平成13年度科学技術振興調整費による研究実施課題等の評価結果について 2.各論(3)


(3)生活・社会基盤研究

1
疲労および疲労感の分子・神経メカニズムとその防御に関する研究

(研究期間:第1期平成11年~13年)
研究代表者 研究代表者:渡辺恭良((財)大阪バイオサイエンス研究所)
研究課題の概要
本研究では、慢性疲労症候群の研究と、一般的な疲労および疲労感の基礎的研究という2つの方向から、疲労による神経・免疫・内分泌調整の破綻等の分子メカニズムの解明、あるいはどのようにして疲労を感じているのかという「疲労感」の神経メカニズムの解明、それらをもとに疲労および疲労感を和らげる方法を科学的な根拠のもとに創生することを目的としている。
(1) 総評
    疲労および疲労感は、現代社会に生きる多数の人が日常向き合っている現象であり、今後、高齢化が進み、老化による病態、脳神経機能、知的能力あるいは免疫機能の低下により、一層疲労や疲労感が広く蔓延することが予想される。
    本研究は、これまで確たる病因が特定されていなかった慢性疲労症候群について、その主な病因を追究したとともに、疲労を分子レベルで理解するための技術を開発するなど、多くの知見、成果が得られていることから研究は順調に進捗しており、研究成果の科学的価値は高いと評価される。さらに、現代社会における疲労や過労の軽減のためのデータを集積するなど、国民生活及び社会的観点による成果の価値も高いと評価される。また、目標設定・研究体制も適切であると判断され、総合的に判断して非常に優れた研究であると評価できる。
    第1期において、基礎基盤的な研究成果があげられたことから、今後は、疲労の分子・神経メカニズムに関する研究を統合的に整理するとともに、生活者ニーズが高い疲労制御技術の開発に向けて、研究を継続すべきであると評価される。
(2) 評価結果
1 慢性疲労症候群等の病的疲労の研究
    慢性疲労症候群ならびに不登校状態を主症状とする疾患を対象として、その治療法等の開発につながる病的疲労の研究を実施し、一般的な疲労および疲労感の基礎的研究の促進に寄与した。
    具体的には、慢性疲労症候群の病因の解析により、ウイルス感染等によるグルタミン酸、モノアミンなどの脳内神経伝達物質やステロイド、プロスタグランジンなどの神経調節物質の低下が主な原因である可能性があることをつきとめた。中枢性の慢性疲労状態と考えられる不登校状態についても、セロトニンなどの脳内モノアミンの異常が病因の一つであることを示した。
    本研究を実施することで、病的疲労が脳神経系における異常反応であることを分子レベルで理解できるようになるなど、基礎基盤的な知見が蓄積されたものと評価でき、本研究は全般的に順調に研究が進展していると判断される。
2 疲労および疲労感の分子・神経メカニズムの解明
    疲労感の脳担当部位の特定、神経・免疫・内分泌の相関においてのストレスと疲労の位置づけに関する研究を実施し、疲労および疲労感の分子・神経メカニズムの解明に貢献した。
    具体的には、ヒトでは評価することが困難な実験に使用するための各種動物疲労モデルを開発し、それらを活用した疲労評価法を確立したとともに、疲労状態と回復過程における体内因子や神経伝達物質などの定量化に成功した。また、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET)を用いて健常人における疲労に伴う脳内活動を探り、ブロードマン11野(前頭底部)の脱抑制を発見した。
    これらの成果は、疲労および疲労感を分子・神経メカニズムで理解する上で非常に重要な知見を提供するものであり、今後の発展が大いに期待できるところまで進展していると判断される。
3 疲労病態制御技術の開発
    上記の病的疲労に関する研究、分子・神経メカニズムに関する研究で得られた成果を踏まえ、疲労定量技術の開発および疲労病態の治療技術の開発に向けた研究を実施し、疲労軽減の方策を提言するための基礎的知見が集積された。
    具体的には、これまで困難とされてきた客観的な疲労の定量化を試み、二重注意が必要な課題(DualTask)による検査法やAdvancedTrailMakingTest(ATMT)法などの方法を開発したが、定量化の可能性を見いだした点で意義深いものであった。また、分子・神経メカニズムの解明は今後の課題であるが、疲労回復には「緑の香り」が有効であることを科学的に証明した。さらに、疲労回復に利用されている伝承療法等のデータベースを完成させた。
    これらの成果は、国民の健康回復、生活の質の向上に資することが期待されるものであり、今後の発展が大いに期待される。
(3) 2期にあたっての考え方
    第2期では、第1期に基礎基盤的成果が集積された「疲労の分子・神経メカニズムに関する研究」を統合的に整理して、より疲労の本質に迫る研究を実施するとともに、国民の健康回復、生活の質向上を目指して、治療や予防をも視野に入れた「疲労制御技術の開発」の2つのサブテーマに研究体制を再編成して研究を実施するべきである。
    ただし、疲労感や慢性疲労症候群とストレスに対する反応との差異が不明瞭であり、第2期においては疲労や慢性疲労症候群に特異的な指標を求める研究を進めるべきである。また、慢性疲労症候群と病因の疫学調査を含めた研究も取り入れて、社会的ニーズに答えるような研究を行う必要がある。
 

2期移行の考え方:体制移行図


2
生活環境中電磁界による小児の健康リスク評価に関する研究

(研究期間:第1期平成11年~13年)
研究代表者 兜真徳((独)国立環境研究所)
研究課題の概要
本研究においては、我が国における生活環境中の商用周波領域の電磁界と小児がん、とくに白血病と脳腫瘍について健康リスクとの関係を、高レベルの商用周波数成分やこれまで考慮されていなかったわが国固有の居住環境および送配電方式によって生じる電磁環境下において評価することにより、生活者が漠然と抱いている電磁界の健康リスクへの影響について科学的に評価することを目的とする。また、WHOとも適宜情報交換を行いつつ進めることにより、得られた結果が本課題に関する国際的な取り組みに対して大きく国際貢献することも期待される。
(1) 総評
    過去20年にわたって世界的に議論されてきた高圧送電線等に由来する商用周波数の磁界による小児がんへのリスクを評価するため、小児白血病と脳腫瘍に関する大規模データを収集することとしている。
    本研究班は、これら対象者を確保するため、関連病院のネットワークを基盤とした地域事務局を設置することで、全国規模の調査体制を構築することに成功し、研究期間内に概ね目標症例数を確保する予定である。しかし、現段階で結果が得られていないことから、科学的な観点からの評価、その波及効果、情報発信などに関する評価は不可能であった。
    データ解析終了後に得られる総合解析結果については、WHOの国際電磁界プロジェクトにも重要な知見を提供するなど国際的な貢献を果たすことが期待されるとともに、現代社会において電力供給は不可欠であり、電磁界については国民にとって非常に関心の高いテーマであることから、最終的に研究成果が得られた場合の生活者にとっての価値は非常に高く、国民生活への波及効果は期待できる。したがって、あと1年間で研究を完結し、国際的にも評価される成果を挙げ、国民のニーズにも応えるべきである。その成果について、来年度、再度、事後評価を実施する必要がある。
(2) 評価結果
1 小児がんの症例・対照研究
    電磁界は身近な環境から発生するものであることから、本研究班が目指している電磁界曝露による健康リスク評価は、生活者にとって非常に関心の高いテーマである。さらに、国際的にも我が国における評価結果に期待が持たれているところである。
    本研究班の調査が疫学的に信頼のおけるものになるか否かは、集積する疫学データの症例収集状況により、決定づけられるものと考えられ、全国規模の調査体制を構築することが、研究班立ち上げ当初の喫緊の課題であった。本研究班は、1年足らずの間に体制構築に成功したことは評価できるものの、現段階で必要なデータが収集されていないなど研究進捗状況に遅延が見られている。小児がんの発生頻度が当初の予想より低いなどの想定外の制約の発生、解析結果の影響力が非常に高いことから作業に慎重さが要求されることなどの障壁が存在したが、今後は研究班員全員が万難を排し、全力を投入して研究に取り組むべきである。
2 電磁界及び交絡因子の曝露研究
    調査対象世帯における電磁界及び放射線、ラドン等の測定プロトコールを作成したとともに、測定機器の精度管理の基本となる校正機器の開発を行うなど、本研究の基盤整備を行った。これにより、我が国で初めて多数の世帯で磁界の測定を実施することに成功するなど、本研究の遂行にあたり貴重な基礎データを提供していることから、積極的な論文発表等が望まれたが、研究成果の情報発信が乏しい結果に終わった。
3 総合解析・評価
    目標症例数が集積してから総合解析・評価を行うことから、まだ結果が出ていないところであるが、そのための体制は既に構築されており、研究期間内に研究目標は概ね達成されるものと考えられる。研究結果が世間に与えるインパクト等を考慮すると、国民とのリスクコミュニケーション等が重要な課題である。
(3) 今後の考え方
    2001年6月にWHOの下部機関である国際がん研究機構(IARC)が、低周波電磁界を「ヒトに対する発がん性があるかもしれない(Group 2b, possibly carcinogenic)」と分類しており、我が国において本研究を完結することは、国際的な責務を果たす観点から重要である。また、本研究は、生活者に密着した題材をテーマとしていることから、その成果は国民にとっても非常に関心の高いものである。このように、研究成果の与えるインパクトが大きいために、中途段階で解析を終えると世の中に混乱を与えることになりかねず、データの評価には詳細な解析と慎重な判断が要求される。
    現時点において、評価を行うために必要な成果が十分にとりまとめられていないため、来年度、再度、事後評価を実施することとし、今後の進め方としては、研究規模を必要最小限に縮小し、今後1年間で3年間では得られなかった付加的データを追加するなど、第1期の成果のとりまとめを中心とした研究体制とすることが望ましい。さらに、データ解析と平行して国民に対する的確な情報発信に配慮する必要がある。
    また、第1期において成果が乏しかった理由として、研究代表者の指導性が充分発揮されていなかったことが挙げられ、今後はこれまで以上に指導性を発揮する必要がある。


3
日常生活においてひふを守る総合研究

(研究期間:第1期平成11年度~13年度)
研究代表者 安藤正典(国立医薬品食品衛生研究所)
研究課題の概要
わが国においては生活環境に大きな変化をきたしており、その結果外的環境に日常直接接している皮膚におけるさまざまな傷害がみられるようになっている。皮膚の有するひとつの大きな機能に「バリアー機能」がある。この機能によって人間の内的環境が保たれており、生存が可能となっている。皮膚は従来単なる反応の場として捕らえる考え方が強かったが、実は極めて組織的な構造と機能をもった人体のなかでも最大の臓器であることが明らかになってきている。そして皮膚は「バリアー機能」以外にも、免疫学的など重要な機能を担っていることも明らかにされている。
このような人間の生存に重要で、不可欠な臓器である皮膚を傷害から守るための研究は極めて重要と考えられる。本研究は外的環境によって傷害され、湿疹反応といわれる皮膚における炎症を惹起するアトピー性皮膚炎が国民的慢性疾患となってきていることから、皮膚におけるアレルギー性炎症の発症機序や防御機構を解明し、アトピー性皮膚炎の増悪因子を研究し発症予防の方策を探り、それをスキンケア―による予防に応用し、アトピー性皮膚炎の皮膚の症状を非侵襲的な評価法を開発し、日常生活において皮膚を守る方策を研究する目的で行われた。
(1) 総評
    全体として、研究は概ね順調に進捗しており、優れた研究である。また、目標設定・研究体制も適切であると判断される。
    しかしながら、一部においては完全に中間の目標達成がなされていない課題もあり、各機関間の連携については十分とは言えない。また、生活者への成果還元を十分に念頭に置いた研究指向が求められる。
  さらに、個別の基礎研究成果は優れたものがあるが、研究班全体としてのまとまりに欠けるように思える。個別課題の研究内容については、他の研究ファンドでも手当できるものと考えられる。
    上記のことを踏まえ、本研究は第1期において終了すべきであると評価される。
(2) 評価結果
1 皮膚の防御機構ならびにアレルギー性炎症の発症機序の解明
    本テーマでは、生体側からアトピー性皮膚炎の発現機序とその治療を探ることを困難にしている主な二つの課題についての研究を行っている。ひとつは皮膚構造と機能のモデル細胞系を確立すること、もうひとつは皮膚の免疫機構について分子細胞レベルでの解明を行うことである。
    具体的には,皮膚の構造形成と機能発現の制御に関する研究と、アトピー性皮膚炎の免疫ならびに炎症発現機構を解明することを目的として、1)バリアー構造と、その機能の制御機構の解析、2)皮膚で生じた傷害を修復する機構、3)抗原提示細胞、マクロファージ、肥満細胞、血管内皮細胞、好酸球についての解析、4)アトピー性皮膚炎遺伝子群の機能解析等に関する研究が行われた。その結果、Cキナーゼ分子種が分化の誘導と細胞周期の停止を異なるメカニズムで制御していること、肥満細胞の成熟過程で発現する新たな遺伝子を見出し、その機能を明らかにするなど、多くの成果を上げている。
2 生活環境におけるアトピー性皮膚炎の増悪因子に関する研究
  居住環境におけるダニ・カビ等の生物由来アレルゲンや室内化学物質等の環境アレルゲンあるいは増悪因子と目されるものを単独・複合的、相加・相乗的な暴露面から検索・評価するための方法の確立及び存在量とアトピー性皮膚炎との関連性を実証的に検討することが本テーマの目標である。
    具体的には、1)環境アレルゲンの検索方法の開発と応用、2)ダニなどの増悪因子の発生条件とその制御、3)真菌の検索および発症要因の研究、4)生活環境からの増悪化学物質の検索と評価法の確立に関する研究等が行われ、その結果、新しいダニアレルゲンの簡易測定システムを開発し、実地に応用したり、免疫機能と関連する内分泌撹乱物質等200~300化合物を一度に採取できる装置を開発するなど注目すべき成果を上げている。
3 アトピー性皮膚炎患者の皮膚の性状の非侵襲的機器計測評価法の開発
    アトピー性皮膚炎患者の皮膚の特異性を、多数の患者あるいは皮膚炎を起こしやすい家系の人たちを対象に皮膚測定を行い,皮膚を傷つけることなく評価できる機器計測法の開発と機器の小型化、アトピー性皮膚炎患者のかゆみ計測法の開発、アトピー性皮膚炎患者にみられる免疫異常の評価法の開発等を行っている。
    その結果、小型マルチセンサーで簡便かつ非侵襲的に計測する機器が試作されたり、かゆみに伴う手の動きを計測する方法を示すなどの成果が挙げられている。一方アトピー性皮膚炎での皮膚生理機能異常は環境要因が肝要であることを示唆する結果も得られている。
4 アトピー性皮膚炎のスキンケアによる発症予防に関する研究
    本テーマは、主要化粧品メーカーが参加し、アトピー性皮膚炎を初めとする皮膚の慢性炎症等に対して、皮膚の予防・保護・ケア等によるバリア機能を向上させるために環境アレルゲンや化学物質による皮膚の障害防止,炎症,免疫反応の制御,乾燥防止,皮膚透過性制御等の観点から、スキンケア製品の開発を行うことを目標として、研究を進めている。
    その結果、薬効成分を含まない、油分、保湿剤を主成分とするスキンケア製品による発症予防についての研究が行われ、その効果判定のための基礎的条件が見出された。また、スキンケアの有効性を評価するガイドライン作成を行っている。


4
高齢者の生活機能の維持・増進と社会参加を促進するための地域システムに関する研究

(研究期間:第1期平成11年度~13年度)
研究代表者 荻原隆二((財)健康・体力づくり事業財団)
研究課題の概要
我が国は、世界の中でも有数の高齢化進行国であることはいうまでもない。しかしながら、その高齢者の75%を占める自立高齢者に対しては、これまで大規模調査研究が未実施であった。本研究では、これら「75%の自立者」を対象として、生活機能の研究やQOLの検討と、productivityを向上させるための方策等を、自然科学及び社会科学的手法を用いて提示する。さらに、これらの方策の成果を取り込みつつ、地域システムの構築についても調査・検討を加えていく。
(1) 総評
    全体として、研究は順調に進捗しており、極めて優れた研究である。また、目標設定・研究体制も適切であると判断され、研究機関間の連携も十分になされており、総合的に考えると非常に優れた研究であるといえる。
    また、中間時点の目標の達成度も十分であるが、一部課題においては科学的な研究手法として十分とは言い難いものもある。全体としては、今後も研究を継続すべきであり、2期においてもこれまで以上に、更なる研究推進を期待する。
(2) 評価結果
1 高齢者の体力・運動機能の評価と生活機能増進策の具体化
    サブテーマ全体として,「身体機能の面から,高齢であってもより積極的に社会貢献することを目的として,運動機能と循環機能に重点を置いた身体機能維持・増進のための指標を開発する」ことを目標に、研究が実施されている。
  その結果、下肢筋群の筋量が、高齢者の生活機能の維持・増進において重要な指標であることが示された。また、安全性と効果性を検討したこれらの筋肉を鍛える運動プログラムが作成されている。また、呼吸機能、循環器機能(動脈進展性など)、免疫機能等の各々の視点から、高齢者における適切な運動の必要性を科学的に検証している。
    常に、協力者としてのフィールドの方々の意志を尊重して研究を遂行している点で、非常に好感が持てる。また、生活者ニーズ対応研究制度としての趣旨である、生活者への成果の直接還元を常に念頭に置いて、シンポジウム開催や、メディア媒体での報道、啓蒙番組等でなされていることは、高く評価すべき点である。
2 高齢者の生活の質と社会貢献
    長寿の研究は他にも多く存在するが、本研究ではQOL、社会貢献に焦点をあて、対象を55~64歳の全国代表サンプル、65歳以上の地域代表サンプル、100歳を超える長寿者の全国代表サンプルの3つのグループとし、各々の年齢群における、QOLと社会貢献の実態、その促進(あるいは抑制)要因をさらに、QOLと社会貢献の長寿や健康への影響を明らかにするための研究調査を行っている。これは、超高齢化社会の進む日本において、高齢社会のマクロ・ミクロ政策の確立のために必須であると考えられる。
    その結果として、プロダクティヴィティーという概念からのアプローチにより、有意義な成果が見いだされており、生活の質を測定するための新たな妥当性のある指標の開発もなされた。また、百歳超長寿者の悉皆的調査は、大変な労力であったことが予想されるが、その苦労が報われる重要な結果が報告されている。
  本テーマの成果として、新規指標等も生み出されている。それらの指標はすぐにでも、生活者の現場で利用できる、価値のあるものであり、今後の新たな展開により、更なる有用な成果の創出が期待できる。
3 地域における健康増進策の効果に関する研究
    本研究の1で検討された運動プログラムや栄養を基に作成された健康増進策の効果について,人口約1万人の茨城県大洋村をフィールドとして,1)心身の健康度から,2)栄養面から,3)医療経済からそれぞれ評価を行い,地域における健康増進策のシステムの構築を目指すとともに、地域でこのようなevidenceベースでの健康増進策を推進するための簡便な評価法の完成を目指し研究が進められた。
  その結果として、エビデンスに基づく、実践的ツールとして簡便な体力の自己チェック表,健康度の自己チェック表の作成がなされ、前者については,1と密接にリンクし,チェック表の妥当性を確認した上で,大洋村での試行が実施された。また、具体的な製品化等も進めている。後者の健康度の自己チェック表の作成については,妥当性の検討が終了し,地域住民への試行が開始されている。
    これらの研究成果は、マスコミでの報道や一般公開シンポジウムを通して、既に地方自治体から健康増進策策定、評価においてのツールとして使用したいとの引き合いがきており、非常に実用的で、生活者のニーズに対応した研究であると評価される。
  今後、2期においては、1期で成果として出されたシステムを改良・改善するのみならず、既存のシステムを評価する体系に関する研究に比重を置いて、研究推進していくことを期待する。
(3) 2期にあたっての考え方
    第2期への移行に当たっては、研究テーマを整理して具体的な達成目標をさらに明確にし、十分に第1期の成果を現場において実践しやすい形に昇華させることが必要となる。
    提案された移行計画についても、第1期の研究の反省の上に立った考慮点は適切である。第2期の新たな研究課題として、「e-healthシステムの構築」「人的・物的環境から見た健康政策の確立」等を取り上げることになっているが、昨今の情勢に鑑みた、有用な方法論としてのITの利用、本課題提案の高齢者健康増進策の汎用性を高めるための環境整備法の模索等、より高いレベルの目標達成を目指しており、非常に期待できる。
    しかしながら、留意すべき点として、単なるシステム(ガイドライン等)の構築というよりも、そのシステムの評価の体系をグループで提起していただきたい。また、1期の研究成果は、健康増進策の一つのきっかけであり、今後、その継続性、さらには各個人の行動変容に至るまでのフォローアップと、それらが可能となるエビデンスデータの蓄積による新たな方策を見いだすことを目標とすべきである。
 

2期移行の考え方:体制移行図


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環境と資源の持続的利用に資する資源循環型エコシステムの構築に関する研究

(研究期間:第1期平成7年度~9年度、第2期平成10年度~12年度)
研究代表者 須藤隆一(東北工業大学)
本研究では、21世紀の社会に対応しうる環境への負荷が少ない、資源の持続的利用に資する資源循環型地域エコシステムを構築することを目的として、地域の分別収集体制に即した廃棄物の処理・リサイクル技術の開発・高度化によるリサイクルシステムの構築と生活排水の高度簡易処理技術の開発による資源循環型エコシステムの構築に関する総合的な研究開発を行うこととしている。
(1) 総評
    環境への負荷の少ない循環を基調とする経済社会システムを実現するためには、地域内で廃棄物、生活排水から発生する有用物質等に機械工学、化学、生物工学等の技術を活用し、回収可能なものは回収・資源化し、積極的に有効利用することが必要である。
    第2期においては、住民への分別方法の周知を行い、開発した選別装置で廃プラ回収率96%の実現、簡易油化装置による廃プラの1/17の減容化、住民モニターへの公開結果に対応した臭気対策の実施、悪臭漏洩抑止機能を持つ家庭用生ごみ処理装置の開発、窒素、リンを効率的に除去する高濃度簡易型浄化槽の開発、流域単位での負荷削減施策の費用ー便益等社会科学的な評価法の開発、また、開発した埋没型ライシメーターは、国公立の農業試験場や大学など21機関で利用されるなど多くの成果が得られていることから、研究は順調に実施され、研究成果は高いと評価される。また、目標設定・研究体制も適切であると判断され、非常に優れた研究であると言える。
    また、1期の課題であった「一般の市民が協力可能な範囲、持続的に行うための方策、経済的な効率等について考慮するべきである。」などについても適切に対応していると判断される。
(2) 評価結果
1 廃プラスチックのリサイクル技術の開発に関する研究
  1)自動選別装置を開発し、実際に収集した廃プラスチックの選別性能として不適物除去率80wt%,容器包装廃プラスチック回収率96wt%の確認
  2)輸送効率向上のための簡易油化装置を開発し、自治体において分別収集された廃プラスチックを原料とした試運転による減量化率1/17等の性能検証を行うとともに、大磯町民へのデモンストレーションにより提示された臭気対策として冷却器及び活性炭吸着槽を付加した排ガス処理装置の設置
  3)液層油化技術による中型連続装置の設計・試作を行い、工業用プラスチック及び大磯・実廃棄サンプルを用いての性能検証を実施した。この際に小型の異物混入を避ける反応器型を混合型に改造し、最適反応条件の確立、生成物収率98%、生成ガスの安全処理を行った一連の安定運転技術の確立
  など、応用研究が進展した点で大きな成果をあげたと言える。
2 生ごみリサイクルシステムの開発に関する研究
  1)悪臭漏洩抑止効果のある家庭用生ごみ処理装置を開発し、モニター家庭での試用を通じて臭気漏洩対策や分解・水分除去性能などの検証
  2)堆肥需要の季節変動に対応する堆肥化・消滅変動運転機能を持つ中規模生ごみ処理装置の開発
  など、装置開発と効果の検証が行われ充分成果をあげている。
3 家庭排水由来の有機物資源の有効利用等による流域負荷低減技術に関する研究
  1)家庭での利用を想定した窒素・リンの除去性能の高い高度簡易処理プロセスの浄化槽を開発し、処理後の水質が目標レベルに達したことの検証
  2)構造が簡単で安価、かつエネルギー効率も0.123kWh/kg-O3と優れ、家庭用装置として適しているUV式オゾン発生装置を用いた装置を開発し、最適運転条件を確立
  3)豚舎から排出される含水率90%の高濃度有機廃棄物などの高温好気発酵法による処理技術を開発し、運転管理や杉チップ(水分調整剤)の投入タイミングの最適条件の検証
  4)農地における窒素溶脱量を測るための普及型キャピラリーライシメーターを開発し、レタス-二条大麦の作付体系における畑圃場の窒素溶脱量調査に基づく牛ふん堆肥の適正施用量評価や吸肥特性の高い作物の組み込み効果を解明
    など、応用研究が進展し、成果をあげている。
4 資源循環型エコシステムの適用・評価に関する研究
  1)廃棄物LCA等を用いた総合的なごみ処理計画策定支援システムの開発を行うとともに、自治体や住民のごみ処理計画に対するニーズの把握
  2)流域単位での負荷削減施策の費用-便益等の社会科学的な評価法を開発し、最適な対策として、霞ヶ浦流域の恋瀬川及び桜川流域では,「下水道の整備」と「合併処理浄化槽の設置」の併用、小野川流域では,「下水道の整備(全域)」であることを解明
  3)流域単位で水質予測解析が可能な流域管理システムをパソコン上のGISシステムとして開発し、予測水質と実河川での水質の比較を、潅漑期及び非潅漑期に分けて行い、COD及びリンの予測精度が高いことの検証
  4)BODや窒素、リン等の評価基準の確立と試験期間の短期化手法を考案し、高度簡易コンパクトプロトタイプ浄化槽の性能評価手法の開発
  など、評価手法の開発と検証が行われ、総合的な成果をあげている。
    このように、大きな社会的課題である家庭・地域における廃棄物や負荷削減のための研究として、リサイクル・処理装置の開発を理論的な裏付け等の研究と合わせて遂行し、多くの成果が得られている。
    なお、今後の本研究分野の課題として、より実用化に向けて、技術の高度化、代替技術との比較における優位性の検証や技術の普及に有効な支援策の導入などが残されている。


6
こめぬかを原料とする環境に適合した有機工業化学に関する基礎研究(和歌山県)

(研究期間:平成10年度~12年度)
地域中核オーガナイザー 谷口久次(和歌山県工業技術センター化学技術部部長)
(1) 研究課題の概要
    米は我が国において年間1,200万トン生産されており、玄米を精米すると10%の米糠が生じる。米糠から米サラダ油が製造されているが、この際に、米糠ピッチが排出される。和歌山県では、米糠ピッチからポリフェノール系化合物であるフェルラ酸を効率的に製造する技術を確立している。フェルラ酸は、抗酸化性、紫外線吸収の機能を有している。
    本研究においては、米糠から米サラダ油を製造する際に、廃棄物として生じる米糠ピッチから各種の有用成分の抽出を試みるとともに、すでに製造法を確立したフェルラ酸を原料とした有機工業化学の確立を目指すことを目標として実施された。また、フェルラ酸の誘導体に関する研究を行うとともにその同族フェノール類の生化学的、化学的、物理的特性に関する研究も実施された。
(2) 総評
    米糠から米サラダ油を製造する際に排出される米糠ピッチから製造されるフェルラ酸を原料にして、各種有用物質を合成し、合成した物質の機能や性質を特徴付ける等の研究が行われたものであり、今後のフェルラ酸及び他のポリフェノール類の利用を進めて行く上で注目すべき研究が行われた。特にフェルラ酸等を原料として、発がん予防物質、抗酸化物質、紫外線吸収物質等の有用物質の合成及びその評価研究を行い、有用な成果がみられた。研究目標の達成度、目標設定の適切さ、研究成果、地域等への波及効果などの評価項目において高く評価され、総合的に非常に優れた研究であった。
    なお、現時点ではフェルラ酸を出発物質としての各種合成物質における作用メカニズムの解明までには至っていないので、引き続き研究を継続し、研究成果の事業化等へ展開が期待される。
(3) 評価結果
1 フェルラ酸及びその同族フェノール類を基礎原料とする有機工業化学に関する研究
    米糠ピッチから得られるフェルラ酸および他のポリフェノール類を原料として、発がん予防、抗酸化、紫外線吸収、発芽調整および抗菌などに効果が見込まれる物質の合成が行われた。特に発がん予防物質の開発においては、フェルラ酸から大腸発がん予防物質として効果が期待されるethyl3-(4’geranyloxy-3’-methoxyphenyl)-2-propenoate(以下「EGMP」という。)の合成に成功したことは評価できる。紫外線吸収物質の開発においては、紫外線吸収領域、熱的安定性及び抗酸化性において、優れた効果が期待されるフェルラ酸エステルが合成されたことは評価される。
2 フェルラ酸及び同族フェノール類を原料として得られた各種生理活性物質の生理活性及びその利用展開に関する研究
  第1のサブテーマで合成した新規化合物約150種について、主に発がん予防、抗酸化の評価研究が行われた。大腸発がん予防の研究においては、動物実験等によりEGMPは大腸発がんを抑制する知見が得られた。抗酸化の評価結果においては、第1サブテーマから提供された化合物の中に強力な抗酸化作用を示す知見が、また、フェルラ酸自身に血糖値下降作用および血糖値上昇抑制作用を示す知見が得られた。農業分野においての評価研究では、イネの穂発芽抑制効果およびタマネギの萠芽作用抑制効果が存在する知見が得られた。
  今後は、フェルラ酸化合物の作用メカニズムの解明の研究を進め、実用化等への展開が期待される。
3 こめサラダ油製造時に排出される「こめぬかピッチ」を原料とした生分解性プラスチックの生成に関する研究
    こめぬかピッチを原料として、生分解性プラスチックに関する研究が行われた。特にこめぬかピッチを原料として得られたポリウレタン発泡体の生成に成功し、この発泡体の生分解性の知見が得られた。今後の研究が期待される。


7
醸造微生物機能の高度利用に関する研究(広島県)

(研究期間:平成10年度~12年度)
地域中核オーガナイザー 宮川都吉(広島大学大学院先端物質科学研究科教授)
(1) 研究課題の概要
    広島県は、日本酒の産地として有名であり、また、味噌、醤油、食酢等の醸造産業が多く立地し、様々な特色ある製品が生産されている。さらに最近では、広島大学、独立行政法人酒類総合研究所(旧国税庁醸造研究所)、独立行政法人産業総合研究所中国センター(旧工業技術院中国工業技術研究所)などを中心として、酵母・こうじ菌を利用して健康で快適な生活に有用な物質を生産させるための新たなバイオ研究が進展し、先端的な研究頭脳やバイオ技術者の集積が進んでいる。
    本研究では、伝統的な食品製造に利用されてきた酵母、こうじ菌などの「醸造微生物」を利用し、遺伝子工学的手法を用いてその機能を高度化することによって、人間に有用な各種の機能性物質を効率的に生産する技術の開発を目標に研究が実施された。
(2) 総評
  本研究は、酵母、こうじ菌という醸造微生物に注目した研究であり、醸造微生物機能を高度化し、利用して、有用な機能性物質の効率的探索及び効率的生産に関する技術の開発を目指したものである。特に、酵母の有用な活性物質探索にかかるスクリーニング技術の確立、酵母及びこうじ菌を利用したダニアレルギーワクチン開発等に高いレベルの研究成果がみられた。研究目標の達成度、目標設定の適切さ、研究成果、研究体制などの評価項目において高く評価され、総合的に非常に優れた研究であった。
    なお、今後、地域との連携を図りつつ、研究成果の事業化等の取り組みを期待したい。
(3) 評価結果
1 酵母の機能開発と生理活性物質探索系の開発
    生理活性物質を高効率にスクリーニングし、このスクリーニングの結果、いくつかの活性物質を取得した。この物質はがん抑制、免疫抑制等の医療への用途が期待される物質である。また、微生物培養液及びケミカルライブラリーを用いてスクリーニングを実施し、有望な活性物質が多数取得された。このように生理活性物質を高効率にスクリーニングする技術を確立したことは高く評価される。
2 バイオサーファクタントの探索と効率的生産技術に関する研究
    国内各地で採取したサンプルより、糖脂質生産酵母のスクリーニングを実施し、糖脂質生産酵母を多数取得した。糖脂質(MEL)生産能の特に高い株をKurtzmanomyces属酵母と同定し、本株によるMEL高効率生産条件を確立した。また、廃水処理酵母Hansenulaが油脂資化処理の際に生産する乳化物質が新規セレブロシドであることを明らかにした。
3 高度不飽和脂肪酸の生産及び利用技術に関する研究
    高度不飽和脂肪酸を高度に蓄積する微生物を探索するとともに、醸造微生物を宿主とする脂質生産技術の開発並びに高度不飽和脂肪酸の食品及び医薬品としての利用技術の確立を目指す研究を行った。特にドコサヘキサエン酸及びカロテノイド色素を生産する微生物を取得し、ラビリンチュラ類であることを同定したことは評価される。
4 ダニアレルギーワクチンの生産技術に関する研究
    ダニアレルギーに深く関与しているダニ主要抗原タンパク質Derf7の酵母およびこうじ菌を宿主とする分泌発現系を構築して、Derf7大量生産系を確立した。これによりDerf7の安定精製が容易になり、ワクチンの供給の指針が得られたことは評価される。また、このワクチンの薬効試験を行い、優れた薬効の知見が得られた。


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室戸海洋深層水の特性把握および機能解明(高知県)

(研究期間:平成10年度~12年度)
地域中核オーガナイザー 福冨兀(高知工科大学物質・環境システム工学科教授)
(1) 研究課題の概要
    清浄性、豊富な無機栄養塩類、低水温などの特性を持つ海洋深層水(以下、深層水という。)は、多くの既存資源の枯渇が懸念される21世紀にあって、特に天然資源の乏しい我が国にとって、極めて有用な資源として、その早急な利用技術の開発が期待されている。
  高知県では1989年に室戸岬に深層水の取水施設が設置され、関連研究施設も充実が図られた。近年、食品、健康などの生活関連分野で深層水の有効性が部分的に明らかにされているが、深層水の特性(物理的及び化学的性状)、深層水が有する基本機能(物性と機能との相関)などの知見は、現状ではほとんど得られていない状況である。
    本研究は、地域の深層水取水施設や優れた研究ポテンシャルを活用した深層水の特性および食品、生物利用、健康・安全分野での深層水の有する機能を明らかにすることを目的としたものである。
(2) 総評
    現在、様々な方面で利用が進んでいる深層水について、先導的に取り組んできた地域である高知県において、深層水の特性および食品、生物利用、健康・安全分野における深層水の有する機能を明らかにするものであり、深層水の特性把握等に一定の成果がみられる。深層水の商品化等が先行している現状において、産学官連携により、このような研究に取り組んだ意義は大きい。しかしながら、深層水の特性と利用上の機能性を結びつけるための科学的な解析、解明が十分でなかった点は残念である。
    今後、地域の深層水取水施設や研究ポテンシャルを活用し、地域において引き続き研究を行い、更なる成果を期待したい。
(3) 評価結果
1 海洋深層水の特性把握
    深層水中の微量金属化合物の解明の調査、キレート吸着による金属の濃縮、水和形態の解明、計測システムの検討及び変動特性の把握等の研究を行った。この結果、清浄性については、室戸海洋深層水は室戸表層水と比べてトリブチルスズでは、約20倍の清浄度があることを明らかにするなど、深層水の特性の把握に努めた。しかし、それぞれの研究の独立性が強く深層水の特性の断片的把握であるとの側面が大きい。また、各種データが限定的で、今後の更なる研究が必要である。
2 食品分野での機能解明
    深層水の食品製造における作用機構の解明、食品品質におよぼす影響として発酵食品と練り製品への作用解明、利用食品の機能発現と安全性等について研究を行った。この結果、例えば深層水を添加した清酒等の醸造実験において酵母菌増加による発酵促進効果が認められた。また、練り製品の弾力増強効果など、食品の製造、調理、加工の過程で好ましい結果、知見が得られた。しかし、ここでもそれぞれの研究の独立性が強く、深層水の効果の断片的特性把握の面が強い。さらに表層水との比較が不十分なために海水効果を検証している部分もあり、深層水だけが本来持っている特性の抽出に十分には至っていないことは残念である。
3 生物利用分野での機能解明
    藻類培養における作用機構として海藻細胞の再生加速技術の確立、紅藻類の促進培養効果の解明、生理活性物質の生産等の研究を行った。この結果、例えば深層水を成分とした培養液を用いた海藻細胞の再生加速技術の研究においては、深層水100%の場合、もっとも再生促進効果が高いことが確認された。しかし、今回明らかになった深層水の特性は、基本的には既知の現象で、今回の研究・技術開発で明らかになったポイントが十分に整理しきれていない面があることは残念である。
4 健康・安全分野での機能解明
    深層水の清浄性および安全性の評価として環境汚染物質に関わる清浄性の評価、細菌類に関わる安全性の評価、皮膚に対する作用機構の解明の研究を行った。この結果、例えば深層水および表層水について、微生物学的検査、環境放射能測定、環境汚染化学物質の測定を行い、深層水の安全性について確認を行った。ここでもそれぞれの研究の独立性が強く、健康・安全分野での機能解明としてのまとまりが弱い。研究者が活発な意見を交流することによって、研究をより深められたと思われる。
    上記サブテーマの研究については、深層水の利用を図るうえで、貴重な研究成果が上がっているものがあり、一定の評価ができる。しかし、全体的に深層水の有効機能の解明が不十分であり、今後、更なる研究の推進が期待される。特に、深層水の研究は、新しい研究分野であるので、今後も引き続いて関連の研究者が相互に連携を進めて、より深みのある研究の推進が期待される。


 

-- 登録:平成21年以前 --