4.活褶曲地帯における地震被害データアーカイブスの構築と社会基盤施設の防災対策への活用法の提案

(事後評価)

(実施期間:平成17~19年度)

代表機関:社団法人土木学会(代表者:小長井 一男)
参画機関:京都大学、中央大学、東京大学、早稲田大学、長岡技術科学大学

課題の概要

 2004年10月23日の中越地震の被災地では降雪、融雪の時期を経て、潜在的な課題が顕在化する一方で、多くの被害の痕跡が急速に失われつつある。今回の地震は、フォッサマグナ北縁部から東北日本を中心に存在する活褶曲地帯で起こりえる深刻な地震被害の一つの典型を示したものと捉えられる。そこで本研究では、その詳細な実態を科学的な分析を加えてデータベース化し、活褶曲地帯の地震被害に共通する教訓を反映した提案を盛り込んだ公開・共有の財産とすることを目的とし、以下の研究、調査活動を実施することを目指した。(1)データアーカイブスの設計と構築、アウトリーチ活動、(2)活褶曲地帯の地震動、(3)活褶曲地帯の地質・地盤災害、(4)活褶曲地域における社会基盤システムの地震防災性向上、(5)類似の被害事例の発掘と収集/潜在する課題への対応。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている)

 本研究では、短期間に地震被害の痕跡の多種多様な情報を収集し、工学的・理学的視点から詳細な研究を進め、データアーカイブスを構築した点は優れている。同種の地質条件下での地震が多発する我が国においては、ここで構築したデータアーカイブスは、関連自治体や、鉄道・電力・上下水道等の公共インフラ系企業者に極めて有用な情報を与えるものと高く評価できる。また、放置すれば散逸する危険性のある有用な知見を残す活動としての貢献も大きい。
  しかし、「防災対策への活用法の提案」については、具体的なメッセージがやや弱いと感じられる。斜面安定が被災地の復旧防災のキーポイントであり、莫大な資金も要する。それを効率的に行うための施工場所や工法について、本研究成果は一定の情報を与えることができるが、復旧の妥当性の評価等の情報も加え、本研究がさらに発展することを期待する。

<総合評価:B>  

(2)個別評価

1.目標達成度

 当初予定した調査・分析をほぼ完了している。中でも、震災後に適用した対策の多くについて、技術的に所期の効果が発揮されたことを地形変動を経時的に調査することによって確認した功績は大きい。また、データアーカイブスの構築については、地形データ、地盤データ、地震動、各課題の研究成果、地震被害と復旧に関する資料を集約しており、所期の目標を達成している。さらに、代表的な構造系形式に対して、耐震上、工夫すべき事項を検討していることも評価できる。しかし、研究タイトルに含まれる「防災対策への活用法の提案」については、ユーザの期待へ応えられる様にさらなる充実が望まれる。

2.情報発信

 構築したデータアーカイブスはWeb公開されており、原著論文の執筆を含めて、学術成果の公表は適正に行われている。また、一般向けのシンポジウムや専門家向けのシンポジウム等を開催しており、情報発信は適切に行われていると評価できる。

3.研究計画・実施体制

 土木学会を中心として、同種の地震災害を重ねて調査している組織で実施体制を組んでいる。また、コアとなる研究機関に加えて、国・自治体が協力できるように実施体制を築き,効率的かつ迅速な調査・解析が実施され、多分野のデータを収集して、有用なデータベース化が行われており、研究計画・実施体制は高く評価できる。

4.実施期間終了後における取り組みの継続性・発展性

 地震災害は今後も全国で発生しうる問題であるが、研究成果がデータアーカイブスとしてまとめられており、その活用が期待できる。また、学会主導で進められた研究であるから、担当者が変わっても、継続性・発展性の確保が期待できる。今後は、構築したデータアーカイブスの維持管理・拡充を図るとともに、特に実務者に対して、具体的にどのように社会基盤施設の防災対策に活用すべきかをわかりやすく情報提示することが望まれる。

(3)評価結果

総合評価目標達成度情報発信研究計画・
実施体制
実施期間終了時に
おける取り組みの
継続性・発展性
Bbbab

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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