平成11年度研究評価小委員会研究評価報告書について 2.各論 (1)総合研究 (o)


人間の社会的諸活動の解明・支援に関する基盤的研究

(研究期間:第1期 平成6年~平成8年、第2期 平成9年~平成10年)

 

 

研究代表者:清水 博 (金沢工業大学場の研究所所長)

 

 

(1) 総 評

本研究では、“共創”という問題に専門分野を異にする研究グループが意欲的に取り組んでおり、研究目標はほぼ達成した。また、本研究はユニークな発想に基づき、既存の学問分野の枠をこえて一つの局面を切り開いており、その研究成果の価値は高い。今後、さらに実用的研究を進めることにより、多様な個の集合体から新たな価値を創出する事が要求される局面等への波及効果・発展性も期待できる。その際には、目標設定の時点で、より具体的な検討が行われることが望まれる。全体として本研究について、総合的には良い研究であった。

また、課題設定は、適切であった。

 

(2) 評価結果

(a) 共創の原理と設計:人間と創出的コミュニケーションの研究 
本研究は、プロジェクト全体の指導原理の構築を目指しており、その理論的提唱と実験的実証を行っている。具体的には、第1期に提出された「自己の2領域モデル」を、より深く研究し自他非分離の論理をもとに共創の原理を理論的に解明するとともに、共創の場所としての脳の働きについての実験的研究や創出的コミュニケーションという身体性を導入した共創支援システムの設計に関する研究等により、共創原理の実証を行っておりそれらの成果は高く評価できる。
(b) 共創の原理と設計:人間と共創する人工物に関する研究
本研究では、共創の原理を応用し、自ら創出する人工物、人間と共創する人工物の設計原理の解明を行っている。具体的には、生物の空間情報処理に関する生理学的知見をもとに、多様な環境と自己の関係を自律的に認識する技術の開発を指向し、ロボットの自己ナビゲーションなど第1期の成果が工学的応用へ向けて進展したことが評価される。また、無限定な環境情報の認識に関しても有意義な知見が得られている。さらに、心理物理実験による人間の認知地図獲得プロセスの検討など、基礎的な研究の進展と併せて、視覚障害者の移動支援や高齢者の歩行支援の有効性を高める社会的意義の大きい具体的成果も得られている。今後、これらの成果を踏まえて、人間の様々な活動を支援する人工物の実用化が進むことを期待する。
(c) 人間社会における共創原理の解明と設計の研究
本研究において、社会編成原理としての間人主義の普遍的データが得られたことは、高く評価できる。また、産業立地の集積または分散に関しても共創原理との関連で深く研究されている。さらに、トランスナショナルな環境下における文化的競争に関する研究も日系移民の日本社会への「再参入」の研究として高く評価できる。今後、得られた知見が、共創原理に基づいてさらに広く、また深く研究され、その成果が実社会に活用されることを期待する。
 



 

-- 登録:平成21年以前 --