10.新規な放射線治療増感剤SQAGの開発

(事後評価)

(実施期間:平成17~19年度)

代表機関:東京理科大学(代表者:坂口 謙吾)
共同研究機関:株式会社東洋水産

課題の概要

 新規な放射線治療増感剤の開発を目指して、ウニ中腸腺を由来とする抗腫瘍活性物質スルホピラノシルアシルグリセロール(SQAG:Sulfo-Quinovosyl-Acyl-Glycerol)およびその類縁体について、悪性腫瘍に対する単剤治療効果、放射線と併用した場合の増感治療効果、化学構造の最適化、治療プロトコールの確立、並びにゲノム科学的手法を用いた作用メカニズムの解明を、共同研究により行った。活性が強く且つ展開に好適な誘導体について、その大量合成を検討し、詳細な動物実験を通して、最終的な治療プロトコールの確立に向け情報を蓄積した。

(1)総合評価(所期の計画と同等の取り組みが行われている)

 放射線治療増感剤開発に向けて、SQAG誘導体で増感効果を実証した意義は高い。従来の研究では治療効果を重視し、副作用軽減に十分な配慮が払われない傾向が認められるが、本研究において、実用上副作用の認められないレベルまで照射線量を低下させることが可能な、低副作用を実現し得る新規増感剤の開発研究が実施されており、この点が評価される。また、企業設立により事業化に積極的である点も評価された。
 増感剤としての基礎研究においても、構造と癌抑制効果との関係、またその機序解明に向けた分子的な解析が進み、多くの知見が得られており、特許申請も行われている。
 一方、開発に向けた前臨床試験への取り組みが不充分な結果に終わった点は、産学官共同研究プログラム課題として残念であり、今後、臨床応用に必要な放射線との併用のタイミング検討などを含めて、適切な治療プロトコールの早期確立が望まれる。
 新たな腫瘍イメージングなど画像診断領域への展開も期待でき、発展性という点でもユニークな化合物を開発するなど独創性の高い研究である。早期に臨床応用を実現し、医薬品として成果が発信されることの期待を含め、総合的に、所期の計画と同等の取り組みが行われていると評価された。

<総合評価:B>

(2)個別評価

1.目標達成度

 増感剤としての評価検討、SQAG構造の最適化、癌抑制メカニズムの解明、放射線併用プロトコールの開発、毒性試験実施、薬物動態の解析などが実施され、本研究は所期の目標にほぼ達していると考えられる。基礎研究においても高いレベルの検討がなされ、多くの知見が得られている。
 なお開発面では、得られた研究成果と実際の臨床応用との間にまだ距離があり、今後、さらなる取り組みが求められる。

2.研究成果

 SQAG構造最適化などの開発研究において成果が認められた。またその作用機序解明に向けた血管新生阻害分子メカニズム検討などの基礎研究においても成果が認められた。論文発表、特許申請も行われており、所期の計画と同等の成果が得られていると評価された。
 今後、放射線との相乗効果メカニズム、血管新生抑制と腫瘍内酸素濃度の関連など、臨床応用を考える上で明らかにすべき項目について、さらに検討を進められたい。
 なお、将来的に製薬企業によるグローバル治験の可能性なども考えられる内容であり、国外特許申請なども戦略上検討されたい。

3.研究計画・実施体制

 各研究機関の連携は十分なされており、大学発ベンチャーの設立なども行われている。前臨床試験実施に向けて、当該の産学連携組織により研究を継続するとの姿勢が示されていること、そしてそのための体制作りが考えられている点が評価される。臨床応用に向けて、今後、産業界とのより強い連携が望まれるところであり、さらなる体制検討を望みたい。

(3)評価結果

総合評価目標達成度研究成果研究計画・実施体制
Bbbb

お問合せ先

科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当)

(科学技術・学術政策局科学技術・学術戦略官付(推進調整担当))

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