平成11年度研究評価小委員会研究評価報告書について 2.各論(1)総合研究(l)


エイズ等感染・発症制御のための基盤技術の開発に関する研究

(研究期間:第1期 平成5年~平成7年、第2期 平成8年~平成10年)

 

 

研究代表者:神奈木 真理(東京医科歯科大学大学院医学系研究科教授)

 

 

(1) 総 評

エイズに対する直接のアプローチと、レトロウイルスによる遅発性の疾患および動物モデルについて、動物モデルの開発と、感染、発症の制御技術開発が行われてきた。

個別の評価に見られるように、動物モデルの開発、感染、発病の制御とともに順調に研究が進み、1期に比べ格段の進展が見られ、研究目標は概ね達成した。また、これらの成果は学会等でも高い評価を得ており、その価値は高く、今後この分野の他の研究への波及効果・発展性も期待できる。従って、総合的には良い研究であった。

また、課題設定は適切であった。

 

(2) 評価結果

(a) HIV感染・発症モデル動物系の開発に関する研究
サル、ウマ、SCID-huマウス、ラットと多様な動物種とHIV、HIV- SIVキメラウイルス、HTLV-1の組み合わせによるモデル系が作成され、それぞれユニークなものとして評価できる。さらに、これらのモデルを利用することにより、ウイルスの病原性発現におけるウイルス遺伝子の役割についての研究も進展し始め、いくつかの興味ある成果が得られてきた。
(b) HIV/HTLV感染・発症の制御技術の開発に関する研究
 (b)-1 制御の標的に関する研究
研究目標にフィットした成果として、HTLV抗原のin situでの高感度検出法の確立や、BLV感染性分子クローンの作成、HTLV-1抑制膿の高い抗HIV単鎖抗体の作成、tat反応性因子単離のためのスクリーニング系作成があげられ、概ね良好である。しかし、転写因子Mybの作用機序については、感染における意義は不明確であり、トポイソメラーゼ1の機能解析については興味ある発見から出発しているものの詰めが甘いため、今後は良好のものも質の高さを期待したい。
 (b)-2 免疫応答による制御技術の開発に関する研究
樹状細胞、ケモカインはエイズの病態を見据えた研究で高く評価できる。アポトーシス、サイトカイン関連遺伝子は各々の研究分野で高く評価できるが、エイズとの関連が不鮮明であった。HTLV-1のラットモデル、マウスエイズは特にエイズに関連させなくても評価できる。
 (b)-3 エイズ遺伝子治療法の開発
3年間でCD4陽性細胞特異的HIVベクター、キメラベクター、感染細胞特異的遺伝子導入法の開発は将来のHIV感染者への応用の基礎として評価できる。FV4r遺伝子を用いてのレトロウイルス感染の抵抗性や内在性ウイルス可溶性env蛋白とレセプターの反応で重感染の阻止、HIV遺伝子をレトロベクターに組み込んでのCTLの誘導等基礎研究としては重要で更なる今後の成果が待たれる。
 

 




 

-- 登録:平成21年以前 --