8.テロ対策のための爆発物検出・処理統合システムの開発

(事後評価)

(実施期間:平成17~19年度)

代表機関:東京大学(代表者:越 光男)
参画機関:
三菱重工業株式会社、独立行政法人産業技術総合研究所、横浜国立大学、科学警察研究所

課題の概要

 諸外国で頻発し、わが国においてもその発生が懸念される爆薬によるテロに対処するため、不特定多数が集合する場所、空港、新幹線などで簡便に使用できる爆薬の超高感度検出装置と、検出した爆薬の処理装置を統合したポータブルシステムの開発を爆薬の学理に基づき達成することを目的とした。
 具体的には、イオントラップ付真空紫外光イオン化質量分析計とマルチターンTOF法を組み合わせたポータブル爆薬検出装置と、ミリ波およびパルス中性子を用いた非開披爆薬検出装置を開発し、10kg級の爆発物を安全に処理できる装置とこれらを組み合わせた統合システムを目指した。また、基盤技術として火薬類の起爆機構・不爆化・威力低減化に関わる技術開発を実施した。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている)

 真空紫外光イオン化質量分析(UVU―TOFMS)、中性子爆薬検出、ミリ波イメージングからなる爆発物検出を統合したシステムは、単独の方法では爆発物検知が難しい領域をカバーするもので、実用化を考慮した研究と評価できる。個々の爆発物検知技術の高感度化は達成しており、プロトタイプは開発されていると判断できる。今後、実用化に向けた継続的取組により、実証試験および改良等を進め、多段階に設置する要素技術の統合化がなされることを期待する。

<総合評価:B>

(2)個別評価

1.目標達成度

 UVU-TOFMSによる爆薬検出装置および小型の爆薬処理装置の開発は数値目標を達成していると判断される。しかしながら、ミリ波およびパルス中性子を用いた非開披爆薬検出装置は実用化に供するレベルとは言えず、3種の爆発物検出装置からなる統合システムについての見通しも十分でないことから、総合的に所期の目標をやや下回っていると判断される。夾雑物の影響も含め検証を行い、検知信号を警報化する速度・精度に関するさらなる研究開発を行うことが期待される。

2.情報発信

 アウトリーチ活動について、専門性の高い技術セミナーから、一般向けの公開爆発実験など幅広く行われている。国外誌等での原著論文も多く、口頭発表、特許出願も適切に行われ、また、社会へむけた情報発信だけでなく、委員会活動など公的な仕事を含めた社会貢献が認められる。

3.研究計画・実施体制

 研究項目毎にそれぞれの専門能力を有する研究機関が分担する実施体制は適切であり、個々の専門領域について成果を上げたことは評価できる。学理に基づいた設計、開発、実証実験が行われ各グループ間の連携も適切に行われている。しかしながら、システムの統合化に向けた研究計画に改善の余地があったものと考えられる。

4.実施期間終了後における取り組みの継続性・発展性

 真空紫外光イオン化質量分析法は爆発物ばかりでなく環境汚染化学物質の微量分析への展開も期待できる。また、爆発処理技術は実用に供する段階と判断できる。実用化には価格や分解能などの性能向上、実装環境における問題点と改良、システムそのものの社会的変化に対応した技術改良など各種の課題が見込まれるが、概ねプロジェクトの引き継ぎ、方向性も明確であり、今後の継続性・発展性が期待できる。

(3)評価結果

総合評価目標達成度情報発信研究計画・
実施体制
実施期間終了時に
おける取り組みの
継続性・発展性
Bcbbb

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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