平成11年度研究評価小委員会研究評価報告書について 2.各論 (1)総合研究(b)


QOLを指向した生体融和材料の新創出に関する研究

(研究期間:第1期 平成9~11年度)

 

 

研究代表者:塙 隆夫(科学技術庁金属材料技術研究所生体融和材料研究チームリーダー)

 

 

(1) 総 評

本研究は、新しい生体融和材料の創出を目標とし、世界の人々の将来のQOL向上に役立つ優れた医用材料を開発するための新知見と新技術を探求する目的としており、きわめて重要なテーマである。第1期3年間においては、研究開発時の設定テーマのほぼ全域にわたって、計画はほぼ順調に進捗しており、目的・目標も適切である。しかしながら、第2期については、研究参加機関間で研究成果にばらつきが見られるため、医学応用に力点を置く等研究内容を再編成して移行すべきである。
 

(2) 評価結果

 (a) 生体機能系材料の生体融和性向上に関する研究

本分科会では、1)生体融和材料開発に必要な基礎データ収集、2)生体融和材料開発、3)生体融和表面創製、およびそれに伴う4)新技術開発を研究目的としている。第1期3年間では、各テーマとも発展性・実用性 また新たな技術・装置等が開発され高い成果を得ており、研究は概ね独創性の高い研究である。分科会全体としては、ほぼ予定通りに研究成果を上げることができているものの、研究成果には参加研究機関間でばらつきがある。研究計画段階では比較的高い評価を受けた研究課題ではあるが、研究成果を外部で発表していない機関もあるため、積極的な情報公開が必要である。
 (b) 生体活性系材料の生体融和性向上に関する研究
病気・事故などで損なわれた生体組織を再生する医療技術は次世紀の最も大切な研究であり、生体活性材料はその技術を支える極めて重要な材料と考えられる。本分科会では、生体内の組織再建の理解、生体を模倣した材料合成、生体外の工学手法による材料合成の3つの視点から研究を進め、その結果「3ヶ月で骨再建を起こす骨に極めて類似した材料」、「生体治癒作用を効果的に促進するナノカプセル材料と細胞接着性材料」を開発している。この成果は材料工学と医学の両方から特筆すべき成果であり、第1期の初期目標を十分に達成している。
 (c) 生体融和材料開発のための医用工学基盤技術に関する研究
生体融和材料の機能を向上させるための医用工学的基盤技術を確立するために、本分科会では、組織工学的技術、表面加工技術、in vitro評価技術の3つの角度から研究を進めている。自己評価、論文発表などの成果を総合的に判断し、各研究機関いずれも第1期の研究目標を達成し、生体融和材料の臨床応用に大きく寄与することの可能な医用工学的基盤技術の開発に成功したと評価できる。また 医学・工学境界領域委員会を設立し、工学研究と臨床現場との密接な情報交換、研究協力体制についても確立し、この共同研究体制の中から、生体融和材料の臨床応用に向けて、新たな研究テーマとすべきものも生まれる等波及効果も大きい。
 

(3) 第2期にあたっての考え方

1期(3年間)では、新規材料の創出とそれに必要な合成・評価法について研究した。その結果、細胞分化・増殖に効果のある材料・手法(例えば、骨をつくる細胞を分化・誘導する材料、ガン細胞に集積する材料、軟骨細胞を増殖する手法など)を開発した。また、組織レベルで生体と融和する材料(強度・耐腐食性の高いアモルファス合金など)とそれを支える新技術(3次元複雑形状イオン注入法など)を開発した。 第2期(2年間)では、医学と連携して第1期で創出した新材料の生体内反応を検討し、その結果を材料にフィードバックして材料の生体融和性を高度化することにより、医学応用を目指すべきである。 そのため、第1期の材料技術を中心とした、(a)生体機能系材料の生体融和性向上に関する研究、(b)生体活性系材料の生体融和性向上に関する研究、(c)生体融和材料開発のための医用工学基盤技術に関する研究の3つの研究サブテーマを組み替え、第2期では、医学応用に力点を置き、(a)生体組織と長期間融和する材料に関する研究、(b)生体組織を短期間で誘導する材料に関する研究、(c)細胞分化・組織形成の生体工学的促進技術に関する研究、(d)医学・工学境界領域の開拓に関する研究の4つの研究サブテーマにおいて、相互に連携して研究を進めるべきである。
 






 

-- 登録:平成21年以前 --