図38.基盤技術や技術インフラに関する公的研究開発・支援がなされた事例
高性能放射光発生技術(フロンティア、実現技術)
事例分析のポイント
- 日本の高性能放射光発生施設は、世代変化に対応して整備が進められてきた。SPring-8は8GeV(ジェブ)という高エネルギーを持つ世界一の放射光実験施設である。同規模の施設は、他に米欧に各一施設存在するのみである。
- 施設整備には、1960年代から継続的に続けられている大学や公的研究機関における研究開発が寄与している。
- 放射光施設は研究開発インフラとしてさまざまな科学技術研究に役立っているとともに、産業界による利用、海外との共同研究も進みつつある(エレクトロニクス、材料などの分野で製品性能の向上やコスト低減へのインパクトが見られ、今後創薬分野等でインパクトが期待される)。
経済的インパクト
- 新材料による売上増大
- 開発された排気ガス用触媒の高性能を理論的に解明することにより、車への搭載に貢献。
- リチウム二次電池の充放電能の劣化解明により、サイクル寿命向上に貢献。
- 微細加工による新機能製品創出
- 超音波内視鏡に用いる超音波検査用複合圧電振動子。
- MEMSやLSIなどの加工。
- イメージングをもちいた広告効果
- スタッドレスタイヤのファイバが氷に刺さる所の撮影に成功し、宣伝へ利用された。
- 放射光発生装置の売上
- 微細加工等の研究開発に用いる小型放射光発生装置が少数販売された。
- たんぱく質の構造解明等による新薬開発への期待
社会的インパクト
- 考古学上の謎(三角縁神獣鏡)の解明
- 世界最高性能の施設の存在による日本の国際的研究地位の向上
- 新材料による各種環境負荷低減
国民生活へのインパクト
- 犯罪捜査への活用
- 新薬による疾病の克服の期待
- 心臓冠状動脈診断など診断技術の向上の期待
科学技術・学術政策局調査調整課科学技術振興調整費室