12.マーモセットによる人免疫疾患モデルの開発

(事後評価)

(実施期間:平成17~19年度)

代表機関:東海大学(代表者:垣生 園子)
共同研究機関:オリエンタル酵母工業株式会社、日本クレア株式会社

課題の概要

 ヒト免疫疾患モデル動物作製の基盤技術を確立するため、ヒトと同じ真猿類に属するコモンマーモセットを対象とし、アレルギー反応現象や日和見感染等のモデル開発と解析を目指した。このため以下の検討項目を計画した。(1)抗体作製:マーモセット免疫系に特異的に発現するcDNAを単離し、これに基づき免疫細胞及びその機能分子識別の抗体を細胞工学的手法で作製する。(2)免疫系反応の解析手法の確立:上記作製抗体に基づいて、アレルゲンを含む抗原で免疫したマーモセットの免疫反応を、個体、細胞および分子レベルで解析する。(3)遺伝子改変動物作製の開発:確立したES細胞に遺伝子操作を加え、疾患モデル開発に資する。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取組が行われている)

 創薬において複数の動物疾患モデルの利用が必要であり、霊長類モデルが得られればとりわけ有効と考えられるが、霊長類モデルを得ることは容易ではない。この意味においてマーモセットによるヒト免疫疾患モデルの開発研究は意義が高く、本プロジェクトに対する期待は大きい。ヒトの疾患モデルとして、マウスなどの齧歯類からマーモセットへと展開しようとする傾向にいち早く着眼し、マーモセットの免疫関連遺伝子のcDNA単離、特異抗体の作製などの成果を上げ、世界初の遺伝子導入マーモセット個体を樹立したことは高く評価できる。しかしながら、公開された原著論文数は少なく、実際に広くこの系が活用されるためには、まだ超えなければならないハードルも多く残されている。また、産学官共同研究の観点からは共同研究企業との役割分担に疑問が残る。これらを総合すると、所期の計画と同等の取組が行われていると評価できる。

<総合評価:B>

(2)個別評価

1.目標達成度

 マーモセット免疫系に特異的に発現する多数のcDNAを単離し、これを用いて免疫細胞及びその機能分子識別抗体を、細胞工学的手法にて作製した。ヒト免疫疾患モデルとしてのマーモセット開発に向けて、その基盤研究に資する成果が得られたものと評価できる。チャレンジングな課題であり、この研究の中で世界最初の遺伝子導入マーモセットを誕生させた意義は特筆される。しかしながら、当初のES細胞に遺伝子操作を加えて疾患モデルを作製する計画については検討途上にあり、アレルギー様症状疾患モデルの誘導と解析についても、得られたデータがまだ少なく、共に今後の進展に期待が持たれるところである。これらを総合して、目標達成度として所期の目標に達していると判断された。

2.研究成果

 遺伝子導入マーモセットの作出は大いに評価でき、計画通りの成果が得られている。また、単離し配列を決定した多数のcDNAについてNCBIに登録された点も評価される。しかし、原著論文数が少なく、強力な免疫研究グループが研究を推し進めた成果としては、さらに高いものを期待したい。またマーモセット解析系を利用するための基盤研究として、その成果の利用に向けての情報発信が重要であるが、論文等が少ないこともあり、社会還元や他の研究への貢献に向けて、さらなる情報発信への努力が期待された。本分野は重要であり、その成果は広く求められているものであるため、今後の継続的展開が切に望まれる。

3.研究計画・実施体制

 本研究において、マーモセットの提供などにおける企業貢献は認められたが、遺伝子改変マーモセットの作製に時間を要したこと、また得られた抗体の利用や実用化に向けた検討が行われなかったこと、などの経過より、本研究展開における共同研究企業の役割や貢献が明瞭に示されなかった。産学官共同研究プロジェクトとして、特に応用研究への展開に向けて、産業界の関与の仕方に工夫が望まれるところである。

(3)評価結果

総合評価目標達成度研究成果研究計画・実施体制
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お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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