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大型プロジェクトにつながった成果の事例

◇大型放射光施設SPring‐8を産み出した

 総合研究「新ビーム技術による高性能機能材料の分析・評価技術に関する研究」(昭和61年~平成2年、事前調査研究は昭和60年)では、シンクロトロン軌道放射光(SOR)を利用した高輝度・高強度X線源の開発、各種測定法に関する研究を進めた。

 第1.期(61~63年)では、SORから得られるX線を利用した分析評価技術に関する研究を行い、高輝度・高強度X線源の開発、結晶格子定数の精密測定法の開発、極端条件下におけるX線回折法の開発、表面X線回折法と表面敏感EXAFS法の複合化技術の開発、光電子分光法と軽元素EXAFS法の複合化技術の開発を行い、硬X線ビームラインとインターロックシステム等の周辺装置、計測装置を建造した。また、高強度低速陽電子線を利用した分析・評価技術に関する研究を行い、低速陽電子線の発生・制御技術を開発し、陽電子線の直流化に成功するとともに、二次元角度相関法の開発、低速用電子回折と陽電子エネルギー損失分光の複合化技術を開発した。さらに、サブミリ波を利用した分析・評価技術の開発を進め、サブミリ波発生・検出技術、分散型干渉分光法、開放共鳴器型分光法を開発した。

 第2.期(平成元年~2年)では、1.期で完成させたビームライン等の新ビーム源の安定した運転を行うため、その維持管理と拡充に取り組むとともに、新測定技術との結合を円滑に進めて、高性能機能材料の分析・評価を実施した。

 一方、理化学研究所では、研究プロジェクトに参加するとともに、昭和61年1月、6GeV放射光施設を中心とした「光・電子総合研究所構想」をまとめ、62年4月には大型放射光施設に関するR&Dを開始した。また、日本原子力研究所は昭和62年10月に放射光研究特別チームを創設。昭和63年10月には、日本原子力研究所と理化学研究所が大型放射光施設研究開発共同チームを設立、平成2年12月、財団法人高輝度光科学研究センターが設立された。

 大型放射光施設SPring‐8の建設は、平成3年11月に開始され、平成9年3月には放射光の発生を確認し、同年10月から共用を開始した。現在までに数多くの研究成果が産み出されている。

 SPring‐8を実現するための基盤的技術開発は科学技術振興調整費によって行われたものである。

◇日本の脳科学研究の基盤を形成

 総合研究「脳機能解明のための基盤技術の開発に関する研究」(昭和60年~平成2年、調査研究は昭和59年)では、脳機能関連研究に発展をもたらすポジトロンCT、NMR等の機器および分子生物学的手法による新しい脳機能解析技術の開発を中心に、生理学、情報処理技術による脳の解明の重要性にも配慮し、その基盤となる分子生物学的手法による脳機能解析技術の開発、イメージングによる脳機能解析技術の開発及びモデル構成法に関する研究を推進した。その結果、神経回路形成に不可欠な脳神経回路接着に関与する因子の解明、神経伝達因子の解明、視覚認知に関与する新たな中枢の発見など、数多くの研究成果を生み出した。同時に、甘利俊一、安西祐一郎、伊藤正男、御子柴克彦、堀田凱樹など、その後、日本の研究をリードするメンバーが参加することで日本の脳科学研究の基盤の基盤を形成した。

 また、この研究で見つかったウイルス性脳疾患に関連するタンパク質などの成果を受けて、総合研究「脳機能の外来因子による異常の発現機構解明のための技術開発に関する研究」(平成4~9年、9年からは目標達成型脳科学研究)が実施されるとともに、神経回路網の形成・維持機構の解明やシナプス機能の分子機構の解明を目指した「高次脳機能の分子機構解明に向けた基盤技術の開発に関する研究」(平成7~9年、9年は目標達成型脳科学研究)が実施された。

 一方、日本学術会議(平成8年4月の「脳科学研究の推進について」の勧告)、科学技術庁(平成8年7月の「脳科学の時代」の報告書)、文部省の学術審議会(平成9年3月の「大学等における脳研究の推進について」の報告書)はそれぞれ脳科学研究の重要性と、省庁の壁を超えた推進体制及び産学官の研究開発機関が連携して取り組む体制の整備、関係諸分野を横断した共同研究推進のための体制の構築、研究支援基盤の充実や人材養成等が必要である旨を指摘した。

 これらを踏まえ、科学技術会議は、平成9年4月、我が国の脳に関する研究開発を推進するための基本的な方針を示し、関係省庁、関係機関の有機的な連携による脳に関する研究開発の総合的、計画的な推進を図るための組織として、脳科学の各専門分野の代表者及び人文・社会科学分野の代表者等から構成される脳科学委員会を設置。同時に、関係省庁の連携体制を強化するための連絡・調整等を行う組織として、関係省庁で構成される脳科学研究推進関係省庁連絡会が設置された。

 また、省庁横断的な競争的研究資金として科学技術振興調整費による目標達成型脳科学研究推進制度が創設され、さらに脳に関する研究開発に大規模に取り組む理化学研究所・脳科学総合研究センターが平成9年10月に発足した。

 理研・脳科学総合研究センターは、脳科学研究のCOEとしての地位を確立し、現在も世界の脳科学研究をリードしている。

◇南海トラフの地震発生予測研究を推進

 南海トラフは、四国の南の海底にある水深4000m級の深い溝(トラフ)で、非常に活発で大規模な活断層である。北西に進んできたフィリピン海プレートが、ユーラシアプレートの一部である西南日本と衝突してその下にもぐりこんでいる場所に相当する。駿河湾の富士川河口付近を基点として、御前崎沖まで南下しその後南西に向きを変え潮岬沖、室戸岬沖を通って九州沖に達する。

 二つのプレートが衝突して海洋プレートが沈み込んでいるため、非常に活発で大規模な活断層であり、南海トラフの各所では、東海地震、東南海地震、南海地震などのマグニチュード8クラスの巨大地震が約百年ごとに発生している。最近では、紀伊半島南東沖を震源とする東南海地震(1944年M7.9)、同じく紀伊半島南方沖の南海地震(1946年M8)など大きな被害が出た地震の原因となっている。この二つの地震の震源地に隣接する静岡県南方は1854年12月23日の安政東海地震以来150年以上経過しており、次の東海地震の発生が懸念されている。

 科学技術振興調整費では、昭和55年から59年まで「フィリピン海プレート北端部の地震テクトニクスに関する研究」を実施し、駿河湾および相模湾の地殻構造、構造運動、地殻活動を調べるとともに海域における観測、駿河湾周辺地域の地殻上下変動、かつ構造気候等に関する調査研究を実施。また平成7年には「巨大地震災害軽減のための地震発生機構のモデル化・観測システム高度化に関する調査研究」を実施、その成果をもとに「南海トラフにおける海溝型巨大地震災害軽減のための地震発生機構のモデル化・観測システムの高度化に関する総合研究」(平成8年~13年)を実施し、南海トラフ周辺について、ボアホール地殻活動観測、第四紀地殻変動、海域における観測、地震発生機構モデル化、確率予測、西日本地震総合解析の6つの分野で調査研究を行い、テクトニクスマップの作成とともに、地震発生確率評価に向けて総合的な検討を行った。その結果を受けて、政府の地震調査委員会は、平成13年9月27日、南海トラフ巨大地震に関して過去の地震を検討し、今後の地震発生の可能性の予測を発表した。

 南海トラフにおける地震調査研究については、海洋様々なところで実施している。例えば、海洋研究開発機構所属の地球深部探査船「ちきゅう」が、平成19年9月から統合国際深海掘削計画(IODP)による最初の研究航海として「南海トラフ地震発生帯掘削計画」を紀伊半島沖熊野灘で実施しており、掘削試料の解析が待たれている。また文部科学省では、平成20年度から5ヵ年計画で「東海・東南海・南海地震の連動性評価研究」を開始。東海・東南海・南海地震の連動性評価のための調査観測・研究(海洋研究開発機構)、連動を考慮した強震動・津波予測及び地震・津波被害予測研究(東京大学地震研究所)が行われている。

◇日本のゲノム科学を創成

 約6年前にヒトゲノムが完全解読され、今ではゲノムという言葉はごく当たり前の用語として使われるようになっているが、ほんの30年前まではDNAの重要性はあまり認識されていなかった。

 科学技術振興調整費では、早くからDNAを研究の中心に据えた技術開発を実施してきた。「組換えDNA技術の利用(大腸菌等によるワクチン)に関する総合研究」(昭和55年~57年)、「組換えDNA技術の安全性に関する総合研究」(昭和55年~59年)、「DNAの抽出・解析・合成技術の開発に関する研究」(昭和56年~58年)によって、DNA解析などの基礎技術を開発するとともに、組換えDNAの応用のための基盤技術を構築した。

 また「染色体の解析・利用技術の開発に関する研究」(昭和60年~平成2年)では、染色体の分離・精製技術や解析技術、遺伝子導入技術、機能制御技術などを開発してきた。さらに、国際ヒトゲノム解析プロジェクトに対応するため、「ヒト遺伝子地図作成技術の開発に関する研究」(平成3年~7年)を実施し、国際プロジェクトの日本担当部分であるヒト21番染色体の他、11番染色体、13番染色体についても詳細な解析を行うべく研究開発を進めた。

 一方、科学技術会議ゲノム科学委員会は平成10年6月29日、「ゲノム科学に関する研究開発についての長期的考え方」を決定し、それを受けて、理化学研究所は、日本のゲノム科学総合研究の中核的な拠点として、ゲノム科学総合研究センターを同年10月1日に発足させた。また、研究を集中的に実施する場として、同研究センターの研究施設を神奈川県横浜市に建設し、平成12年秋に開設した。その間も東京大学医科学研究所や理化学研究所などでは、ゲノム解析研究が着々と進められた。

 また科学技術振興調整費も、「ゲノムダイナミクスの解明のための基盤的技術の開発に関する研究」(平成8~10年)で、ゲノムの動的挙動を制御する機構やゲノムの動的挙動の変調に起因した疾患の発症機構や老化のメカニズムを分子レベルで解明するための基盤技術を確立した。

 さらに平成10年からは、新たなプログラムとしてゲノムフロンティア開拓研究を発足させ、合計10プロジェクトを推進し、ポストゲノム時代に向けた様々な研究開発を進めてきた。また、DNAから産生されるタンパクを解析するタンパク3000プロジェクトなどが進められた。

 現在、ゲノム科学はより一般的になり、理化学研究所や東京大学医科学研究所を始めとする、日本中の研究機関でゲノム科学をベースとした研究が実施されている。

◇ナノテクノロジーの発展を牽引

 ナノテクメートルというのは、1mの10億分の1という大きさで、その大きさで物質を作り出したり、操作したりするのがナノテクノロジーだ。一般的に使われるようになったのは、2001年(平成13年)にクリントン・米大統領がナノテクを国家的戦略研究目標としたことから、日本でも大きな予算が投入されるようになり、現在は活発な研究分野として確立している。

 ナノテクノロジーが研究者間で意識されるようになったのは、1980年代前半に走査トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)が開発されて、原子1つ1つを見ることができるようになってからのことだが、実際にナノレベルで物質を操作し機能を発揮させる「テクノロジー」になるには少し時間が必要だった。

 科学技術振興調整費の総合研究「ナノスペースラボによる新材料創製に関する研究」(平成5~10年)では、ナノ領域における物質の新たな特性に着目し、制御技術・計測技術を確立するとともに、それを活用して、新材料を創製した。さらに、「ナノへテロ金属材料の機能発現メカニズムの解明に基づく新金属材料創製に関する研究」(平成12~16年度)では、ナノヘテロ金属材料の構造と機能発現の機構について、電子顕微鏡や新しいX線散乱法、三次元アトムプローブ等の材料解析手法を駆使して、多くの科学的・技術的価値の高い基礎的知見を得て、それらを材料創製にフィードバックすることで、ナノコンポジット材料・ナノグラニュラー材料・多層膜材料・結晶性制御材料等の優れた材料を創製することに成功している。

 一方、ライフサイエンス分野においても、総合研究「生体ナノ機構の解明のための基盤技術の開発に関する研究」(平成4~9年)が実施され、個々の生体分子複合体の構造と動きを、機能している状態、さらに生きている細胞内で、ナノメートル精度で直接的に観察・操作するための方法、装置などを開発し、それらを用いて実際に生体ナノ機構を解明するためのパイロットプロジェクトとなるような実験系が、タンパク質複合体、タンパク質‐DNA複合体、生体膜系で開発された。

 両研究プロジェクトとも、その後のナノテクノロジー研究を進める上での重要な基盤を構築した。勿論、科学技術振興調整費では、その後もナノテク関連研究を支援している。

 平成13年3月末に閣議決定された第2期科学技術基本計画では、ナノテク・材料分野が重点4分野の1つに取り上げられ、重点化が進んだが、その基盤となる様々な技術開発の一翼を科学技術振興調整費が担ったのは間違いないだろう。

 物質・材料研究機構、東北大学、産業技術総合研究所、東京大学、大阪大学などで、ナノテクをベースした拠点が形成されている。

◇糖鎖研究を世界トップレベルまで引き上げた

 日本における糖鎖研究は、平成14年頃から産学協同で盛んに行われるようになり、世間の注目を集めているが、科学技術振興調整費ではそれ以前から糖鎖研究のための基盤を構築してきた。

 総合研究「糖鎖の構造・機能解析のための共通基盤技術の開発に関する研究」(平成3年~8年)では、糖鎖レベルにおける生体機能調節機構解明のための基盤技術を開発するため、特異的な糖鎖認識能を有する蛋白質素材(酵素、レクチン、単クローン抗体など)の開発、細胞、実験動物レベルで糖鎖の微細構造を操作することによって糖鎖の生理機能を解析する逆向き遺伝学技術、直接糖鎖や複合体そのものへアプローチできる合成化学的手法の確立、さらに、複合糖質及びそれから切り出した糖鎖の精製、分離や構造解析に関する技術の高度化と先導的機器分析技術の開発等を実施。

 この課題では数多くの成果が生まれているが、その中でトピックスとなるものをいくつか紹介する。

 京都大学などの研究グループは、神経系特異的糖鎖抗原HNK‐1の生合成に関するグルクロン酸転写酵素を、ラット脳膜画分のNP‐40抽出物を出発材料として種々のクロマトグラフィーにより精製した。精製酵素の部分アミノ酸配列を基にラット脳cDNAライブラリーから、この酵素cDNAをクローニングした。その塩基配列を決定し、この酵素が新規な2.型の膜貫通蛋白質であることを示した。この酵素cDNAをCOS‐1細胞へ導入したところ、HNK‐1糖鎖抗原を発現すると同時に、神経細胞様の長い突起を延ばすなどの著しい形態変化を示した。

 理化学研究所などのグループでは、糖鎖の固相合成技術の開発に向けて基礎的な検討を行った。その結果、繰り返し構造を有するポリラクトサミン型糖鎖の構築に関して固相合成ルートを確立することができた。それまでのところリンカーの長さに応じて6ないし8糖までの構築に成功している。さらに、ポリラクトサミン型糖鎖の合成に有用なアミノ酸保護基、チオグリコシドの新たな活性化法を新規に開発した。また、オルトゴナルグリコシル化と呼ばれる新たな糖鎖合成戦略の固相合成への応用を目指し、可溶性ポリマーを利用した検討を行い、糖タンパク糖鎖部分構造の短段階合成法を確立した。さらに、高分子担体上での合成戦略を、糖化学において最も困難な立体選択的βマンノシル化に拡張することができた。

 現在、日本の糖鎖研究は世界トップレベルにある。北海道大学や産業技術総合研究所では糖鎖関連の研究施設が設置され、また平成15年には日本糖鎖科学コンソーシアムも設立されるなど、活発に研究が進んでいるほか、経済産業省などでも糖鎖の産業化に向けた研究支援が行われている。

お問合せ先

科学技術・学術政策局 科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局 科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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