平成11年度研究評価小委員会研究評価報告書について 2.各論 (1)総合研究 (e)
生体膜脂質の新しい機能の解析技術と制御技術の開発に関する研究
(研究期間:第期 平成9~11年度)
研究代表者:西島 正弘(国立感染症研究所細胞化学部長)
(1) 総 評
本研究は、競争の激しい分野であるが、主要な業績の多くは国際的にも一流誌に採択、発表されているとともに、わが国のこの分野の研究の厚みを感じさせる成功した研究組織であり、計画は順調に進捗しており、研究目的・目標も適切である。しかしながら、第
期については、ややまとまりに欠けるため、研究内容を再編成して移行するべきである。
(2) 評価結果
(a) 細胞内情報伝達に関与する生体膜脂質シグナリングシステムの解析・制御技術に関する研究
多くの注目すべき成果が達成されている。
(b) 生理活性脂質の制御技術とその創製に関する研究
十分な成果が達成されている。
(c) 生体膜脂質の損傷・病態の解明とその修復・治療技術の開発に関する研究
成果は着実にあげられている。しかし、班員のテーマを総体としてみると、基礎研究から栄養科学的研究に及び、やや、まとまりに欠ける。工夫が今後必要である。
(d) 脂質とタンパク質の相互作用分子機構とその意義に関する研究
本班の対象は比較的新しい領域であるが、興味あるユニークな成果がいくつか得られており、今後の展開に期待したい。
(3) 第期にあたっての考え方
第
期へ移行をすべきであるが、班員間にテーマと実施能力との間にばらつきが見られる。従って、班員構成における再調整が移行への前提であり、また、第
期の成果をふまえて、一段の飛躍を達成するためには、各班の掲げる目標を具体的により明確にし特化する必要があろう。
特に、情報分子としてのスフィンゴ脂質の重要性が増大しつつあるので、この分野あるいは膜ミクロドメインの機能的ダイナミクスを中心とする新班の創設なども、本研究班の発展的強化策として考えうる選択肢の一つであろう。何れにせよ、将来への展開をふまえて、若手研究者の前向きの登用を実施することが望ましい。
第1班については、第2班の目標の一つであるトランスジェニック、ノックアウトマウスの作出が達成された段階で、他の2班との共同をより密にし、これらの実験系を活用しての新しい展開を実現すべきである。
第2班については、遺伝子改変マウスの作出に今後注力して欲しい。また、機能性脂質の創製の方向をより明確にし、強化してゆく必要がある。
第3班については、テーマの集約化による班活動の目標の明確化が今後必要である。班員の構成についてもそれに応じたものとすべきである。
第4班については、今後、構造生物学の重要な一領域として発展が期待される。それだけに、現在のいわば助走段階を抜け出るには、班活動の焦点をより一層しぼり、膜のミクロドメイン機構なども視野に入れた班の再構築による強化すべきである。