ここからサイトの主なメニューです

「基本計画の達成効果の評価のための調査」報告書[246号]

‐第246号‐
平成17年3月25日

 このたび、科学技術政策研究所は、科学技術振興調整費のプログラムとして平成15年度~16年度の2カ年にわたり実施した科学技術振興に関する基盤的調査「科学技術の現状に関する調査」について、成果をとりまとめた。
 本調査は、第3期科学技術基本計画(以下「基本計画」という。)の策定のための議論に資するべく、第1期及び第2期基本計画の達成効果等について様々な視点からの調査・分析を行った。
 研究開発投資や定量目標の達成状況、論文・特許等の分析をもとに研究開発の生産性、効率性の向上など定量的事項の把握、科学技術関係人材育成・確保や産学官連携・地域イノベーション振興に関する制度改革の状況、経済・社会、国民生活へインパクトを与えた技術の分析、我が国の研究活動のベンチマーキング、海外における科学技術政策の動向といった事実関係の把握を中心に調査を行った。
 調査のハイライトは別紙のとおりである。詳細については、下記の問い合わせ先まで。

  • NR ナンバー83 基本計画の達成効果の評価のための調査 ‐主な成果‐
  • NR ナンバー84 第1期及び第2期科学技術基本計画期間中の政府研究開発投資の内容分析
  • NR ナンバー85 第1期及び第2期科学技術基本計画において定量目標の明示された施策の達成状況
  • NR ナンバー86 主要な科学技術関係人材育成関連プログラムの達成効果及び問題点
  • NR ナンバー87 主要な産学官連携・地域イノベーション振興の達成効果及び問題点
  • NR ナンバー88 科学技術研究のアウトプットの定量的及び定性的評価
  • NR ナンバー89 科学技術振興による経済・社会・国民生活への寄与の定性的評価・分析
  • NR ナンバー90 基本計画の成果の内容分析:我が国の研究活動のベンチマーキング
  • NR ナンバー91 主要国における政策動向調査及び達成効果に係る国際比較分析
  • NR ナンバー92 科学技術人材の活動実態に関する日米比較分析 ‐博士号取得者のキャリアパス‐

問い合わせ先
 科学技術政策研究所 企画課 岡村、蛯原 電話:03‐3581‐0605(直通)

基本計画の達成効果の評価のための調査 報告書

(NISTEP REPORT‐ナンバー83~92)

平成17年3月25日
文部科学省
科学技術政策研究所

1.目的

 わが国の科学技術政策は、5年毎に策定される科学技術基本計画に基づき推進されており、平成8年7月に第1期基本計画が策定され、平成17年度は第2期基本計画の最終年である。総合科学技術会議をはじめとした行政部局等においては、第3期基本計画の策定のための議論が開始されているが、これに先立ち、科学技術政策研究所では、行政部局等における本議論に資するべく、第1期及び第2期科学技術基本計画の達成効果等について様々な視点からの調査・分析を行う「基本計画の達成効果の評価のための調査」を平成15~16年度の2ヶ年にわたり、科学技術振興調整費を活用し、実施した。
 このたびの報告書は、上記2ヶ年にわたる調査成果をまとめたものである。また、10冊のNISTEP REPORTのうちナンバー83は成果を総括したもの、 ナンバー84~92は下記のサブテーマごとにまとめたものである。10冊のNISTEP REPORTの一覧のリンク先はこちら。

2.調査の全体概要

 本調査は、8つのサブテーマに分けて進められている。それぞれの調査の全体概要は次のとおり。

(1)基本計画期間中の政府研究開発投資の内容分析

 基本計画が策定される前の5年間(平成3~7年度)、第1期基本計画期間(平成8~12年度)及び第2期基本計画期間(平成13年度以降)における政府予算のうちの科学技術関係経費の総額及び内訳について調査・分析をする。

(2)基本計画において定量目標の明示された施策の達成状況

 基本計画において定量目標の明示された施策及び定量的な判断が可能な内容を含む施策について具体的な指標を指定し、数値データ及び情報を収集・整理する。

(3)科学技術関係人材育成関連プログラムの達成効果及び問題点

 基本計画に基づき実施された科学技術関係人材育成関連プログラム全般に関する基礎情報を収集・整理するとともに、実施されたプログラムの関係者の見解について調査する。

(4)産学官連携・地域イノベーション振興関連施策の達成効果及び問題点

 基本計画に基づき実施された産学官連携・地域イノベーション振興関連施策全般に関する基礎情報を収集・整理するとともに、これらの施策の対象となった関係者の見解について調査する。

(5)科学技術研究のアウトプット(論文・特許)の定量的・定性的評価

 本調査は、論文や特許といった科学技術研究のアウトプットを分析し、基本計画のもとでの研究開発活動を統計的かつ体系的に把握するとともに、基本計画が日本の研究開発システムに与えた影響を明らかにする。

(6)科学技術振興による経済・社会・国民生活への寄与の定性的評価分析

 経済・社会・国民生活に大きなインパクトを与えた技術を抽出し、それらの技術における公的研究開発・支援の位置付けを明らかにすることにより、これら技術のインパクト実現過程における公的寄与の有効性を検証する。

(7)基本計画の成果の内容分析

 論文分析や海外の研究者への聞き取り調査等により、世界の中における日本の研究開発活動の位置づけを明らかにするとともに、論文の量及び質について、主要国と分野別に比較をする。

(8)主要国における施策動向調査及び達成効果に係る国際比較分析

 政府研究開発投資の拡充・重点化関連施策、科学技術関係人材育成関連施策及び産学官連携・地域イノベーション振興関連施策を中心に主要国の科学技術施策の動向について調査し、国際比較分析を行うとともに、海外専門家の見解について調査する。

3.調査成果のハイライト

 本調査成果のハイライトは以下の通り。詳細については、主な成果をまとめたNISTEP REPORT ナンバー83及び各サブテーマの報告書であるNISTEP REPORT ナンバー84~92を参照されたい。

  • 政府研究開発投資については、1期では科学技術関係経費は増加し、伸び率は一般歳出と比較しても高く、米国との比較においても差が縮まっている。2期も引き続き増加し、一般歳出と比較しても伸び率は高かったが、その伸びはやや鈍化した。一方米国が大きく伸びているため、日米の比率は基本計画以前の状態近くまでに後戻りしている。また、政府研究開発投資の対GDP比率1パーセントという目標とはかなり開きがある。(図1図2
  • 知の創出に関する研究環境については、基礎研究資金の比率は高まっているが、米国は2期に更に伸ばしている。競争的資金は伸び、基盤的な研究費は横ばいである。研究施設やデータベースも含めた知的基盤整備は進展してきている。しかしながら研究支援者について日本は、ドイツ・フランスより低い水準であると考えられる。また、国内でセクター別にみると、特に大学等において低水準である。(図3図4図5図6図7
  • 被引用度(論文1編当たりの被引用回数)上位10パーセント論文の筆頭著者に対するアンケート(以下「トップリサーチャー調査」とする)によれば、研究環境は多岐にわたり改善されているが、「研究時間」は少なくなったとの結果が得られている。研究環境が良くないとの指摘が最も多い5項目は、「外国人研究者の人数」、「ポストドクター以外の若手研究者の人数」、「ポストドクターの人数」、「研究支援者の充実」といった人材と「地域連携支援制度」である。質の高い論文を書くに当たって研究に好ましい影響を与えたとして最も指摘が多い3項目は、「政府の競争的資金の量」、「研究施設・設備の充実」、「研究テーマ設定の自由度」である。また、研究の障害・制約となっているとして最も指摘が多い3項目は、「研究時間」、「研究スペース」、「経常的な研究資金の量」である。(図8(PDF:54KB)図9
  • 研究環境が整備されていく中で、知的成果が上がっている。論文は世界におけるシェアを伸ばしている。(図10)特に被引用度が上位1パーセント、10パーセントといった質の高い論文のシェアが伸びている。(図11)世界における日本の論文シェアをセクター別にみると、企業がシェアを下げる一方、特殊法人(当時)や大学が伸びている。また、日本の中での論文数シェアをみると、従来シェアが低かった大学がシェアを伸ばしてきている。(図12図13
  • 特許に関しては、日本の全世界への出願数は増加しているものの米国が大きく伸びており、シェアは大きく下がっている。(図14)米国登録特許については、近年、特許が他の特許に引用される度合いであり、質を示す指標である被引用数シェアは上昇していたが、量を示す件数シェアは下がっていたところ、最新データでは件数シェアも増加している。(図15
  • インプットと論文の関係で見た知的生産性も着実に上昇している。自然科学系大学教員1人当たりの論文数は増加し、米国と同程度になってきている。大学の自然科学系研究費当たりの論文数も変動はあるがほぼ同じ水準にある。(図16)また、論文を数多く生産する大学と、博士課程を多く有する大学との間には密接な関係があると考えられる。(図17
  • 分野別の資金配分についてみると、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の重点4分野の研究関係経費は、額も全体に占める割合も増加している。(図18
    競争的資金についてみると、重点化には関係なく研究者の自由な発想に基づく研究を対象とする科学研究費補助金では、上記重点4分野への配分は1期、2期を通じて7割弱で横ばいであり、多様な分野に配分されている。それ以外の競争的資金の重点4分野の配分は2期に入り重点化の傾向がみられる。(図19
  • 分野別に論文数シェアと論文の質を示す相対被引用度(被引用度について世界平均を1.0として比較した値)で見ると、ナノテクノロジー・材料は論文数シェアも相対被引用度も他の3分野と比較して高くかつ上昇傾向である。ライフサイエンス、情報通信、環境の論文数シェアは全体として上昇傾向であるが近年は横ばいである。しかしながら、ライフサイエンス及び環境の相対被引用度は上昇傾向が続いている。(図20図21
  • 海外のトップクラスの研究者へのヒアリング調査では、注目される日本の成果として、世界的研究施設(地球シミュレータ、スーパーカミオカンデなど)や国際プロジェクトへの貢献(ヒトゲノムなど)が挙げられた。また、特定領域で基礎から応用に至る成果を継続的に出し続けること(糖鎖研究など)の方が、広い領域の中で、単発的に優れた成果を出していているよりも、強い存在感を示し得ることが示唆された。その一方、最初のアプローチは非常に優れているが、研究を発展させるフォローがなされないなど、分野によっては「研究の深さが足りない」との指摘もあった。
  • 任期付任用制度の導入は進んでいる。しかし、任期付任用制度が適用される研究者の在籍研究者総数に占める割合は、若手を中心に上昇傾向にあるものの、未だ高くはない。(図22図23
  • 知の活用について産学官連携の進展をみると、大学、政府系研究機関、地方公共団体に連携の窓口や担当部署が数多く設置され推進施策も多く、産学の共同研究も増加し、今後も増加が見込まれる。このような結果、企業の論文に占める産学共著の割合は上昇し5割を超え、米国以上になっている。(図24
  • 米国登録特許1件当たりの科学論文の引用件数であり、特許における科学知識の活用度を示すサイエンスリンケージで見た場合、日本特許は欧米に比べ科学論文との連関がかなり小さい。(図25)しかしながら、世界の被引用度上位500特許(世界のトップ500特許)と日本人発明特許の被引用度上位500特許(日本のトップ500特許)を見ると、日本の科学論文は、世界のトップ500特許で米英に続いて3番目に多く使われている。日本のトップ500特許でも、米国の科学論文が最多で、次がドイツ、日本となっている。(図26
  • 大学から産業界への技術移転をみると、ライセンス数は着実に増えてきているものの、ロイヤリティ等収入はまだ少なく、制度的に20年程先行している米国及びイギリスと比べ、個人ベースの連携に依存した知的財産の活用を主軸としてきた我が国では組織ベースの本格的成果は未だ顕在化していない。(図27図28(PDF:22KB)
    (ちなみに、2004年においては、株式会社東京大学TLO1社のみで約25億円のロイヤリティ等収入を上げるなど、大学発の知的成果の移転・活用により大きな果実が得られるケースも出てきており、今後の動向が注目される。)
  • 地域イノベーションについては、国レベルでの施策が推進され、地域においても体制が整備されてきている。競争的資金等のインプット、研究者数等のインフラ、論文・特許等のアウトプット、付加価値額等の波及効果を指標にすると、全体としてインフラは増加していないが、インプットと波及効果は増え、アウトプットもインプットや波及効果ほどではないが増えている。地域的には東京、近畿、関東(東京を除く)が波及効果で伸びている。また、地域科学技術施策が採択されている都道府県と採択されていない都道府県とでは総合的な指標の伸びに差がある。(図29(PDF:21KB)図30(PDF:19KB)図31(PDF:26KB)
  • 科学技術と社会のコミュニケーションについては、国民は説明されれば理解できると考えている人が多い。政府系研究機関は、情報の公開をしている割合は高いが、国民は知る機会や情報提供をしてくれるところが十分にあるとは考えていない人が多い。(図32
  • 科学技術の経済・社会・国民生活へのインパクトの実現に関して、公的研究開発・支援の寄与について8分野の実現技術、未実現技術あわせて32事例について調査したところ、光触媒材料等に見られる基礎研究に対する公的研究開発・支援、住宅用太陽光発電システムや肺がんの早期発見に有効なヘリカルCT技術等に見られる技術の発展・流れに合わせた公的研究開発・支援、高性能放射光発生技術等に見られる基盤技術・技術インフラに関する公的研究開発・支援、高演算速度の並列コンピュータ等に見られる調達を含む政策連携によるインパクト実現の促進の4類型があることが分かった。(図33図34(PDF:21KB)図35図36図37図38図39

 以上のように、第1期、第2期科学技術基本計画期間を通じ、我が国は、研究開発投資の拡充、人材の育成、産学官連携の促進、研究環境の改善をはじめとして、多岐に渡る科学技術政策への取り組みを実施してきており、その成果が現れてきている。
 本調査により、我が国の科学技術研究開発の成果のうちでも、論文による成果については着実に向上しており、人材、産学官連携等のシステム面についても向上の基盤が整備されていること、また、公的研究開発・支援は、様々な分野にわたり多様な形で経済・社会・国民生活に対して貢献していることも明らかになった。ここで力を弛めることなく取り組むことにより、大きな発展が期待される。一方、アジア諸国をはじめとした海外主要国においても、科学技術は一層重視され、投資の拡大に伴い、成果も顕在化してきている。

 今後の世界の中での我が国の科学技術を考えると、

  1. 「知の創出」について欧米先進諸国と肩を並べるレベルになった我が国は、その研究基盤の一層の充実を図り、国際的な知識社会における存在感を更に高めていくことが求められるとともに、
  2. 「知の活用」のプロセスに関しては、大学から産業界までを含む知の活用やイノベーションについて、これまでの努力で確立されつつあるシステムを本格的に機能させ、経済・社会に貢献していくことが求められる。

 すなわち、第1期、第2期において達成された成果を足がかりに、残された課題を克服しつつ、更なる大きな発展を目指すべく、科学技術政策に積極的に取り組むことが次期基本計画における課題である。

内容に関する問い合わせ先
 科学技術政策研究所 企画課 担当:岡村、蛯原
 電話 03‐3581‐2466(直通) FAX 03‐3503‐3996
 科学技術政策研究所

お問合せ先

科学技術・学術政策局調査調整課科学技術振興調整費室

Adobe Readerのダウンロード(別ウィンドウで開きます。)

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Readerが必要です。
Adobe Readerをお持ちでない方は、まずダウンロードして、インストールしてください。

(科学技術・学術政策局調査調整課科学技術振興調整費室)

-- 登録:平成21年以前 --