2.各論 (5)ゲノムフロンティア開拓研究

1
次世代DNAマイクロアレイシステムの開発

(研究期間:平成11年度~15年度)
研究代表者 松本和子(早稲田大学理工学部教授)
中核機関 理化学研究所
研究課題の概要
  本プロジェクトは、新しい測定原理に基づいて、高速、高感度、高精度の次世代型マイクロアレイシステムを開発することが目的である。
   DNA二本鎖に特異的に結合する縫い込み型インターカレーターに、ユウロピウムなどの遅延蛍光物質を組み合わせた新しい染色剤を開発すること、この染色 剤に合わせたマイクロアレイのスタンピング法や計測用システムの技術開発を行うことにより、次世代システムの優位性の実験的検証を行うことを目標とし、最 終的には実用化を目指す。
(1) 総  評
    「次世代DNAマイクロアレイシステムの開発」研究は、優れた要素技術の開発が行われており、今後も研究を継続すべきであると評価される。
     研究の進捗状況については、リソグラフィック基板による定量的スポッティングと希土類遅延蛍光インターカレーター染色剤の開発について順調に進捗してい る。目標設定は適切であり、最終目標の変更の必要はないと評価できるが、マイクロアレイの技術開発競争は予測以上であり、新たなコンセプトに基づくシステ ム開発も始まっている。したがって、本研究により開発された技術の実用化を目指して、応用検証研究を加速する必要がある。研究成果については、高感度で定 量性のある高精度測定の実現を目指した本研究の科学的価値は高く、波及効果も期待できる。
     今後は、新技術開発プロジェクトであるため、その成果を社会に還元する努力が必要であり、効果的な情報発信を期待したい。研究体制においては、要所要所 で必要十分な代表者の指導性が発揮されており、連絡会議や運営委員会等を通じて、各研究が一体的・体系的に連携していると評価される。
(2) 評価結果
1 チップ画像化のための新しい染色法の開発に関する研究
 ・ 進捗状況
  希土類錯体を結合した各種のインターカレーターを合成・評価し、二本鎖DNAの選択的検出に成功し、特許出願も行い、目標は概ね達成された。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  本 研究は、インターカレーターを用いて二本鎖DNAを選択的に検出することと蛍光性希土類錯体の時間分解検出により高感度化を行うことの2点において、世界 初の技術であり、科学的価値が高く、日本発の新しいインターカレーターやDNAマイクロアレイ技術は、周辺の技術分野や医療分野の波及効果が大きい。開発 した染色法の定量性や感度・ダイナミックレンジ等についての見当を急ぐと共に、特許を出願した後、学会発表、論文発表などにより効果的に情報発信を行うこ とを期待したい。
2 二本鎖核酸特異的染色システムの開発に関する研究
 ・ 進捗状況
  長寿命蛍光性色素と二本鎖特異的縫い込み型インターカレーター色素の連結により二本鎖特異的長寿命蛍光性新規リガンドの合成に成功しており、当初の目標は達成でき、順調に進捗している。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  合成に成功したリガンドは、原理的には全ての蛍光色素を用いて効果を達成できる可能性があり、科学的価値は高く、波及効果も大きい。今後は、特許を得た後、学会などで技術を公開する、あるいは、商品化を目指すなど効果的な情報発信を行うことを期待したい。
3 遅延蛍光用スキャナーの開発
 ・ 進捗状況
  遅延蛍光検出器系をもつイメージアナライザーの試作、評価ができたが、当初計画より遅れ、また、技術的問題も大きいことが判明した。
 ・ 目標
  当初の目標は適切に設定されていたが、リソグラフィック基板による定量的スポッティングと希土類遅延蛍光インターカレーター染色剤を有効に活用するシステム開発という視点で最終目標を再検討する必要がある。
 ・ 研究成果
  遅延蛍光用スキャナーの科学的価値は高く、波及効果も期待できる。そのための基礎的研究を行うことができた。
4 改良型DNAマイクロアレイシステムの開発・研究
 ・ 進捗状況
  リソグラフィック基板装置の試作及び作製法の確立は完了し、改良型DNAアレイヤーの試作も完了し、リソグラフィック基板上の固相化部位にミクロオーダーの精度でDNAをスポットすることができ、概ね目標は達成しており、順調に進捗している。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  本 マイクロアレイシステムにより高精度計測・高感度計測が可能となれば既存のマイクロアレイシステムでは、埋没していた遺伝子の発現や微妙なトランスクリプ トーム解析ができ、科学的価値は高い。また、高集積度チップの解析処理速度を上げるためのデジタル処理を可能とするため、従来のCy3、Cy5方式のマイ クロアレイシステムにも大きな波及効果がある。今後は、体系的な特許申請が終了次第、積極的かつ効果的に情報発信を行うことを期待したい。
(3) 2期にあたっての考え方
    第1期 については、概ね順調に研究が進捗しているが、遅延蛍光スキャナーについては、現行技術の延長では障害が大きいと判断され、蛍光バックグラウンドの低減と 積算効果を積極的に取り入れ、かつスキャンニングが必要と判断される。この基礎的検討から再出発するため、早稲田大学及び理化学研究所で共同開発する体制 を整える。また、実チップによる実用化評価を行うため、青山学院大学を分担として加える。
体制移行図

ページの先頭へ


2
細胞内でネットワークを構成しているタンパク質の相互作用を試験管内で解析するための新しいツールの開発

(研究期間:平成11年度~15年度)
研究代表者 柳川弘志(慶応大学理工学部教授)
研究課題の概要
  ネットワークを構成している遺伝子群を同定するために、遺伝子の大規模集団からタンパク質ータンパク質相互作用やタンパク質ー核酸相互作用を指標にして、大規模、迅速に試験管内でスクリーニングする新しい操作法を開発する。
(1) 総評
     本研究は当初の目標を十分達成しており、順調に進捗していると言える。当初の目標設定も適切であり、今後の目標の変更は不要であると考えられる。研究成 果については、科学的価値が高く、波及効果が期待できる。これまでの情報発信についても十分であると判断される。ただし、同様の研究が多くある中で、本研 究が優れている点について、一層の情報発信が望まれる。また、研究体制については、代表者の指導性が発揮されており、連携・整合性についても連携して一体 的・体系的であると言える。
    従って、本研究は非常に優れた研究であると考えられ、今後も研究を継続すべきであると評価される。
(2) 評価結果
1 In vitro virus を用いたゲノム機能解析法の開発
     ウィルス型対応付け分子を利用した試験管内スクリーニング系として "In vitro virus" を提案し、その構築に世界に先駆けて成功するとともに、この in vitro virus を用いた機能既知遺伝子のタンパク質間相互作用のスクリーニングと検出システムの開発を行った。さらに第2期に向けたハイスループット化に適した in vitro virus 法によるタンパク質間相互作用の解析システムの基盤を確立するとともに、in vitro virus 法を補完する分子構築法として、STABLE法の開発に成功しており、評価される。
2 タンパク質のC末端ラベル化手法と蛍光相互相関分光法やマイクロアレイ法を利用した高感度分子間相互作用検出システムの開発
     高翻訳活性、安定性を有する小麦胚芽抽出液の開発に成功するとともに、高鋳型活性mRNAの合成用プラスミドの構築法、PCRを利用する効率かつ簡便な 転写鋳型構築法等を開発し、in vitro virus 法、STABLE法、C末端ラベル化法に有用な小麦胚芽翻訳系の確立に成功しており、評価される。
(3) 2期にあたっての考え方
    第1期の遺伝子ネットワーク解析の要素技術の確立を踏まえ、第2期では要素技術の統合化とハイスループット化の研究を推進し、最終的に遺伝子ネットワーク解析システムの完成を目指すこととしており、より一層の成果が期待される。
体制移行図

ページの先頭へ


3
遺伝子発現と機能に関する抗体を用いたタンパク質レベルでの網羅的及び体系的解析法の開発

(研究期間:平成11年度~15年度)
研究代表者 研究代表者:黒澤良和(藤田保健衛生大学教授)
研究課題の概要
   本研究では、線虫(C.elegans)をモデル生物として、多数のmRNAによって出来るタンパク質に対する抗体を単離調製し、タンパク質レベルでの 発現プロフィール、ネットワークをそれら抗体を用いて体系的に解析する。また本研究で単離する多数の抗体の中から有効なものをチップ化(多数の抗体をシリ コン上に固定)し、タンパク質の解析に活用すると共に、抗体チップの作成法を確立する。
(1) 総評
     本研究は技術的問題のため戦略の一部変更を行なったため、進捗状況については一部遅れがあるが全体としては問題はないと思われる。当初の目標設定につい ては、客観情勢が変化していることもあり、最終目標を変更再設定する必要がある。研究成果については、科学的価値が高く、波及効果が期待できるが、これま での情報発信については不十分であると判断される。研究体制については、代表者の指導性が発揮されており、連携・整合性についても連携して一体的・体系的 であると言える。
  従って、本研究は優れた成果の期待できる研究であると考えられ、今後も研究内容を一部見直しして継続すべきであると評価される。
(2) 評価結果
1 網羅的抗体作製による遺伝子発現の体系的解析法の開発
     遺伝子発現の網羅的解析には、線虫(C.elegans)でのmRNAレベルでの遺伝子発現プロファイル研究に協調し、大腸菌で抗原を調整し自作の ファージ抗体ライブラリー(AIMS)をスクリーニングすることで、タンパク質レベルでの線虫の遺伝子発現解析の実現を目指したが、得られた抗体は期待さ れた特性を示さなかった。そこで、マウスの免疫という従来手法と免疫マウスからのファージ抗体ライブラリー作成の組み合わせへと研究を展開し、線虫のタン パク質レベルでの網羅的遺伝子発現解析を実現できる見通しを明らかにした。
     以上、AIMSファージ抗体ライブラリーを活用するという当初の研究計画は成果を挙げなかったが、計画の見直しを行いマウスの免疫による抗血清取得と免 疫マウス抗体ライブラリーを作製するという新戦略により、線虫の抗体レベルでの網羅的発現解析研究の実現が期待できる。この線虫の研究はmRNAレベルで の研究と協調してすすめられており大きな成果が期待され評価される。しかし、技術開発という本来の研究目的から見れば、この研究が推進される中で抗血清、 ライブラリー由来のモノクローナル抗体、そして in situ hybridization やRNAiの結果を比較検討し、ファージライブラリー法の有用性や活用法につき今後明らかにするべきである。
2 in vivo自己抗体発現による体系的遺伝子機能解析法の開発
     遺伝子機能の体系的解析では、ファージ抗体ライブラリー等を用いることにより、特定のタンパク質の機能を阻害する抗体を作成し、これを細胞内で発現する ことにより、タンパク質の機能レベルでの欠損動物を作製してその表現型を解析する技術開発を目指した。Yeast-two-hybrid系をスクリーニン グにWASP-WIP相互作用を阻害する抗体を作成し、細胞に導入して解析をすすめている。また、L鎖を持たずH鎖のみからなる特異な性質を示すラクダ抗 体のファージ抗体ライブラリーを作成し、酵素阻害活性のある抗体を高頻度に分離できる結果を得た。
     機能阻害抗体を分離し、細胞そして個体で発現して表現型を調べることにより機能を解析する全体計画としては計画の実現がおくれている。しかし、 yeast-two-hybrid系を阻害する抗体を分離して細胞に発現していること、さらにラクダ抗体という興味深い抗体のファージライブラリーを作成 し、酵素阻害活性のある抗体を高率に分離し得る可能性をしめしていることは評価され、今後の展開を期待したい。
(3) 2期にあたっての考え方
    第2期では、第1期 で得られた成果を具体化させていくため、「1.網羅的抗体作製による遺伝子発現の体系的解析法の確立」については各課題担当の研究テーマを客観情勢の変化 に合わせそれぞれ新たにするとともに、それらを線虫等に適用していく。「2.in vivo自己抗体発現による体系的遺伝子機能解析法の開発」については、今後第2期で成果が期待されるため、第1期 の研究テーマを引き続き実施することとしている。本研究課題の最終目標である遺伝子発現と機能に関する抗体を用いたタンパク質レベルでの網羅的及び体系的 解析法の開発を研究テーマの中心に据えつつ、達成目標、戦略をより明確にして各研究課題に取り組んでいくことにより、新たな成果が期待される。
体制移行図

ページの先頭へ


4
日本人ゲノムの多型情報の集積と多遺伝子性疾患の疾患感受性遺伝子の同定に関する研究

(研究期間:平成11年度~15年度)
研究代表者 研究代表者:板倉光夫(徳島大学ゲノム機能研究センター長)
中核機関 国立循環器病センター
研究課題の概要
   病気と遺伝子の関連解析により日本人の「ありふれた病気」の発症に関わる遺伝子領域を探求し、遺伝子背景が均一な実験動物モデルを他の系統と交配して作 成した遺伝子負荷雑種動物を利用し、遺伝子と表現型との関連を解析してヒトにおける「ありふれた病気」の発症に関わる遺伝子にせまる。
(1) 総評
    「日本人ゲノムの多型情報の集積と多遺伝子性疾患の疾患感受性遺伝子の同定に関する研究」は、非常に優れた研究であり、今後も研究を継続すべきである。
     研究の進捗状況についても目標は十分達成しており、順調に進捗している。日本人のSNPsに関するゲノム多型情報を収集するためのスクリーニング体制は 整ってきた。個別疾患に関しては、高血圧血管障害については概ね達成しており、リウマチ性疾患の解析については研究目標は順調に達成していると考えてい る。モデル動物を用いた研究では、プロスタサイクリン合成酵素およびトロンボキサン合成酵素の遺伝子欠損・過剰発現マウスが作製でき、個体を用いた解析は 順調に進んでいる。当初の目標設定は適切であり、最終目標の変更は必要ない。
     研究成果の科学的価値については、これまで行うことが困難であった候補遺伝子のSNPs発見のスクリーニング体制、解析体制およびスコアリングの体制が 整ってきたことにより、循環器疾患や代謝性疾患の疾患感受性遺伝子の同定を行う体制ができた点で科学的価値が高い。特に、わが国では遺伝統計学的アルゴリ ズムとプログラムの開発例は極めて少ないので価値が高く、波及効果も期待でき、情報発信も十分に行われている。研究体制においても、代表者の指導性が十分 発揮され、一体的・体系的に研究が行われている。
(2) 評価結果
1 循環器疾患の疾患感受性遺伝子候補遺伝子を中心とした日本人SNPの収集と多型解析
 ・ 進捗状況
  日本人のSNPsに関するゲノム多型情報を収集するためのスクリーニング体制は整った。循環器疾患のうち、モデル疾患群について多型情報に関して遺伝型を決定し、SNPsの使い分けについての基礎的事項の検討が行えたので、解析手法の体制整備の目標は達成された。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  こ れまで行うことが困難であった候補遺伝子のSNPs発見のスクリーニング体制、解析体制が整ってきたことにより、循環器疾患の疾患感受性遺伝子の同定を行 う体制ができた点で科学的価値が高い。解析方法は循環器疾患に限らず共通性が高いことから、その有用性を明らかにすることにより、「ありふれた病気」の解 析全体の発展が見込め、さらに他の疾患への波及効果が大きい。
2 代謝性疾患の疾患感受性遺伝子候補遺伝子を中心とした日本人SNPの収集と多型解析
 ・ 進捗状況
  日本人のSNPsに関するゲノム多型情報を収集するための機器の体制は整えられつつある。産生過剰型痛風と遺伝型の家系の解析を通じて、家系解析規模のマクロサテライトとSNPsの使い分けと統計的解析方法の体制整備の目標は達成された。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  こ れまで行うことが困難であった候補遺伝子のSNPs発見とスコアリングの体制が整ってきたことにより、代謝疾患の疾患感受性遺伝子の同定を行う体制ができ た点で科学的価値が高い。代謝疾患に共通する解析方法を明らかにすることにより、「ありふれた病気」の解析が他の疾患においても進行することにより波及効 果が大きい。
3 代謝性疾患発症リスク因子として関係するY染色体における日本人SNPの収集と多型解析
 ・ 進捗状況
  本 研究の重要な目標の一つである、日本人集団のY染色体をより詳細に分類することについては、現在までに6種類のハプロタイプに分類できることを見出してい る。またハプロタイプごとのY染色体における構造の違いについても研究が進行しており、目標全体としての達成度は良好である。研究全体としては概ね順調に 進捗している。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  Y 染色体と男性表現型に関する研究はほとんど類例がなく、きわめて独創性の高い研究であると考えられる。Y染色体上の肥満に関係する遺伝子やDNA多型が明 らかになれば、男性の肥満の予防や創薬(ゲノム創薬)に大きく貢献することができる。研究成果は、専門誌への発表を中心として各種学会やシンポジュウム等 で公表している。
4 疾患原因としての遺伝子塩基トリプレットリピートの伸長に関連する日本人SNPなどゲノム多型の収集と解析
 ・ 進捗状況
  日本人脆弱X遺伝子FMR1内に存在するCGGリピートの伸長に関連するゲノム多型が存在するかどうかの解答を出すことができるところまで辿り着き、概ね目標は達成しており、順調に進捗している。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  本 研究によって得られたゲノム多型は、“自閉症遺伝子”を同定する際のマーカーとして使える可能性がある。研究成果の情報発信を行なうだけでなく、ゲノム多 型情報を集積するために不可欠な「臨床医と基礎研究者の連携を可能にする体制」作りと「患者の家族の疾患に対する理解と研究への協力」を得ることを期待し たい。
5 血管調節障害に基づく疾患の患者ゲノムの収集と病因解析
 ・ 進捗状況
  概ね目標を達成しており、順調に進捗している。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  研究成果の科学的価値について今後の成果の発展によって判断されるものと考える。今後の成果や研究の発展次第であるが、論文、学会発表のみならず、社会への還元を期待したい。
6 心不全を中心とした患者ゲノムの収集と病因解析
 ・ 進捗状況
  同意再取得などの目標は達成しており、順調に進捗している。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  研究成果の科学的価値について新規性のある結果が得られた。健常者群との対比ができれば臨床応用に結びつく可能性がある。今後、論文、学会発表のみならず、社会への情報発信も期待したい。
7 リウマチ性疾患を中心とした患者ゲノムの収集と病因解析
 ・ 進捗状況
  研究目標は概ね達成しており、順調に進捗している。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  研究成果の科学的価値は高く、学会発表、論文発表により、倫理指針以前からの継続研究として適切に発表している。
8 ゲノム多型情報と臨床情報のデータベース化と解析方法の確立
 ・ 進捗状況
  目標は概ね達成しており、プログラムが完成した後は順調に進んでいる。研究全体についても、順調に進捗していると考えている。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  研究成果の科学的価値について非常に価値のあるものと考えている。特に、わが国では遺伝統計学的アルゴリズムとプログラムの開発例は少ない。今後の研究成果の情報発言に期待したい。
9 モデル動物を用いた心機能不全の遺伝子解析
 ・ 進捗状況
  発現変化遺伝子の同定法について、差分cDNAライブラリーから得たクローンの配列決定から完全長正規化cDNAアレイライブラリーの検索に実験法は着実に進んでいる。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  本 研究では、心筋症モデル動物の病的心臓に存在する副次的な遺伝子発現の影響を除去するために、培養細胞を用いて単純化した病態モデル実験系を構築した。こ のモデル実験系は、心筋症発症の初期過程における遺伝子変化遺伝子の検索や細胞機能異常など分子・細胞レベルの発症メカニズムを解明するために有効な手段 となる。構築したモデル実験系を用いて解析を行い、細胞機能異常や疾患感受性遺伝子などが同定されれば、診断法や治療法の開発に貢献できる。
10 モデル動物を用いた心血管病変発症進展に関わる遺伝子解析
 ・ 進捗状況
  プロスタサイクリン合成酵素およびトロンボキサン合成酵素の遺伝子欠損マウスならびに過剰発現マウスの作製をほぼ終了し、遺伝子欠損マウスの個体を用いた解析を行いほぼ達成できている。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  本 研究で作製、解析している遺伝子改変マウスは、国内外で唯一我々が持っており、特にPGI合成酵素遺伝子欠損マウスは血管障害を発症することから、このモ デルマウスの遺伝子発現変化を調べることは、動脈硬化等の血管病変の発症、進展に関与する遺伝子を探索する為に有用である。
11 免疫不全モデル動物を用いた遺伝子解析
 ・ 進捗状況
  2 種類の免疫異常モデルマウスの開発に新たに成功し、それらの病態解析も併せて進めている。更に、小型魚類メダカを用いた胸腺変異体の網羅的ゲノムワイドス クリーニングを開始し、新たな免疫系変異動物モデルの蓄積を進めている。これらの進捗状況から、本研究は当初目的以上の成果をもたらしているといえる。
 ・ 目標
  目標は適切に設定されており、最終目標の変更の必要性はない。
 ・ 研究成果
  す でに得られている研究成果のうち、転写因子Stat3の胸腺上皮細胞特異的欠損マウスから明らかになった、とりわけ、胸腺上皮細胞内Stat3の胸腺器官 構築の維持への関与についての成果は高い科学的評価を受けている。得られた成果については、国際的にひろく受け入れられている科学専門誌への掲載を積極的 に進めている。
(3) 2期にあたっての考え方
1 日本人SNPの集積と疾患感受性遺伝子の探求
 ・ 日本人SNPの収集
  日本人SNPの集積については1期において得られた成果を活用し、また、急速に増大している公開データベースの活用とそれを保管する新規日本人SNPの集積と検証を行い、疾患感受性遺伝子の探求にむけての情報基盤の整備を続行することが適切である。
  さらに、1期 において集積された患者および対照検体を用いて、多型解析をいくつかのモデル疾患について集中的に行い、その解析手法についても多型情報をどのように扱う かについてパイロットモデル作成とその検証を繰り返しながら、手法の確立とモデル疾患における疾患感受性遺伝子の探索をめざすべきである。
  候補遺伝子の選別に際しては、既存の遺伝子情報に加えて、モデル動物より新規に得られる候補遺伝子(領域)さらに、機能解析や他施設による全ゲノムスクリーニング結果などを活用し、効率よく目的遺伝子に達することができる方法を選択することが望ましい。
 ・ 各種疾患患者のゲノム情報の収集
  モデル疾患において多型情報を有効な解析手法で検討して疾患感受性遺伝子にせまり、検体の利用システムの効率化を計って、研究の効率よい推進をめざすべきである。
 ・ ゲノム多型情報と臨床情報のデータベース化と解析方法の確立
  これまでに得られた解析手法の確立を推進するとともに、モデル疾患において有効に目的に迫れる解析手法の構築と検証を行うべきである。新規に得られるSNP情報を含めて、疾患感受性遺伝子探索に有用なゲノム多型情報データベースの構築を行い、活用すべきである。
2 モデル動物を用いた疾患感受性遺伝子の解析
  モデル動物を用いた研究は、本研究においては解析を行う候補遺伝子(領域)の選別に有用な情報を与えると考えられるが、1期の研究においては、この観点からの研究全体に対する貢献はやや不足していたと考えられる。そこで2期においてはこの観点からの研究手法の再検討を行い、新体制に反映させる必要がある。
  1期 において、糖尿病自然発症マウスを他の系統のマウスと交配し雑種第二世代を用いた検討にて、血糖値、インスリン値、糖負荷試験等の多数の表現型を調べるこ とにより、二つの系統の遺伝的背景に存在する多数の糖尿病の疾患感受性遺伝子を抽出することが可能であるという結果を得ており、また、ヒトで疾患感受性遺 伝子を戦略的に抽出するために用いられている罹患同胞対解析と関連解析は、人種差やSNPsを用いるゲノムワイドの関連解析が難しいこと等の理由により困 難を伴っている。したがって、ゲノム構造と遺伝子塩基配列がヒトと極めて類似し情報が得られるマウスから、創薬の標的となる疾患感受性遺伝子を抽出し同定 することは、ゲノム多様性研究の中心的課題のひとつと考えられる。このような理由から、モデルマウスを用いる実験系は候補遺伝子(領域)の選別に有用で あって、この方法の意義をさらに追求する必要があると考えられる。
  さらに、ゲノム多型解析結果で得られる候補遺伝子の変異と疾患との関係について動物個体レベルでの検証も行うべきである。
体制移行図

-- 登録:平成21年以前 --