3.発生・分化における糖鎖受容体の機能解析

(事後評価)

(実施期間:平成15~19年度)

任期付研究員:安形 高志(所属機関:独立行政法人 産業技術総合研究所)

(1)総評(所期の計画以下の取組であるが、一部で当初計画と同等又はそれ以上の取組もみられる)

 本研究では、哺乳動物組織に内在する未知の糖鎖受容体(レクチン、糖鎖認識タンパク質)の探索・クローニングと高次機能の解析を目指した。特に糖鎖末端部の糖(シアル酸及びフコース)を認識する膜タンパク質型の糖鎖受容体に注目した。これら未知の糖鎖受容体に対し、マウス胚を用いた包括的なプロービング、ならびに発現クローニングによる遺伝子取得を試み、得られた遺伝子については、さらにその産物である受容体の高次生体機能の解析を目指した。
 目標達成度については、シグレックファミリーの遺伝子配列の相同性に基づき、免疫応答において重要な調節機能を持つと推定される新規糖鎖受容体2種類(ヒトシグレック14及び 15)を発見したが、新規哺乳動物糖鎖受容体遺伝子の取得に至る要素技術の十分な確立には至らず、既知の遺伝子との配列相同性を持たないような全く新たなタイプの受容体遺伝子取得には達しなかった。従って、所期の目標をやや下回っていると考えられる。
 研究成果については、新規なシグレックファミリー(ヒトシグレック14及び 15)を見出し、シグレック14がシグナルアダプター分子DAP12と会合すること、また他の多くのシグレックと異なって正の調節作用を示すこと、さらに負の調節作用を示す構造類似のシグレック5とペアとなって機能していることなどを示唆した点などは評価される。なお、標題に示される「発生・分化」との関わりが明確ではなく、この点を詰めることが今後の課題と考えられる。
 研究計画については、発現クローニング法で当初目的とした全く新たなタイプの新規受容体遺伝子取得に至らなかったため、研究上の魅力が半減したことは否めない。また、得られたシグレックファミリーに属する新規受容体高次機能の解析においても、当初意図された発生・分化との関わりの検討に向けた、適切な実験計画が組まれていなかった。これらのことから研究計画はやや不適切であったと評価される。
 中間評価の反映については、評価時の指摘を受けて、系の改良を試みつつ発現クローニングに繰り返してチャレンジし、3回にわたって糖鎖と結合する細胞集団を取得できたことから、概ね反映されていると評価された。
 以上より、中間評価で指摘された内容に対応して研究計画を大幅に変更したが、全く新たなタイプの新規糖鎖受容体遺伝子の取得に至らなかった。一方、シグレックファミリーに属する新規糖鎖受容体2種類を発見したことは成果と考えられるが、その高次機能の解析において発生・分化との関わりの検討には至っていない。これらのことから、所期の計画以下の取組ではあったが、一部で当初計画と同等またはそれ以上の取組もみられたと評価できる。

<総合評価:C>

(2)評価結果

総合評価目標達成度研究成果研究計画中間評価の反映
Ccbcb

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科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

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