21世紀に向けた地球科学技術の推進方策に関する調査(要旨) ‐日本と欧米の研究者の意見に基づく調査・検討‐[第192号]
(科学技術庁研究開発局海洋地球課 委託先:社団法人資源協会 地球科学技術推進機構)
‐第192号‐
平成11年7月22日
調査の概要
本調査は、科学技術振興調整費により、平成10年度に実施したものである。
目的
国内外の第1線で活躍している研究者70名にインタビュー調査を行い、最近の地球科学技術、とくに地球変動研究及び温暖化対策研究の現状等について尋ね、研究推進上の問題点、日本の研究開発水準、今後の推進方策等を調査検討する。
1.研究者が指摘する最近約10年間の状況の変化
- 人工衛星等による観測技術が大きく進歩し、全球的観測・研究が可能となった
- 予測モデルの性能向上等によりエルニーニョなどの中長期予測が実現した
- 地球温暖化等、気候変動に対する社会的関心が非常に高まり、IGBP、WCRP等の国際共同研究が大きく進展した
- IPCCへの貢献等、気候変動等の科学的知見が政治や政策と密接に結びつくようになり、研究者自身も政策との接点をかなり意識するような状況となった 等
2.日本の研究開発水準、日本に対する欧米研究者の評価等
- 日本の政府予算(地球変動研究約3.7億ドル、温暖化対策研究約9億ドル)は、米国の約半分
- 米国と比較し、日本の研究者数は地球変動研究(約2万人)で3分の1、温暖化対策研究では同程度と推定され、研究成果の国際的発表は6分の1と少ない
- 欧米研究者の評価が高い分野は、スーパーコンピューターの技術、日本周辺の継続的な海洋観測研究、応用・製品化技術など
- 欧米研究者の評価が低い分野は、ソフトウェア技術、自国外の観測体制、基礎研究、独創的・革新的研究など
- 欧米研究者が期待しているプロジェクト等は、地球シミュレーター計画、全国的GPS観測網、途上国への環境技術協力など
3.研究者が指摘する研究推進上の課題・推進方策
観測・研究の対象が地球規模に拡大する一方、それに充分対応しない予算制度、国内関係機関の連携不足、研究全体を構築しリードするコーディネート機能の不在等の問題点を改善していくことが今後の推進方策として重要。
※なお、本調査結果は、科学技術会議政策委員会の下で進められている「地球科学技術に関する研究開発基本計画(平成2年8月:内閣総理大臣決定)」のフォローアップ作業の基礎資料とする。
科学技術庁研究開発局海洋地球課
石丸恒存
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