図37.技術の発展・流れに合わせた公的研究開発・支援がなされた事例

肺がんの早期発見に有効なヘリカルCT技術(ライフサイエンス、実現技術)

事例分析のポイント

  • 肺がんの早期発見には、1970年代から開発が進むCTスキャンの高性能化の寄与が高く、CT開発では日本がリードしている。1980年代から民間企業を中心に開発されていたヘリカルCTにより、早期段階の非常に小さな腫瘍を発見できるようになった。
  • 1990年代に入り、民間企業がヘリカルCTをさらに高性能化したマルチスライスCTを開発した。旧厚生省・旧文部省・旧科学技術庁の共同事業「がん克服新10ヵ年戦略」で実証試験がなされ、これによってヘリカルCTが普及した。
  • 肺がんを早期に発見する検査技術として社会(検査の信頼性向上等)および国民生活(検査時間の短縮や早期発見による治療効果向上等)に幅広いインパクトを有する。

技術の発展・流れに合わせた公的研究開発・支援がなされた事例の図

経済的インパクト

  • 早期発見による医療費投入の適正化
  • 医療機器の市場拡大
    2001年に496億円、シェアトップは東芝(47.3パーセント)、ついでGE横河メディカルシステムズ(32.5パーセント)、シーメンス旭メディテック(10.5パーセント)
  • 検査の迅速化、自動化によるコストダウン

社会的インパクト

  • 検査の信頼性の向上

国民生活へのインパクト

  • 検査時間の短縮
  • 肺がん早期発見による治療効果向上。
    ヘリカルCT導入前は人口10万人に対して163名の発見率であったが、導入後は人口10万人に対して361名と倍以上の発見率
  • 手術後の「生活の質」の向上

ヘリカルCT導入前後での発見肺がんの内訳

ヘリカルCT導入前後での発見肺がんの内訳のグラフ

出所:東京から肺がんをなくす会(ALCA)

  • 上記のデータは、ALCAの会員(約9割が男性、平均年齢は約60歳)のうち、1999年8月までにのべ37,145人に検診(93年8月までには胸部X線写真と喀痰細胞診、93年9月以降は胸部X線写真、喀痰細胞診に加えてヘリカルCT)を実施した結果で、82人の肺がんを発見している。
  • ヘリカルCT導入後に発見された肺がんは、早期(1期)のものが多いということが特徴になっている。
  • 1期(がんが原発巣にとどまっている段階)であれば手術によって治すことが十分可能で、肺胞の表面にだけがん細胞があるようなごく早期であれば、100パーセント治癒できることがわかってきている。2~4に進むほど進行し、4期は原発巣の他に、肺の他の場所、他の臓器に転移がある段階。術後の5年生存率は、1期:80パーセント、2期:60パーセント、3期:40パーセント、4期:10パーセント未満とされている。

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科学技術・学術政策局調査調整課科学技術振興調整費室

(科学技術・学術政策局調査調整課科学技術振興調整費室)

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