1.日中・中日言語処理技術の開発研究

(中間評価)

(実施期間:平成18~22年度)

代表機関:独立行政法人情報通信研究機構(代表者:井佐原 均)
参画機関:京都大学、東京大学、静岡大学、独立行政法人科学技術振興機構

課題の概要

 アジア諸国内で流通している科学技術情報の日本国内での活用を容易にし、かつ、我が国が最先端を担う科学技術分野の文献情報の各国への流通を促進することにより、アジア諸国と日本の科学技術の発展に資することを目的とする。
 本研究では、言語の構造をより深く利用した汎用的な用例翻訳手法および科学技術文献の翻訳・情報検索用辞書を対訳コーパス(対訳例文)から半自動作成する手法の確立、特に、アジア諸国の言語のうち中国語に焦点をあて、大規模な言語資源(日中対訳コーパス、日中・中日辞書)を構築し、その言語資源を用いた機械翻訳プロトタイプシステムの開発を目指す。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている)

 計画は順調に進んでおり、所期の計画の目標が達成できると思われ、全般として良好であると判断される。特に、人間に意味のある尺度での翻訳率80%の数値目標を掲げていることは評価できる。着実なマイルストーンを設定し、密接な機関連携を行って、科学技術論文の日中翻訳システムの実用化を目指している取組である。辞書半自動構築システムなどの具体的に使えるシステムが構築できており、各種コーパスを用いた評価や既に開発の日・英翻訳システムの分析もなされている。また、解析・翻訳エンジンの開発などで成果を上げBLEU評価、主観評価も改善された結果が得られており、研究は順調に進行している。今後は、他の研究(あるいは他言語を対象とした研究)と比較しながら研究を進めるとともに、日中・中日言語処理の困難な課題の提示を行い、実用性を評価量とすることも検討していただきたい。また、「科学技術の発展に資する」という点に対して、このシステムがどの程度貢献できるか明確にして頂きたい。

<総合評価:B>

(2)今後の進め方(計画をさらに発展させるべきである)

 科学技術振興機構(JST)だけでなく国立情報学研究所(NII)の論文誌データベースへの展開も検討し、広く世の中に使われる様に公開されることが望まれる。今後は、実利用における問題解決とも並行して研究を推進し、他のアジア言語への取り組みなどへの展開も検討していただきたい。また、日中・中日言語処理において現状の中国語解析精度は73%とのことであるが、新たな解決を必要とする根拠を明確にし、目標の80%をさらに日英(90%)に接近させる可能性の有無、英語を中間言語に用いた辞書作成と人工中間言語を用いる場合との比較・検討をしていただきたい。

<今後の進め方:A>

(3)個別評価

1.進捗状況(目標達成度)

 中間段階の目標は達成され、計画は妥当であると判断される。また、サブテーマの進捗と成果は十分と判断される。今後の辞書の充実、その評価の向上も期待できる。また、具体的な半自動辞書構築システムに対しては適切な評価基準が定義されており、定量的な性能解析が行われ、評価の自動化への発展ができていることも評価できる。

2.研究成果

 原著論文は量的に十分であり、学術評価的にも十分なものがある。辞書と翻訳エンジンの組み合わせ、日英・英中・中日対訳辞書において、英語を中間言語としたアプローチの実現容易性など計画通り成果を上げている。ただし、対外発表を全く行っていないサブテーマがあり、今後の改善が望まれる。

3.研究計画・実施体制

 現状では役割分担も明確でありバランスよく組まれ、各サブテーマはうまく連携しており、機関の専門性を活かした成果を上げている。アカデミックな研究体制に問題はないが、今後、計算量や翻訳率・誤訳率などの実用性を評価する組織、人材を取り入れることが望まれる。

(4)評価結果

総合評価今後の進め方進捗状況
(目標達成度)
研究成果研究計画・
実施体制
BAbbb

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

-- 登録:平成21年以前 --