科学技術と社会・国民との間に生じる諸問題に対応するための方策等に関する調査 科学技術と社会・国民との相互の関係の在り方に関する調査[第210号]

(委託先:財団法人政策科学研究所)

‐第210号‐
平成12年9月14日

調査の概要

 本調査は、科学技術振興調整費により、平成10年度から平成11年度にかけて実施しているものであり、今回は平成11年度の調査結果について報告するものである。

目的

 科学技術と社会・国民との関係が重要性を増していることに伴い、その適正な関係を形成するため必要な視点と整備すべき基盤的システムの検討に資することを目的とする。

調査結果

 科学技術及び社会の動向、科学技術と社会の関係の動向、並びに科学技術と社会の関係をめぐる問題事例の分析を通じて、特に今後の我が国の社会において重要と考えられる9課題を抽出した。さらに、各々の状況分析や取り組み方向の検討を行い、我が国で整えるべき基盤・環境に関する論点を提起した。

  • 1)社会的国家的な目標を実現する戦略的総合的な科学技術体制の整備
  • 2)市場メカニズムだけでは実現が困難な公共ニーズ・社会的欲求への対応
  • 3)重大化・複雑化する科学技術の「リスク」など負の側面への対応
  • 4)生活者や社会の視点を反映した科学技術関連政策の形成と展開・評価
  • 5)科学技術に対する国民の関心・理解・態度の形成基盤の拡充
  • 6)研究者・技術者の社会的責任を担う自主的・組織的活動の支援
  • 7)社会的意思決定を支援するための科学技術の振興・活用と専門家の育成・確保
  • 8)「自己決定・自己責任」型社会における消費者・生活者の支援システムの整備
  • 9)社会的テクノロジー・アセスメントと新しい合意形成手法の展開

 行政の役割や社会のものの決まり方が変化しており、十分な情報提供下で、社会・国民の関与・参加(責任分担)や関連主体間で「共に事にあたる」取り組みが有用で不可欠な対象・局面が拡大している。ここでは専門家の支援や関係者との対話により、“熟慮”して、内容的に妥当で手続き的に正当な社会的意思決定を行う体制と能力が必要となる。諸外国では、科学技術と社会の関係が国家や社会の活力や問題解決能力を左右する戦略的課題と見なされ、既に各国なりの対応を進め、国際協調や相互学習も始められている。

提言

(1)科学技術のガバナンス(協治:行政や専門家のみでなく社会の様々な関係主体が責任を持って科学技術の在り方に関わる状態)を確立するために、問題に適した「開かれたシステム」を試行し、そのシステムの構築と運用を図る。

【開かれたシステムの例】

  • 市民フォーラム・「コンセンサス会議」、行政/議会フォーラム、参画型政策形成・政策評価システム、オープン・コンサルテーション、参加型調整機構、「リスク・コミュニケーション」、「インフォームド・コンセント型プロセス」、「問題解決ネットワーク」

(2)「開かれたシステム」の構築・運用と定着・成熟化には、その基盤・環境の整備、特に情報的・人的な支援が必要である。

【情報的・人的な支援の例】

  • 市民、非専門家の関心・理解・態度の形成と責任ある参加を促すためには、情報開示の上で、専門家との双方向的コミュニケーションや使いやすい支援情報システムが有効である。
  • 「開かれたシステム」において参加者の各々の意見の交換や集約、合意の形成などを図る機能を確保するには、システムの運営やサポートにあたる様々な専門的人材(ファシリテータなど)が重要であり、今後の経験と学習の中で育成すべきである。
  • 開かれたシステムの意義と必要性を認識した行政やNPO、メディアによる支援も必要である。

お問合せ先

科学技術庁科学技術政策局計画・評価課

角田隆則
電話番号:03‐3581‐5271(内線343)

(科学技術庁科学技術政策局計画・評価課)

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