我が国の研究開発水準に関する調査[第207号]

(委託先:株式会社日本総合研究所)

‐第207号‐
平成12年8月10日

調査の概要

 本調査は、科学技術振興調整費により、平成11年度に実施されたものである。

目的

 研究開発基盤及び研究開発成果の状況についての調査及び専門家へのインタビュー調査により、分野ごとに主要先進国と比較することを通じて我が国の研究開発水準を把握し、科学技術基本計画などの科学技術政策立案の基礎資料とする。

調査結果

 研究開発基盤の分析として「研究開発費」と「研究開発人材」、研究開発成果の分析として「英文誌論文」と「米国登録特許」について、分野別(ライフサイエンス、情報通信、環境、エネルギー、物質・材料、製造技術、社会基盤の7分野)、国別(日本、米国、ドイツ、フランス、イギリスの5ヶ国)の比較を行った。さらに、国内外のトップクラスの研究者等を対象として、インタビュー調査を実施した。調査結果の主な点は次のとおりである。

分野 対米 対欧 総合評価
ライフサイエンス ●(黒丸)
低い
●(黒丸)
やや低い
米国が国策的研究開発により先行。欧州も米国に追従している。我が国は、政府の取り組みの遅れの他、データベース構築など、情報通信分野との境界領域の弱さが問題。
情報通信 ●(黒丸)
やや低い
○(丸)
同等
我が国はハード応用技術、情報端末などのホームエレクトロニクス分野では高い技術力を持つ。一方、ソフト技術では欧米が優れている。なお、次世代の社会構想に基づくネットワーク構築や移動体無線、PC用MPUに代表される標準化戦略などについて欧米の取り組みが進んでいる。
環境 ●(黒丸)
僅かに
低い
●(黒丸)
やや低い
我が国は環境対策技術など既存産業と密着した分野では欧米と同等の水準にある。欧米はライフサイクルアセスメントに代表される次世代技術や、地球科学などに関する国際的な活動で先行している。
エネルギー ◎(二重丸)
やや高い
◎(二重丸)
やや高い
我が国は重要な産業技術である火力・原子力発電において高い技術力を持つ。また、省エネルギー・燃料電池など、エレクトロニクス・自動車産業に近い技術でも一定の水準にある。
物質・材料 ◎(二重丸)
やや高い
◎(二重丸)
やや高い
我が国は既存の材料に関する水準は極めて高い。しかし、欧米が次世産業用素材の開発について国策的な取り組みを進めていることに注意が必要。
製造技術 ●(黒丸)
やや低い
●(黒丸)
やや低い
既存の加工組立産業領域では、我が国は高い技術力を持っているが、欧米はエレクトロニクス関係の将来技術などにおいて、我が国を凌駕する国家的取り組みを進めている。
社会基盤 ●(黒丸)
低い
○(丸)
同等
土木、建築、鉄道、船舶などの産業技術では欧米と同等もしくはそれ以上であるが、航空、宇宙、海洋、交通システムにおいては欧米より低い。

(注)◎(二重丸)○(丸)●(黒丸)は我が国と欧米との比較で、◎(二重丸):我が国の方が高いまたはやや高い、○(丸):我が国と同等、●(黒丸):我が国はやや低いまたは低い、とした。

今後の課題

 我が国は既存産業の現状技術の範疇では非常に高いポテンシャルを有しているものの、ゲノム科学、バイオインフォマティクス、循環型社会システム、燃料電池、新材料など既存産業の次世代技術や未来産業技術の領域においては全体的に遅れが見られることから、この克服が重要課題である。

お問合せ先

科学技術庁科学技術政策局計画・評価課

野村
電話番号:03‐3581‐9983(内線318)

(科学技術庁科学技術政策局計画・評価課)

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