12.ナノテク・バイオ・IT融合教育プログラム

(事後評価)

(実施期間:平成15~19年度)

実施機関:広島大学(代表者:相田 美砂子)

課題の概要

 本人材養成課題では、ナノテク(物質科学)・バイオ(生命科学)・IT(情報科学)の融合領域において、コンピュータプログラミングの設計技術を持ち、コンピュータ・ケミストリーとバイオインフォマティクスをつなぐ知識と技術を持つ人材の養成を目指した。広島大学大学院理学研究科化学専攻と同数理分子生命理学専攻の連携の下に、修士課程学生を対象に、ナノテク・バイオ・IT融合分野の教育基本カリキュラム群の構築を計画し、さらに、修士課程以上の学生を対象に、広島大学量子生命科学プロジェクト研究センターにおいて、実践的な研究・開発の訓練実施(アドバンストコース)を計画した。

(1) 総合評価(所期の計画以下の取組であるが、一部で当初計画と同等又はそれ以上の取組も見られる)

 ナノテクノロジーとバイオテクノロジーの共通の基盤となるコンピュータ・ケミストリーおよびバイオインフォマティクスの両者の知識・技術を持つ研究者・技術者を養成するといった本プログラムの狙いは時代の要請を反映したものであり、目標も明確に設定され、適切なものであった。融合領域の基礎的知識と技術を学ぶための基本カリキュラム群を構築し、実践したことは評価に値する。しかし一方で、中間評価での指摘事項への対応不足やベンチャーネットワークの構築未達など未解決な問題がある。また結果的に、本プログラムの支援が無くても、従来の組織で十分に対応可能な内容であったと思われる点が残念である。本プログラムのビジョンとその高い目標は今も社会の要請するところであり、引き続き実施責任者らの強い熱意に期待しつつ、これまでの経験を生かして本融合分野の人材養成に継続的に取り組まれることを期待する。

<総合評価:C>

(2)個別評価

1.目標達成度

 養成人数については、博士課程、博士研究員修了者でやや目標を下回ったが修士課程修了者では目標を超えており、概ね達成していると評価される。また、受講生の意欲高揚を図った認定証授与の試みや、化学系の学生に生物系分野への興味・応用を持たせることに成功している点は評価できる。しかしながら、本課題の特徴的目標であるコンピュータプログラミングの設計技術を持ち、コンピュータ・ケミストリーとバイオインフォマティクスの両方の知識と技術を持つ研究者・技術者を養成することについては、修了者の到達レベルの評価が明確でなく、真に融合分野の人材が輩出できたかについて疑問が残る。また、大学発ベンチャーの起業家育成についてもその成果が確認できない。以上のことから目標達成度については所期の目標を下回ったと判断せざるを得ない。

2.人材養成手法の妥当性

 まずはそれぞれの分野の専門家として育成された上でそれに加えて新規融合領域の教育を行うといった養成方針と目ざす養成人材の高い目標レベルは賛同すべきものがあり、確たる主張がある実施責任者の熱意は大いに賞賛できる。基本カリキュラム群とアドバンストコースの2本立てとして、基礎と上級のレベルに応じた人材養成を行ったこと、受講生の意欲高揚を図った認定証授与の試み、波及効果が得られた社会人受け入れ策等は高く評価できる。しかし一方において、計算機科学科目のカリキュラム設定などは受講者の十分な習熟のためにはあまりに短時間過ぎると思われた。今後継続する理学融合教育研究センターでのカリキュラム設定においては、より適切な教育手法の検討を期待したい。

3.人材養成の有効性

 修士課程修了者は企業の開発職・研究職に就いたものが多く、博士研究員修了者は教員や研究員として活躍中である。また、博士課程進学希望者が増えており、学生たちに対して研究者養成のロードマップが適切に提示されていたものと推測される。加えて企業人との接触機会を設け、キャリアパスに繋がるよう工夫されていることも好ましい。本人材養成プログラムが有効に機能したものと評価できる。

4.実施計画・実施体制及び継続性・発展性の見通し

 本プログラム終了後も同大学大学院理学研究科に附属する形で融合教育センターが設置され、引き続き本人材養成体制が継続されるのみならず、本融合領域教育の必要性から学部での副専攻プログラムを新設したことは高く評価できる。本人材養成ユニットの特徴・理念を継続しつつ、広島大学全体としての更なる支援と分野融合の継続・発展を期待する。

5.中間評価の反映

 目標とする養成人材の知識・スキルとその到達レベルの明確な設定、人材養成の出口の明確化、認定証付与の認定基準が人材養成の評価に十分であるかなど、中間評価で指摘された諸事項について、その対応の努力は大いに窺える。しかしながら、養成修了者の具体的人物像はやはり不明確であり、従来の組織、研究室での指導との差が明確には伝わらなかった。例えば、近年、高速DNAシークエンサー利用の高まりによって、バイオインフォマティクスソフト開発者養成が急務となっているが、コンピュータプログラミング演習には余り時間が使われず、バイオインフォマティクス分野の判る研究者の養成に留まっており、求める人材養成に繋がったものであるか確認できなかった。

(3)評価結果

総合評価目標達成度人材養成手法の
妥当性
人材養成の
有効性
実施計画・
実施体制及び継続性・
発展性の見通し
中間評価の反映
Ccbbbc

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科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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