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小型材料の生体模擬環境試験が可能に ‐小型フレッティング疲労試験機の開発に成功‐[第187号]

‐第187号‐
平成11年3月18日

1.概要

 金属材料技術研究所(所長:岡田雅年)生体融和材料研究チームでは、優れた金属系生体材料開発のために、小型試験片を生体模擬環境でフレッティング疲労試験できる装置を独自に開発した。これまでに開発されているフレッティング疲労試験のための装置は、大型の試験片が必要であり、ダウンサイジングが求められる生体材料の試験のためには、小型の試験装置が求められていた。しかし、生体模擬環境を維持したままの小型装置の開発はこれまで困難とされていたが、今回この開発に成功したことで、生体材料の評価方法に大きな革新をもたらすものと期待される。
今回の成果の一部は今年3月に東京で行われる「日本金属学会第124回大会」において発表される。また、実用新案登録を完了した。

2.生体系金属材料のフレッティング疲労試験

 骨折の際に、治癒までの期間骨を固定する骨固定材、あるいは頭蓋骨や顎骨の補綴に使用されるミニプレートなどは、金属製のプレートを金属製のネジで締め付けて使用する。このとき、プレートとネジとの間には、荷重がかかることによって常に微視的なな摺り合わせが起こっている。この現象をフレッティングといい、これが原因で材料が腐食したり疲労破壊が起こったりする。この現象を再現するのがフレッティング疲労試験であり、金属材料技術研究所では、「生体適合性に優れた生体用構造材料に関する研究」の一環として早くから金属系生体材料に対して、溶存酸素や温度を制御した疑似体液中での試験を行っており、これまでに、フレッティング疲労特性を評価することに加えて、試験の際に溶出する金属イオンの種類と量が材料の組成とは無関係であることを明らかにし、試験溶液による細胞培養試験も行っている。しかし、実際に生体中で使用される金属材料には小型のものもあり、また、生体中にはもともと材料を埋め込む空間がないことから材料の高性能化に伴って小型化すると予想される。フレッティング疲労には、大きさの因子が大きく影響するため、できる限り実際に近い大きさの試験片で評価することが望まれている。

3.今回の成果

 疑似体液中の溶存酸素量及び温度を制御しながらフレッティング疲労試験を行うためには、これまである程度以上の大きさの試験片が必要であったが、今回科学技術振興調整費総合研究「QOLを指向した生体融和材料の新創出に関する研究」試験装置の小型化に成功し、長さ80mm(ミリメートル)(従来は180mm(ミリメートル))、板厚2.5mm(ミリメートル)の試験片を、試験片チャンバー容量(疑似体液容量)約70cc(シーシー)(外寸80x70x30mm(ミリメートル))の疑似体液中で、試験温度37℃(度)、溶存酸素濃度を体液と同じ4%に制御して評価できることとなった。
 小型サイズの純チタン試験片を大気中および疑似体液中において、疲労およびフレッティング疲労試験を行い、従来の大きさの使用した試験片と比較した。その結果、疲労試験においては試験片サイズの影響はなっかたが、フレッティング疲労試験では、小型試験片のほうが大きいフレッティング疲労強度を示し、試験片サイズの影響がはっきりと現れた。

4.波及効果

 高齢化社会に向かって、金属系生体材料の使用量は今後ますます増えていくと予想され、材料が必要期間の使用に耐え、再手術によって交換する必要がないことが要求される。そのためには、生体内での耐久性が明らかにされなければならない。本装置の開発によって、既存および新たに開発される金属系生体材料の評価を実際の使用環境に近い条件で行うことが可能になった。

5.今後の展望

 試作した小型フレッティング疲労試験機を用いて、新たに開発した素材、たとえば生体用アモルファス合金のフレッティング疲労特性を評価し、骨固定材に最適な素材の開発に取り組む。

補足説明

フレッティング疲労
 重ね板ばねやネジ止め部などにおいて、荷重がかかることで接触面でわずかなすべりを生じるため、接触面において損傷が発生し、それから発生したき裂が疲労により伝ぱして破壊に至ることがある。この現象をフレッティング疲労という。板状の軸荷重試験片にコの字形のブリッジを押しつけながら疲労試験されることが多い。フレッティング疲労強度は、試験環境に依存するといわれている。

問い合わせ先

(1)科学技術庁研究開発局 総合研究課 材料開発推進室
 〒100‐8966 東京都千代田区霞ヶ関2‐2‐1
 担当者:川口悦生、川越陽一
 電話03‐3581‐5271ext434Fax03‐3581‐0779

(2)科学技術庁金属材料技術研究所
 〒305‐0047 茨城県つくば市千現1‐2‐1  
 担当者:丸山典夫電話0298‐59‐2428(ダイヤルイン)Fax0298‐59‐2401
 塙 隆夫 電話0298‐59‐2434(ダイヤルイン)Fax0298‐59‐2401

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