8.伝統技能と科学技術の融合による先進的ものづくりのための人材育成

(中間評価)

(実施期間:平成18~22年度)

実施機関:京都工芸繊維大学(代表者:江島 義道)
連携自治体:京都市

課題の概要

 伝統技能に内在している暗黙知を形式知化した新技術を開発・活用し、新たなイノベーションを創出しうる人材を育成することを目的とする。育成対象者は、伝統技能を元にしたイノベーションの企画・推進の中核たる若手人材(伝統産業企業の後継者、京都市の職員)とする。中間目標は、伝統工芸品作製過程を科学的分析に基づき“しる"こと、最終目標は、習得した科学技術的知見を基に新規事業を展開し、イノベーション創出を行いうる能力を有する人材・企業を育成することとする。カリキュラムは(1)伝統技能に内在している暗黙値の形式値への展開方法を習得する「短期集中インターンシップ1」、(2)形式値の新たな発見および新技術への活用方法を習得する「短期集中インターンシップ2」「課題対応コース」「研究開発」、(3)新たなイノベーションの創出方法を習得する「実用化技術手法」「マネージメント法」等である。

(1)総合評価(所期の計画以下の取組であるが、一部で当初計画と同等又はそれ以上の取組もみられる)

 京都工芸繊維大学らしいユニークな試みだが、地域再生へ向けた取組としては不十分である。伝統工芸を形式化して解明する手法は理解できるが、地域再生に対する寄与への見通しが、具体的な成果という点でほとんど見えてこないのが問題であり、マネージメント能力の育成も弱い。また、“実験的な試み"だけでは、「新たなイノベーションを創出し得る人材」の養成には至らない。暗黙知を形式知に展開した後にどのように伝統工芸の新たな展開に結びつけるかが課題である。

<総合評価:C>

(2)今後の進め方(計画の継続又は一部見直しが必要である)

 現状では、「伝統産業の活性化」が困難であると考えられる。京都地域の伝統工芸の発展(伝統産業・地域経済の活性化、伝統産業就業促進等)のために、暗黙知を形式知化した新技術の伝統産業そのものへの適用及び伝統産業後継者の育成も目標と捉え、人材養成事業を見直しカリキュラムの実効性を一層高める必要がある。
 また、暗黙知を形式知化した新技術を発掘・開発し、それを活用して新しいイノベーションを創出する取組に関しては、一定の成果が得られているものの、更に他の機関との連携を図りながら、実用化技術へつながる部分のカリキュラム及び実施体制の強化が求められる。
 更に、入学者に伝統産業の後継者が少ないように思われるので、地域活性化のための伝統工芸の後継者育成にも努めていただきたい。

<今後の進め方:B>

(3)個別評価

1.進捗状況

 新イノベーションコースの養成修了者が、大学院進学によりコース修了が遅れているため、目標を達成できていない。現実には大学院入学の機会となっている点では、学問への興味を持った受講者が多かったということで評価される一面もあるが、本来の地域人材育成という目的にそぐわないのではないかと懸念される。大学院進学者の受講者の進路も本取組の効果測定に不可欠である。また、伝統産業内にある「技能」を核としつつ、新技術を開発・活用し、伝統産業内で新規事業を立ち上げ得る総合的な戦略思考をもつ人材を育成することを期待する。

2.拠点形成手法の妥当性

 当初の目標である「伝統産業の再生」がこのままでは困難である。新たなイノベーションの創出のとらえ方として、伝統産業を守るための視点も必要である。人材養成の具体的成果について、進捗に合わせ、成果をどのように明確にするかの検討が必要である。形式知化したものを新しいものづくりに応用する部分のカリキュラムの強化が求められる。また、今後マネージメント能力育成にも力を入れるべきである。

3.拠点形成の有効性

 伝統技能からの「形式知」化が新技術を開発・活用して具体的な成果が生まれ、特に地域再生に結びつく可能性が現状では低い。アウトカム(波及効果)についてもどのように展開されるかが不明確である。また、修了者の修了後の活動について追跡調査を行い、期待される成果をより明確に示していただきたい。

4.実施体制の妥当性

 他の機関との連携を図りながら実施しているが、地域の再生を達成するための今後のプロセスには連携が不十分である。自治体などとの連携について具体化すべく取組を進めていただきたい。また、形式知化したものを新しいものづくりに応用する部分のプログラムの強化や知財化という視点の強化の観点からも体制を充実することが望まれる。

5.継続性・発展性の見通し

 実施内容は有益であり、地域の適切な協力があれば発展の可能性はあると思われる。「何らかの形」で継続性・発展性の確保が期待できるが、拠点としての継続のための見通しを、今後2年間で具体化していただきたい。

(4)評価結果

総合評価今後の進め方進捗状況拠点形成手法の
妥当性
拠点形成の
有効性
実施体制の
妥当性
継続性・
発展性の見通し
CBccccc

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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