(委託先:株式会社東レ経営研究所)
‐第199号‐
平成11年11月11日
本調査は、科学技術振興調整費により、平成9年度から平成10年度にかけて実施しているものであり、今回は平成10年度の調査結果について報告するものである。
我が国の研究支援体制について、国内の現状を把握し、欧米の実態を比較・分析することによってわが国の問題点を明らかにし、わが国の研究支援体制のあり方を検討するための基礎資料を得ることを目的とした。昨年度は日本及び米国、今年度は欧州の研究機関・研究者に対してアンケート・ヒアリング調査を実施し、今後の課題をとりまとめた。
欧州(英独仏)の主要な研究機関の実態調査、各国の教育制度、職業訓練・職業資格制度等の調査、わが国技術系研究支援者の実態調査、研究支援のニーズの動向分析を実施した。さらに、前年度の米国及び我が国における調査結果を含めて、「研究支援の構造と様態」として総合的に体系化し、欧米との対比に基づく考察を加え、わが国の研究支援体制の問題点を整理した。
欧米の研究支援で、わが国の実態との対比でとくに注目される点は、1)研究者、研究支援者ともに職務上の役割期待が明確にされていること、2)研究資金に支援者の給与や研究機関のオーバーヘッドが含まれており、研究者の裁量で研究支援体制をある範囲で整えることができること、3)特に欧州では、技術者、技能者の職業訓練・職業資格制度が充実していることなどである。
また我が国に於いて、表面的には研究者とは区別し難いが、高度な専門技術に基づいて研究支援に従事する「専門研究スタッフ」と称すべき人たちが研究活動の中で重要な役割を果たしている場合が少なくないこと、このような支援のニーズが実際に高まりつつあることを明らかにした。
わが国の公的研究機関の研究支援体制の強化の基本とすべきことは「能力のある研究者が公に認められたテーマで研究を遂行しようとするとき、それに必要な専門的、技能的協力と支援を研究者自らの裁量で準備できる環境を整えること」である。
以上の観点から、政策的課題として、「研究資金のあり方の改革(研究支援体制を研究者の裁量で準備できる環境)」と「専門人材の流動化促進と技術系人材の専門能力の評価の仕組みの構築(研究支援者のソースの確保)」があること。さらに、制度的課題として、「専門研究スタッフの育成」などが必要であることを明らかにした。
宮崎
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