が高く尚かつ高発現性の遺伝子プロモーターの同定・実用化)
遺伝子機能の解明(植物(光合成、窒素利用)、共生微生物) 光合成と窒素利用に関わる遺伝子機能(植物生理機能の解明ならびに持続的食料生産の分子基盤の構築に向けた光合成と窒素利用に関わる遺伝子機能の解析)
形態形成に関わる遺伝子機能(植物機能を有効に利用するために、生産性と品質の向上に直接関わる形態形成に関係する遺伝子機能に焦点を絞った解明研究)
窒素固定にかかわる遺伝子機能(生物間相互の情報伝達の受容機構や根粒形成に関わる遺伝子機能を解明し、遺伝子導入によってマメ科以外の植物に窒素固定能力を付与する技術の開発)
環境適応機構の解明(環境変動耐性、環境ストレス耐性) 環境適応機構に関与する形質を導入して補強することにより、大幅な環境変化が生ずるストレスに耐性を示す新作物の開発と、それによって植物育成可能環境の拡大を図る基盤の確立
植物の発芽から開花結実までのライフサイクル全体における環境耐性の生理学的検定法の確立、より広範な植物種への応用を考慮した、環境耐性に関わる形質を決定する遺伝子の探索と増強
生物間相互作用の解明(植物・植物、植物・病原菌/害虫) 植物と昆虫・微生物・ウイルス、植物と植物、植物と人類などの相互作用機構の解明(生物学的に安定な高生産性植物の育成。昆虫・微生物の接触・感染に伴って、植物は多様な有機化合物やタンパク質を発現して防御態勢を取ることが明らかにされている、これらの統括的防御反応を司る上流遺伝子の特定。植物がもつ病原体の侵入を感知する遺伝子産物の調査)
新技術による飛躍的食料生産 新遺伝資源の探索と解析 栽培種の近縁野生種や関連野生種のもつ有用遺伝子の探索と機能解明(生物種の遺伝的特性の解明と系統分類、有用遺伝子の探索と同定、生物種の保全及び生殖・増殖機構の解明、生物資源の維持保全技術の開発、生物資源の資源情報の管理利用システムの開発)
生物の遺伝的多様性の解析 生物種間の多様性及び、個々の種内における多様性の解析(生物種間の多様性保全の解析(集団間多様性)、生物種内の遺伝的多様性の解析(集団内多様性)、種の分化・変異機構の解明)
作物多収性機構の解析・利用 優良健康種苗の大量増殖技術の開発(各成分分析の精度向上、DNAを主とした分子マーカーを用いた量的形質の正確な解析(QTL解析)、遺伝子同定・単離、遺伝子導入などから成体の特性や機能に迫る逆遺伝学の手法などの導入、DNAレベルの遺伝子型分析による収量構成要素の解析)
主要作物への遺伝子導入、発現方法の開発(ゲノム可塑性利用等) 遺伝子操作による種々の形質を付与した作物の開発(効率良い遺伝子導入法の改良、既存の技術とは全く違うアプローチによる抵抗性や耐性の作出、遺伝子導入法の選択マーカーや多遺伝子を導入するための改良、ウィルスベクターの改良、遺伝子操作に用いる遺伝子の単離とプロモーターの解析、複数遺伝子の効率的導入法の開発、多数の遺伝子を制御する技術の開発、ゲノムDNAの遺伝子導入法の改良)
遺伝子導入による各種機能改変(環境耐性機能の改変、遺伝子導入による耐病害虫機能の改変、遺伝子導入による物質生産機能の改変、機能性作物の開発)
制限環境下への対応技術の確立 環境変化に強い遺伝子操作作物の開発(耐乾燥性、耐塩性付与、耐寒性付与、多重ストレス(自然界において同時発生する各種ストレス)に対する耐性付与、低リン環境耐性、重金属耐性)
持続的生産のための環境保全技術 環境資源の保全及び有効利用技術の開発 土壌侵食防止・地下水汚染対策・渇水対策技術、生育・品質・病害抵抗性の探索、畑田転換(水田機能の活用)と新作物の導入、家畜飼育と耕種農業との結合システムの開発、生産と環境保全を目指した地形連鎖の活用技術の開発
環境負荷軽減技術の開発 化学肥料・農薬汚染対策技術、メタンN2O硝酸対策技術(農業由来ガス成分の制御技術等)、バイオマス変換の再利用技術の開発
肥効調節型肥料開発 窒素、リン、カリウムの適正供給技術の開発
微生物利用による化学肥料・農薬の削減 窒素固定菌の利用による化学窒素肥料の削減、菌根菌の活用による養分吸収の向上、微生物の生産する抗生物質を利用した微生物農薬の開発
養分、疾病害診断システムの確立 作付体系の見直し、センシング技術や生育・病害虫の診断等の診断予測システムの開発、病害虫の生物的防除技術の開発、過剰養分診断・予測技術の開発、養分・病害診断システムの開発、低投入栽培における作物生理機能の解明と育種素材の開発
環境における生物の多様性の維持 生物相保全および生物多様性維持技術の開発
物質循環(エネルギーの有効活用) バイオマス変換の再利用技術等の生態機能・自然エネルギーの利用、自然エネルギー・生態機能の利用による施設農業の改善

(2)国際研究実施体制の在り方に関する具体的指針の設定

 西暦2040年頃の世界の食料需給に見合った持続的食料生産に対応する具体的な研究推進体制は、

  • 1)2010年頃までの基礎研究の推進
  • 2)2010年以降の基礎研究相互の融合
  • 3)2020年以降の現地試験、新品種普及等の対策の実施

 が重要である。このために望まれる今後の研究推進体制を下図に示す。

世界の食料需給に見合った持続的食料生産に向けて望まれる研究推進体制

世界の食料需給に見合った持続的食料生産に向けて望まれる研究推進体制 図

1)2010年の目標と達成のための手段

 2010年までの基礎研究を推進するにあたり、もっとも深刻な課題は、研究者数の少なさである。これを克服するためには、研究資金を投下するだけでは不十分であり、複数の拠点機関を中心に、課題毎に目標達成型のプロジェクト研究を行うことにより、当該研究の厚みを増すべく研究者の育成を同時に進める必要がある。そのためには、優秀なポスドクの確保が必須であり、国内のポスドクを対象とするだけでなく、先進国の優秀な研究者も積極的に登用する必要がある。さらに課題によっては海外の優秀な科学者のもとに研究者を派遣し、進んだ科学技術を効率的に取り入れる必要がある。また、途上国のポスドクを受け入れることも将来的な技術移転を想定した場合有効である。以下に基礎研究の推進体制モデルを示す。

2010年までの基礎研究の推進体制モデル

2010年までの基礎研究の推進体制モデル 図

2)2020年の目標と達成のための手段

 実際に持続的食料生産を行う地域を想定して学際的分野の異なる3領域16課題の研究成果の融合を促進するために、研究センターを設立し、各研究機関の調整、融合促進業務を行う。さらに本センターは、ある程度の規模の研究設備を持ち、プロジェクト体制では解決困難な課題を重点的に研究するとともに、植物新品種等、各研究機関の研究成果を同一条件のもとで試験する。また、FAO、CGIAR等の国際機関と連携し、世界の食料問題に関する情報拠点の役割も担う。将来、現地試験で生じた問題点の解決のために、本体制は2020年以降も継続されることが望ましい。

3)2040年の目標と達成のための手段

 2040年頃の世界の食料需給に見合った持続的食料生産を目的とした研究の推進にあたっては、研究成果が実環境に適用されることが必要不可欠である。基礎研究及び融合研究レベルで達成された研究成果を実際に普及させていくために、国内外の対象地域の研究所との連携が必要となる。また、研究成果のフィールドテスト・応用試験等の実施のためにも、早期から対象地域を選定し、綿密な連携関係を確立していくことが望まれる。

4.結論

 本調査は、世界及び日本の長期食料需給の見通しから、2040年頃には世界の食料需要に見合った食料生産を行う必要があるとの設定のもと、2010年、2020年をめどに達成すべき研究開発課題と、そのための推進体制を提案したものである。
 これらの取り組みと並行して、我が国は持続的食料生産に向けた我が国の長期的取り組みを各国にアピールし、持続的食料生産の重要性を意識させる必要がある。例えば、OECD科学技術政策委員会では、1999年3月に開催予定の科学技術担当大臣級会合の討議課題の一つに地球規模問題を取り扱うことになっており、この場に日本の取り組みを紹介し、その後も体系的に食料増産のために必要な科学技術上の取り組みを特定していくことは有意義である。同じように本年10月に開催されるAPEC科学技術担当大臣級会合や、2000年に開催されるCSD(国連・持続可能な開発委員会)の持続的農業問題の検討も利用していくべきである。このような努力と並行して、世界の最優秀レベルの研究者の能力を活用することを目的に、ヒューマン・フロンティア・サイエンス・プログラムのような大規模な国際プログラムを、将来的には日本主導で構築していくことが期待される。
 今後関係方面において、本報告について更に検討が行われるとともに、既存の関係機関の連携の下に、本内容について速やかに実現のための施策が展開されることが期待される。

問い合わせ先:科学技術庁科学技術政策局計画・評価課
〒100‐8966 東京都千代田区霞が関2‐2‐1
電話 03‐3581‐5271 担当:坪田 (内線316)

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