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地域科学技術振興施策
長野・上田地域知的クラスター創成事業で事業化見通し成果 第18号 CNT樹脂複合材による超精密部品の開発
長野・上田地域知的クラスター創成事業
2007年2月26日
株式会社 ミスズ工業
代表取締役社長
山崎 泰三
国立大学法人信州大学
工学部長
山沢 清人
財団法人長野県テクノ財団
理事長
萩本 博幸
(長野・上田地域知的クラスター本部長)
○
はじめに
株式会社ミスズ工業(本社:長野県諏訪市、社長:山崎泰三)は、信州大学工学部(長野市)遠藤守信 教授のナノカーボン材料研究を基盤として、文部科学省の知的クラスター創成事業(注1)に取り組んでいる。その研究において、信州大学工学部(遠藤守信 教授、杉本公一 教授、宋 星武 助手)との共同開発で、CNT樹脂複合材を使用することにより、非常に高精度の部品を、射出成形で製造を可能にした。これは、本クラスター創成事業における第18号の事業化見通し成果に当たる。
具体的には本クラスターの活動によって蓄積された高品質なコンポジット混練技術、成形技術などの知見を活用した成形作業で、CNT含有樹脂複合材の成形安定性、成形物の剛性の高さ、対磨耗性のよさなどを改めて確認し、それらの諸物性が要求される部品への展開を図ったものである。
今回の研究では、特に小型のカムを、カーボンナノ材料およびガラスビーズを混練した樹脂で射出成形行い、その寸法精度、摺動性能を、従来材料や、単純なガラスビーズ添加材料等と比較したが、成形品単体において、高い寸法精度と、摺動に対する好条件(高硬度、低摩擦係数)を得ることが確認された。
○
CNT樹脂複合材による超精密部品の開発
技術開発の背景
小型化・軽量化が進む精密機器では、構成する機能部品も、複合化による省スペースを図る、材質そのものを軽量化する等の観点から、樹脂化されることが多くなってきている。そんな中で、ギアやカムなどの機能部品においては、その精度が、製品全体の精度を規定してしまうことも多々あり、部品上でも、非常に高い精度が要求されている。このため、何回もの成形実験を繰り返し、金型形状の補正と、最適成形条件の特定により、要求される寸法精度を満たすことを試みるのだが、摺動を伴うギア、カム等の部品は、ポリアセタールなどの潤滑性に富んだ樹脂を使う必要があり、これらの樹脂は、成形収縮率が比較的大きく、その収縮のばらつきも大きいために、一度は要求寸法精度が得られたとしても、恒久的に寸法精度が得られるとは限らない。
このような状況から、これら部品については、射出成形のみで要求寸法を得ることは難しいと判断され、成形品に2次加工を行うことや、成形品の分別を行うことで、要求寸法を確保したり、製品として組立後、別機能を使って精度補正を行ったりするなどの対応で、最終製品の機能を確保しているのが現状である。しかし、これらにかかる費用や、別機能のための部品は、本来射出成形のみで要求寸法が得られれば、全く必要ないものであり、無駄であるといえる。そこで射出成形のみで、寸法やその他の要求事項が満足される樹脂の開発は、今後の精密機器製造の中で、大きな課題となっていた。
技術開発の内容
以上の背景を踏まえ、本研究では、成形樹脂にVGCFを添加することで期待される性質のうち、成形時の冷却が均一になることから得られる寸法安定、VGCFの性質から得られる硬度の上昇、摩擦係数の低下に着目し、VGCFの複合材を使用することにより、射出成形のみで要求寸法が得られるのではないかと考えた。そこで、ターゲットとして、超小型精密機器に組み込まれるカムを選択し、実験を行った。
カムの現状品は、材料として、ポリアセタール含油タイプを使用。ただし射出成形のみでは寸法が確保できないため、後加工により寸法を出している。今回はこの部品との比較になるので、基材樹脂はポリアセタールのノーマルとし、信州大学杉本教授、宋助手らの研究成果と混練作業により混練樹脂を準備いただいた。また評価は部品単体での寸法評価とし、一連の成形における寸法ばらつきの度合いと、日時を変えて成形したときの再現性についての評価を行った。
当初は単純に、ポリアセタールとVGCFのみの複合材で実験を行ったが、5重量パーセント~30重量パーセントのVGCF比率を変えた実験で、VGCFの含有量が、多いほうが有利であるということは漠然と理解できたものの、30重量パーセントの含有率でも、まだ希望の結果が得られず、これ以上の含有量では混練が難しく、樹脂として成立しない可能性が高いことから、VGCF単独での複合材については断念し、その変わりに、樹脂、ガラスビーズ、VGCFの3種で複合材を作成することとした。
ガラスの添加については、以前より検討されていたが、ガラス添加だけでは期待する寸法の安定は得られないことと、摩擦係数が著しく上昇することから断念されていた。今回VGCFを加えることにより、相乗効果が期待できることと、ガラス添加で上昇する摩擦係数に対し、VGCFが表面に析出することで、摩擦を低下できるのではないかと考えた。ただし、ガラスについては、できるだけ摩擦係数を上昇させないように、ガラスビーズを使用し、VGCFとの均一拡散を図るために、ガラスビーズ径もVGCFにあわせて数μm(マイクロメートル)に揃えたものを使用した。
結果としては現状品が
6μm(マイクロメートル)程度のばらつきがあるのに対し、ガラス20重量パーセント、VGCF5重量パーセントのポリアセタールとの複合材では、ばらつきは
2μm(マイクロメートル)程度に抑えられており、この部品の単体精度としては、十分要求を満たしている。また、日時を変えて同一条件で成形したときにも、ガラス20重量パーセント
VGCF5重量パーセント
ポリアセタール複合材は高い再現性を示しており、安定性も問題がない。
一方、摩擦係数、硬度、強度(ヤング率)の測定結果を見てみると、まず摩擦係数は、ガラスとポリアセタールの複合材や、ガラス30重量パーセント
VGCF5重量パーセント
ポリアセタール複合材等が、軒並み摩擦係数が上昇している中で、ガラス20重量パーセント
VGCF5重量パーセント
ポリアセタール複合材は、現状品とほぼ同等の摩擦係数を示している。また硬度、強度においては、ガラス20重量パーセント
VGCF5重量パーセント
ポリアセタール複合材は、ガラス30重量パーセント品よりは劣るものの、現状品よりははるかに高い値を示しており、十分な値であるといえる。
結論的には、今回の実験で、ガラス20重量パーセント
VGCF5重量パーセント
ポリアセタール複合材は、現状品と比較して、寸法面からも物性面からも優れた値を示し、またその絶対値から見て、後加工なし、調整なしにできる可能性もあり、現状品への置き換えに関しては十分な効果が期待できる。
○
期待される効果と今後の展開
今回ターゲットにしたカムは、動物実験用薬液注入ポンプの部品のひとつであり、ポンプの流量を一定に保ったり、個体による流量差を無くしたりするためには、カムの精度向上が不可欠である。現状はそこまでの精度が出せないので、射出成形品を後加工したうえ、個体差を無くすために、完成後流量調整をする仕様になっている。今回の複合材の使用により、後加工も、調整も省略できるとすれば、その費用効果は大きなものがあり、現事業の更なる飛躍も期待できる。
また、今回のカムのみではなく、他にもこのような部品はあり、その展開も十分可能であるが、さらに現状は精度が必要なため、金属部品でなければならないと思われている部品を、この複合材で置き換えることも可能となる。実際にそれが可能となると、部品のさらなる軽量化や、複合化が促進されることになり、省エネルギー、省スペースの観点からも貢献できることは確実である。
今後においては、今回の実験データをさらに蓄積し、最適な条件を策定していくことを考えていきたい。特に今回、ガラスが20重量パーセントのものは良かったのに、ガラスが30重量パーセントになった場合は、それ程良い結果になっていないという事実があり、この点については理論的に解析し、その上で混合比の最適条件を見極めていきたい。またそれに平行して、実際に使用するのに必要な試験、特に耐久試験を進め、実際の置き換えに対して万全のデータを準備したい。
-知的クラスター創成事業(注1)-
特定の技術領域に特化し、地域の知的創造の拠点たる大学・公的研究機関等を核とし、関連研究機関・研究開発型企業等が集積する国際的に競争力ある技術革新のための「知的クラスター」を創成させる。事業期間は5年間、予算規模は1地域当たり年間5億円程度。当該地域における連鎖的な技術革新とこれに伴う新産業創出が起こるシステム形成を目指す。
-VGCF-
多層カーボンナノチューブの一種。信州大学発の夢の炭素繊維として注目され、学界・産業界が精力的に特性解析・用途開発を行った結果、世界でも“ENDO FIBERs”として認知され、現在リチウムイオン電池の殆どに添加物として採用されている。当長野・上田地域知的クラスターの主要課題として、その多方面に渡る用途開拓を研究開発している。
VGCFは気相成長法により製造され、数少ない量産ベースのカーボンナノチューブ(CNT)として、今後、他電池への展開や各種複合材への添加が期待されている。なお、VGCFは数あるCNTの中では太いものに属する。
添付資料
(1)今回作成したコンポジット材での寸法ばらつき
(2)現状品の寸法ばらつき
(3)摩擦係数測定結果
A:
POM
GB20重量パーセント
VGCF5重量パーセント
B:
POM
GB30重量パーセント
VGCF5重量パーセント
C:
POM
GB20重量パーセント
D:
POM
GB30重量パーセント
E:
POM
VGCF5重量パーセント
F:
ジュラコンOL-10(現状品)
(以下硬度、強度も同様)
(4)硬度(ロックウェル硬さ)測定結果
(5)強度(ヤング率)測定結果
(6)POM
GB20重量パーセント
VGCF5重量パーセント破断面SEM画像
*
この件に関するお問い合わせは、下記までお願い致します。
〒392-0012 長野県諏訪市四賀3090
株式会社ミスズ工業
開発設計部 部長 森 敏夫
開発設計部製品設計G 課長 花岡 正樹
電話:
0266-52-6611
FAX:
0266-52-8810
E-mail
:
mori-toshio@miszu.co.jp
hanaoka-masaki@miszu.co.jp
URL:
http://www.miszu.co.jp
〒380-0928 長野県長野市若里1-18-1(工業技術総合センター3階)
財団法人長野県テクノ財団 知的クラスター本部
科学技術コーディネータ 森本 信吾
電話:
026-226-8101
FAX:
026-226-8838
E-mail
:
s-morimoto@tech.or.jp
URL:
http://www.tech.or.jp
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