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2.北大リサーチ&ビジネスパーク構想

(事後評価)

(実施期間:平成15~19年度)

機関名:北海道大学 創成科学研究機構(組織運営統括責任者:岡田 尚武)

組織運営計画の概要

 北海道大学では、従来の部局中心縦割り研究教育組織の弊害を排除するために、部局横断型の「創成科学研究機構」を創設していたが、その1年後に発足することとなった本プロジェクトでは、北キャンパスエリアに展開する学外に開かれた連携研究拠点を含む「機構」を実験場とした新機軸の組織改革・運営改革を試行し、その取り組みの全学と地域への波及を図る中核拠点として「機構」を育成することを目的としている。そのため、以下の取組を実行する。
・ 学内外から分野横断的・学際的に集った研究者による融合研究領域の創成を目指した研究の推進
・ 研究者が研究そのものに専念できる場を提供するための技術支援スタッフの確保・育成と、共同利用機器設備を備えたオープンファシリティの設置による、分野融合的な新しい「知」を創造する環境の整備
・ 企業、自治体等と締結する包括的な連携協定に基づくキャンパス内及び企業内双方への研究室設置や協定に基づく共同研究等の推進、パテントマップやビジネスモデルの作成など企業、地域とともに「知」を活用する体制の構築
・ これらの取組について、透明性を確保した上で迅速に実行するための機構長によるトップダウン型マネージメントの構築と、それを支える研究企画部門の設置・運営

(1)総合評価(所期の計画以下の取組である)

 本構想は北大全体の組織改革ならびに運営改革の推進のみならず多数の外部研究機関、企業等との連携による研究開発システム改革を目指す壮大なものであり、中間評価においてその取り組みに対する期待が大きいものであったが、結果として当初の目標が達成されたとは言い難い。
 計画によれば、機構長のトップダウン型マネージメントを支えるアドバイザリーボードと育成評価委員会を設け、戦略スタッフ部門に支えられた研究企画部と研究支援部、研究評価委員会により選定され戦略重点プロジェクト研究部門で実施される学際融合研究、学内・地域連携を深めるための相互分室の配置、また運営面では研究者による自由裁量と教育義務を課さない研究専念制度、任期付き競争環境、いわゆるメンターを付した若手研究指導制度等の構想が述べられている。しかし、たとえば中間評価以降の期間内では育成評価委員会は期間終了直前に1回開催されたのみであることに象徴されるように、当初の組織改革と運営改革の構想が最後まで真摯に追究されたとは言い難い。本プロジェクトの後半に大学執行部の交代があったが、その影響も含め当初の構想が実現しなかった経緯と原因について大学執行部は総括し、機関としての責任を検討していく必要があると共にこの間の教訓を活かした新構想をまとめ、それを学内外に問うべきである。
 なお、本プロジェクト終了後の現在、学内の研究所と研究センターを束ねる新組織の設立によるシステム改革の動きがある。これらを含め、一定期間後に本プロジェクトについての追跡評価を行い、学内外におけるシステム改革の実施状況を引き続き確認すると共により深い原因と教訓を追究することが望ましい。

<総合評価:C>

(2)個別評価

1.ミッションステートメントに対する達成度

本提案では、以下のミッションステートメントが掲げられていた。

目標1: 知の創造
 1) 教育義務のない任期付き研究者による研究集中体制
・ 特定研究及び流動研究システムの北大内の他研究組織への拡大
・ 育成された世界トップレベルの研究人材を学内、国内、海外アカデミア及び産業界へ展開
 2) 戦略に基づいた学際的・融合的研究領域への重点化
・ 本システムにより、真に学際的・融合的な研究が生み出されたかの評価実施
・ 生み出された学際的・融合的な研究の大学内、国内及び海外研究機関との連携による更なる学際的・融合的研究の創出
・社会ニーズからの新たなる学際的・融合的な研究課題の設定

目標2: 知の活用
 1) キャンパス内への企業研究室の誘致と企業研究所への機構分室の設置
・ 産業分野別の企業と包括連携契約締結 10件を目標
・ キャンパス内への企業研究室誘致実行 10件を目標
・ 企業研究所への機構分室設置 10件を目標
 2) パテントマップによる戦略的特許出願とその運用
・ 構築された知的財産戦略に基づいた重点特許のパテントマップ策定の継続
・ パテントマップに基づく戦略的権利確保の継続とその運用実施 運用件数10件目標
・ 策定されたパテントマップの有効性の検証
 3) 商社・シンクタンク等との連携によるビジネスモデルの策定とその検証
・ 戦略的重要性の高い特許のビジネスモデル策定の実行継続
・ ビジネスモデルに基づいた知的財産活用戦略の立案の実行継続
・ 知的財産活用戦略に基づいた産学連携の推進の実行継続
・ 策定されたビジネスモデルの妥当性検証と改良の方向付け実施

目標3: マネージメント
 1) 機構長によるトップダウン型マネージメントとその業績評価
・ スタッフ部門の調査機能、提言機能の充実によるトップダウン型マネージメント体制を確立
・ 裁量経費の選択と集中による学際的・融合的研究の効率的運営
・ 運営会議によるトップダウン型マネージメントの業績評価実施
 2) 事業化経験を有する人材活用による研究企画体制
・ 独立採算型の研究機関(仮称:北大SEEDS企業体)として自立
・ 育成されたマネージメント型機能人材(戦略、ビジネスモデル、パテントマップ等)を学内、学外へ派遣

 これらの目標について、目標1の中で、「教育義務のない任期付き研究者による研究集中体制.」については、報告書の中で具体的な活動として科学技術振興調整費の別プログラムの課題である「北大基礎融合科学領域リーダー育成システム」に関する記載が大きな部分を占めていて、これを戦略的研究拠点育成プログラムによる本プロジェクトの成果とするには問題がある。学内の経費で実施した流動研究部門と特定研究部門の実績についても、本プロジェクトによる運営改革がそれらの運営に対しても試行されたとすれば、特定研究部門における研究について、課題担当責任者が期間中に大学から異動し、その代替者が招聘されていない理由についても明確にするべきである。4つの戦略重点プロジェクト(戦略プロジェクト研究部門)に関しては、「環境・科学技術政策」は公共政策大学院創設の母体として機能したとはいえプロジェクトメンバー間による分野横断型の研究成果はみられない。「人獣共通感染症の診断・治療法の開発」については、プロジェクト終了後その成果と共に「人獣共通感染症リサーチセンター」に特任研究者の一部が吸収され研究活動は継続された。残りの2つ「移植医療・組織工学」と「食の安全・安定供給」については規模を縮小して2年間を限度として継続することとしている。各研究プロジェクトについて成果が上がったとされているが、組織運営改革の成果であるのかまた投入した資金に対する十分な成果であるのか十分な評価がなされず、疑問が残る。また新規の戦略重点プロジェクトの計画がなく、本プロジェクトによる戦略的な課題の設定ならびに運用が継続的・効果的に運用されていたとは判断し得ない。
 目標2の知の活用については、北大キャンパス内への企業研究室誘致については2機関の企業研究室及び5機関の企業連絡室の設置に止まった。また企業研究室への機構分室設置に関しては1機関に1年間のみ機構分室を設置し7機関にタイムシェアリング連絡室を設置するに止まり、共に目標を大きく下回った。
 パテントマップの作成については、成果報告書には戦略重点テーマに関するパテントマップを38件作成したとの記述があるが、戦略的な知的権利確保のためにどの様に活用されたかについて明らかでなく、その有効性の検証も行われていない。また、戦略的重要性の高い特許のビジネスモデル27件を策定したとの記載があるが、その妥当性の検証及び改良の方向付けについては不明確であり、また後継研究プロジェクトが設定されていないこともあり、それらが戦略的に有効に活用されたとするには疑問がある。
 目標3については、運営会議開催はなされていたようであるが、トップダウン型マネーメントの確立のために設立したアドバイザリーボード、研究評価委員会、さらには拠点育成評価委員会の開催が、プロジェクト実施期間中には中間評価直後までに各2回及びプロジェクト終了直前の各1回にとどまり、PDCAサイクルが十分に機能していなかったと判断する。
 独立採算型のNPO法人(北大SEEDS企業体)は産業界の同意が得られなかったことなどから設立されていない。
 以上より、ミッションステートメントは、所期の計画を達成していないと判断する。

2.組織改革の妥当性

 北大リサーチ&ビジネスパーク構想で当初掲げた組織改革は、北大全学と北キャンパスに展開する(予定であった)外部研究機関を含む壮大な構想であった。そのために「創成科学研究機構」に、機構長に対する「アドバイザリーボード」、「育成評価委員会」、「研究評価委員会」、「研究企画部」とその「戦略スタッフ部門」、「研究支援部」、そして「戦略重点プロジェクト研究部門」等を付加的に設置し、「機構」の実体を整える予定であった。しかし、これらは組織化されたものの中間評価以降、「研究企画部」の目立った活動が見られない。「アドバイザリーボード」は年2回開催すべきところ中間評価直後とプロジェクト終了直前に開催した(全期間中3回)のみであり、また「育成評価委員会」は中間評価以降プロジェクト終了直前の段階まで開催されていない(全期間中3回)。さらに、「戦略重点プロジェクト」の一部を除きその活動は低調であり、「特定研究部門」の課題担当責任者が2名共期中で移動したにもかかわらず代替者が招聘されないままになっている。また、戦略重点プロジェクト研究については評価及びアドバイスを行う研究評価委員会が5年間の課題実施期間中で合計3回の開催にとどまり本来の目的を達成しているとは見受けられない。これらのことから、当初の組織改革構想が十分には推進されなかったと考えられる。
 一方、成果報告書には、特に中間評価後の平成18年~19年にかけて、外部資金獲得、施設の整備等を含めた研究拠点の発展について記載がある。例えば、平成19年度から「機構_」本学における若手研究者の育成プログラムを支援することとした」との記載は科学技術振興調整費の別のシステム改革プログラム(若手研究者の自立的研究環境整備促進)の課題の活動である。また、「塩野義創薬イノベーションセンター」の発足についても、科学技術振興調整費の別のシステム改革プログラム(先端融合領域イノベーション創出拠点の形成)の課題の活動として捉えるべきものであり、これら外部資金によるプロジェクトの開始にあたって、本プロジェクトによる組織改革が果たした役割が不明確である。
 さらに、キャンパス内への企業研究室の誘致と企業研究所への機構分室の設置については目標をかなり下回っている。これは本プロジェクトの企画中枢を担うべき研究企画部の機能が十分に働いていなかったためと考えられる。
 これらのことから、組織改革については、当初計画の水準には達していないものと判断する。

3.運営改革の妥当性

 主として外部有識者から成る「育成評価委員会」、「アドバイザリーボード」、「研究評価委員会」は、総じて機構の運営に関し育成的観点から厳しい助言を行っているが、機構長のトップダウン型マネージメントを支える指導・助言・評価としては当初のねらい通りには機能しなかったと見られる。また、本プロジェクトの企画中枢を担うべき研究企画部の運営も特に中間評価以降目立った活動が見られない。さらに、研究者による自由裁量と教育義務を課さない研究専念制度等の運営改革は対象研究プロジェクトで実施されたが、研究成果の実績から判断しそれらの効果は限定的であったと思われる。
 中間評価後における本プロジェクトの運営改革が積極的には展開されず、プロジェクト の運営自体が大きく停滞していたと判断せざるを得ない。

4.実施期間終了後における継続性の見通し

 本プロジェクト終了後、創成科学共同研究機構の名称を付した組織は北大内の「学内共同教育研究施設」の一つに組織図の上では位置づけられている。しかし、本プロジェクトで付加された組織や構想された運営改革の多くは、特に中間評価以降において当初の目標である北大内外の研究教育組織への拡大を図られることもなく、機構としての目立った活動も見られない。
 一方、平成19年度になってから、大学本部の研究戦略室に、学内の主要な部局・研究組織の委員からなる「長期的研究戦略検討ワーキンググループ」が設置され、学内横断的な組織である「創成科学研究機構(仮称)」を設立する方向で、本プロジェクト終了後の平成20年4月に作業部会が立ち上げられた。しかし検討されている構想は学内の既設研究所・センターの連携を図ることにとどまり、本プロジェクトが掲げた部局横断型でもまた学外に開かれた組織形態でもないと考えられる。また、本プロジェクトで試行しようとした運営改革を全面的に継承しようとするものでもない。新組織の設立による学内のシステム改革には期待するが、大規模な本プロジェクトにおける貴重な経験とその結果を総括することなく、次の改革に踏み出すことに重大な疑念が残る。このことから、一定期間後に本プロジェクトについては追跡評価を行い、本プロジェクトの組織改革・運営改革とその結果としての研究成果が学内外でどのように受け止められたかを明らかにし、新構想への反映・継承の有無、原因と責任の明示等について十分な情報開示を大学執行部に求め、新構想の妥当性判断を含めこれらの実施状況の確認を引き続き行なうことが望ましい。

5.中間評価の反映

 中間評価時において、「今後はマネジメントイノベーションに注力し、また若手研究者の育成強化、知的財産権の活用について得られた知見を北大全体に広める方策等、革新的な連携体制の構築について検討することが望ましい」との記載があるが、本プロジェクトの成果を北大全体に広めるための検討とその結果に基づく真摯な努力が、中間評価以降のプロジェクト実施期間を通じ十分になされたとは認めがたい。また、中間評価の反映に基づく成果もほとんど認められない。これらのことから、中間評価の反映は基本的になされていないと判断する。

(3)評価結果

総合評価ミッションステートメントに
対する達成度
組織改革の
妥当性
運営改革の
妥当性
実施期間終了時に
おける継続性の見通し
中間評価の反映
Ccccdd

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

-- 登録:平成21年以前 --