1.衛星と地上通信網融合によるデジタルデバイドの解消

(事後評価)

(実施期間:平成17~19年度)

代表機関:株式会社インターネット総合研究所(代表者:正村 和由)
参画機関:
NEC東芝スペースシステム株式会社、独立行政法人情報通信研究機構、北海道東海大学、琉球大学、社団法人日本航空宇宙工業会、鳥取大学

課題の概要

 平成19年度の予測で220万世帯と推定される地上系のブロードバンドサービスインフラ未整備地域のデジタルデバイド解消に直接的に貢献する基盤の構築を目的とした。すなわち、離島等の物理的要因、過疎化に伴う経済的要因、災害時のインフラ崩壊により発生するデジタルデバイドを衛星回線と地上通信網との融合による超高速インターネットインフラの実現によって解消する。また、小型衛星端末を用いた電子カルテ及び高精細動画像のリアルタイム通信による遠隔医療・在宅介護・災害時医療の実証実験を通じ、一般家庭を対象とした衛星/地上通信網融合ネットワークの実現を目指した。

(1)総合評価(所期の計画以下の取組であるが、一部で当初計画と同等又はそれ以上の取組もみられる)

 衛星と地上ネットワークにおいてシームレスに通信を行なうという観点は高く評価でき、衛星系を利用した簡易な遠隔医療システムの実証実験や防災実験を地道に行い、遠隔地との実験試行によって衛星を活用できることを例証したことには意義がある。
 5年の研究期間が3年に短縮されたこと、WINDS衛星打ち上げ時期に多くの実証実験を依存する研究課題であったことから、この衛星の打ち上げが遅れたという外部要因が成果に大きく影響しているが、これらを考慮しても所期の目的を達成したとは言いがたく、費用対効果からも不十分な結果と判断される。具体的にはインターネット網と衛星通信のシームレスな接続において、基礎的なデータを収集しただけであり、最終的な問題解決には至っていない。同じように、WINDS衛星の打ち上げを待っていた他の組織との医療、ネットワークに関する情報交換も不十分に見える。
 また、運用コストの観点から、デジタルデバイド解消の根幹をなす点を解決できたとは評価できず、今回の研究では分析と導入可能な手法の提示においても踏み込みが不十分であった。

<総合評価:C>

(2)個別評価

1.目標達成度

 要素技術では目標が達成されているが、ミッションステートメントに示された項目に関しては目標達成度が不十分である。デジタルデバイドの解消に向けた研究実施に係る本研究の新規性について、例えば、デジタルデバイドの原因となる衛星リンク固有の問題(大きな伝搬遅延、降雨減衰による伝送損失)に対する対策技術に関しては、JSATなどの通信衛星の設計者には既知の点が多く、新たな研究成果があまり見当たらないなど、デジタルデバイドの解消に直接貢献するものとは判断できない。

2.情報発信

 本課題に関する技術領域の関係者には適切に情報が発信されていると思われる。また、地域で行なわれた防災訓練等と結びつけ、実証実験の評価を行ったことは評価できる。しかし、基本的な測定諸量等については情報発信が十分であったか疑問が残る。
 デジタルデバイドの解消という課題であるから、想定ユーザを明確にした情報発信とそのユーザの評価が必要である。ユーザ側の評価については報告がほとんど無く、本研究の摘要先が一部の大規模施設での運用に留まっている。今後はユーザ側の要望も検討して本研究の成果の活用が進展することを望む。

3.研究計画・実施体制

 実施体制には衛星関係の有力な研究機関として情報通信研究機構(NICT)が含まれているが、あくまで部分的なサポートである。事業推進主体であるインターネット総研はコーディネーターとしての役割が主であり、推進主体のこのリーダシップが十分発揮されたとは言い難い。また、遠隔医療などの利用実験におけるデジタルデバイドの解消につながる様な社会的成果については、もっと体系的な取りまとめが可能となる組織体制を構築すべきであった。さらに、プロジェクトの推進においては、サブテーマ間の連携・関係が弱く、サブテーマ1の結果を活用した形でサブテーマ2の実証が行なわれていないなど、実証実験での問題点の摘出が十分なされていないと判断された。

4.実施期間終了後における取り組みの継続性・発展性

 WINDS衛星打ち上げが成功したため、今後の実証実験や展望に期待できる状況になってきているが、具体的に今後に活動が続くエビデンスが十分示されていない。また、ユーザオリエントな立場に立てば、コストパーフォーマンスの高さを明示しなければ発展は期待できない。これらのことから、継続性・発展性はやや期待できないと判断された。遠隔医療についてはコスト評価をおり込んだ取組みと、法整備の状況も視野に入れながら、新しい展開に繋がる実証実験が実施されることを期待する。

(3)評価結果

総合評価目標達成度情報発信研究計画・
実施体制
実施期間終了時に
おける取り組みの
継続性・発展性
Ccbcc

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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