補足説明 「今年度山体掘削を終了~成果速報」

 雲仙科学掘削では、雲仙火山の東側山麓において火山体の内部構造を調べるための掘削を実施中である。平成11年度には島原市南千本木において深度750メートルのコア掘削を、平成12年度には深江町上大野木場において深度900メートルのコア掘削を実施した(図1、3、4)。これらの掘削により、雲仙火山の誕生以来の詳細な噴火活動の歴史が明らかにされるとともに、火山活動様式の時間変化を知ることができると期待されている。

 平成11年度掘削(USDP‐1)では、厚さ684メートルの雲仙火山噴出物を連続的に採取し、その下に雲仙火山生成以前の別の古い火山体が出現した。採取したボーリングコアの岩相と試料解析・分析結果から、火山活動を復元中である(図5)。最下部には軽石を含む火砕流堆積物が確認され(約50万年前)、雲仙火山が形成初期には現在とはかなり異なった爆発的な噴火活動をしていたことが明らかになった。また、その上位にも発泡した岩塊を含む火砕流堆積物が厚く積み重なっており、平成噴火のような溶岩ドームの崩落に由来するような火砕流ではなく、火道内で爆発するタイプの火砕流が頻発していたらしい(約20万年前)。その後、この地域には噴出物が到達しにくくなり、最近2万年では火山体の崩壊たい積物が1回と小規模な火砕流が複数回のみ見られた。

 平成12年度掘削(USDP‐2)では、厚さ900メートルの雲仙火山噴出物が連続的に採取できた。この掘削孔ではまだ雲仙火山基底に到達しておらず、平成13年度に深度900メートルから深度1400メートルまで500メートル増堀する予定であり、深度1000~1200メートルにおいて基底に到達すると期待される。この掘削地点には、USDP‐1と異なり最近10万年間の火山噴出物が厚く堆積しており、より近年の噴火活動が解明できるものと期待できる。現在試料は解析・分析中であるが現地でのコア検討により、1792年の島原大変のような火山体が崩れる火山活動が3回確認できた(図6)。雲仙火山では、妙見岳や野岳が山体崩壊を起こしたことが地形から推定されていたが、堆積物が地表に露出しないためその詳細がこれまで不明であった。とくに深度70~100メートル付近の山崩れの堆積物はおよそ2万7千年前の土壌の直下にあることから、妙見岳の崩壊に由来すると見られる。また、その下位の2枚の山崩れの堆積物のどちらかが、野岳の崩壊に由来する可能性がある。

-- 登録:平成21年以前 --