平成11年度研究評価小委員会研究評価報告書について 2.各論(1)総合研究(f)


単一磁束量子を担体とした極限情報処理機能の研究

(研究期間:第1期 平成9~11年度)

 

 

研究代表者:田原 修一((株)日本電気基礎研究所研究課長)

 

 

(1) 総 評

本研究は、単一磁束量子(SFQ)を情報担体とした情報処理確立を目指して、SFQデバイスの集積化技術とインターフェイス技術の研究を行ったもので、所期の目標に対して幾つかの優れた研究成果も示されていることから、計画は順調に進捗している。また、単一磁束量子回路の要素回路及びインターフェイスの研究に的を絞り、当初の目標に沿った研究成果も上がっていることから、目的・目標は適切である。従って、第2期に移行するべきである。
 

(2) 評価結果

(a) 単一磁束量子デバイスの研究

1期ではSFQ集積化技術が確立され、基本要素回路が評価された。シフトレジスタで30GHz、リング発振器で40GHz、アービタ回路で60GHzと高速の論理回路の評価もなされ、SFQ回路のポテンシャルの高さが示された。設計技術、シミュレーション技術にも進展がみられ、SFQ集積回路の設計に関してもある程度の見通しが得られた。さらにSFQを用いたシステム提案やアーキテクチャの提案も行われており、順調に進捗している。第1期はSFQ素子を回路技術にまで高め、集積デバイスとしての可能性を探る時期と位置づけていたが、この目標に従って多くの研究成果が得られており、この目標設定は適切であったと評価される。
(b) 単一磁束量子回路と外部回路とのインターフェイスの研究
1期では、SFQ回路を搭載したチップと外部半導体回路及びSFQ回路チップ間において高速のデータ伝送を実現するための基礎的な技術の理論的検討、シミュレーション及び実験による特性評価等に関する研究が行われた。この結果、SFQパルスのチップ間伝送の実証など、世界的にみても誇れる成果が得られており、研究は順調に進捗している。予定した目標は相当部分は達成されており、当初の目標設定は適切であったと評価される。
 

(3) 2期に当たっての考え方

SFQデバイスは超高速、超低電力の特徴を活かし、ポストCMOSの次世代デバイスとなる可能性があり、また、近年のインターネットの急激な普及などにより、SFQデバイス技術に対するニーズは当初予想を超えて大幅に高まっている。このため、我が国の産業・経済における国際競争力を強化し、世界をリードする立場を確保するためになお一層研究スピードを加速する必要がある。

このような状況の下、第2期においては、SFQを用いた極限情報処理機能が必要とされるシステムを想定し、その実現を目標とした技術開発を第1期以上の密接な協力体制のもとに実行することが必要である。このため、第1期において得られた集積化技術を発展させ、複雑な論理回路の設計技術の確立を行う「単一磁束量子回路のLSI化技術の研究」、並びにデバイスの極限性能の追求を行い、さらなるデバイスの高度化を行う「超広帯域信号処理に関する研究」を実施することが必要である。

 

 





 

-- 登録:平成21年以前 --