10.野鳥由来ウイルスの生態解明とゲノム解析

(事後評価)

(研究期間:平成17~平成19年度)

責任代表機関:国立感染症研究所(代表者:山田 章雄)
参画機関:
(独)農業・食品産業技術総合研究機構、東京大学、鳥取大学、北海道大学、NPO法人バードリサーチ

研究課題の概要

 高病原性鳥インフルエンザウイルスやウエストナイルウイルスのように、家禽や野生鳥類に感染するのみならず、ヒトにも感染し甚大な被害を引き起こすウイルスの、日本への伝播に関与する渡り鳥の国内外の飛来ルートを解明するとともに、それら渡り鳥のウイルス保有状況を調査し、また、分離されたウイルスゲノムのデータベースを構築して、海外流行地のそれと比較検討しながら、成果をワクチン開発等を含む流行対策に役立てることを目的とした。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている)

 高病原性鳥インフルエンザウイルスやウエストナイルウイルスの野鳥を介する我が国への侵入経路を明らかにしようとした研究であり、高病原性鳥インフルエンザ(新型インフルエンザの発生の遠因)やウエストナイル熱の流行対策上、行政的にもそして公衆衛生上も、極めて緊急度の高い課題である。本研究において、多数の課題関連専門家の共同研究により、これらウイルスの日本への侵入を媒介する可能性のある野鳥の飛来ルートや野鳥のウイルス感染状況が明らかにされた。今後も、取組の継続により、ウイルスのゲノムデータベースの有効利用・専門家の社会に向けた情報発信・具体的な流行対策への成果活用等が期待される。

<総合評価:B>

(2)個別評価

1.目標達成度

 高病原性鳥インフルエンザウイルスやウエストナイルウイルスの日本国内への侵入並びに国内での拡大に重要と思われる野鳥の鳥種について、飛来ルートや移動ルートを明らかにできており、所期の目標は達成されていると判断される。ただし、当初予定されていた野鳥からのウイルス分離株のデータベース化が遅れたことについては、改善の余地があったものと考えられる。
 ワクチン開発、創薬への活用を目指した継続的な取組と専門家の社会に向けた情報発信を期待したい。

2.情報発信

 長期的観察や多数の材料・データが必要であるという特徴を有する課題であることから、課題実施期間内での研究発表に困難が伴った点は理解できるが、それでもなお、研究費の額に比して、原著論文、国内紙発表等が少ないと判断される。社会的にも重要な課題であるため、今後の積極的な成果公表による研究成果の社会還元が望まれる。

3.研究計画・実施体制

 大学、国立研究所、地方の公共研究所、民間団体などに所属する課題に関係した多くの専門家が集まり一丸となって取り組んだ研究であり、このような複雑な組織で所期の成果を上げたことは評価される。しかしながら、野鳥からの分離ウイルスのデータベースの構築の遅れに関しては、研究者間の連携体制に改善の余地があったものと考えられる。

4.実施期間終了後における取り組みの継続性・発展性

 本研究課題は、新興・再興感染症の流行を予測する上で重要な活動であるため、今後も監視を継続する体制が必要である。この体制の構築には、行政の責任のみに帰するのではなく、研究者の側からの積極的な働きかけが必要である。一方、行政側としては、今後これらの成果を流行対策に具体的に活用する方策を検討する必要があるものと考えられる。

(3)評価結果

総合評価目標達成度情報発信研究計画・
実施体制
実施期間終了時に
おける取り組みの
継続性・発展性
Bbcbb

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

-- 登録:平成21年以前 --