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地域科学技術振興施策

安心・安全に直結する画期的な車載用眠気検出装置を開発。営業用大型トラックに搭載し走行実験を開始




平成18年11月6日
財団法人浜松地域テクノポリス推進機構 知的クラスター本部
静岡大学工学部

ポイント】
1 「瞳孔マウス」で培った瞳孔検出技術を車載用に発展させた。運転中の振動や照度変化に対応できるように改良を施し、覚醒度等が低下する夜間において特に威力を発揮する。
2 瞳孔検出の有無を検出することで、目の開閉状況が分かるため、居眠り検出へ対応する予定。また、視線の停止、視線方向検出への対応により、漫然運転やよそ見運転を含む不注意運転に対する警告等への発展が期待できる。
3 これまでテストコースにおける実験実施が一般的であったのに対し、安全性を十分考慮した上で、実際に積荷を搭載した営業用大型トラックに試作機を設置。一般道や高速道路の走行実験を開始。

本研究の経緯】
 静岡大学工学部 海老澤嘉伸(えびさわ よしのぶ)教授のグループは、浜松地域知的クラスター創成事業の研究テーマ「車載用高機能イメージセンサ開発」の研究過程の中で、平成16年度に、顔に近赤外光を照射して人間の目の瞳孔の位置を検出し、頭部を回転させることでパソコンのディスプレイ上のカーソルを高精度に動かす装置「瞳孔マウス」を開発した。この瞳孔マウスで培った瞳孔検出技術を利用して、静岡大学工学部が中心となり、産学官共同研究の成果として、共同研究企業である、矢崎計器株式会社、株式会社日立物流、株式会社日立製作所 生産技術研究所とともに、安心・安全に直結する他に例を見ない車載用眠気検出装置の研究開発に取り組み、この度、装置の開発に成功した。
 居眠り運転等により大型トラックが事故を起こせば、周囲をも巻き込んで、一瞬にして多大な犠牲等につながり、これらは現実的に大きな社会問題になっている。
 当試作機は、海老澤嘉伸 教授のグループの技術を元に、ドライブレコーダーやデジタルタコグラフなど、業務用車両向け車載機器等を多数開発・製造し高い信頼と実績を得ている近隣地域企業(静岡県島田市)の矢崎計器株式会社が製作した。そして、企業向けに物流サービスを提供し、より信頼性の高いトラック輸送の実現を目指す株式会社日立物流が、当試作機を同社トラックに搭載し、株式会社日立製作所 生産技術研究所とともに検証実験(走行テスト)を行った。
 この度、装置の小型化と安全性を十分に考慮し、積荷を搭載した長距離運送中の大型10トントラックに試作機を設置し、本格的な検証実験を開始した。テストコースでこの種の装置を搭載した実験はこれまでも行ってきたが、早期事業化を目指し、あらゆる状況下で性能評価等を行うべく、営業車として運送中のトラックに装置を搭載して実験を行っている。

本技術の背景】
 目の瞳孔は角膜というレンズのため、光源により顔に照射された光は瞳孔を通り、網膜を反射し、光源の方向に集中的に戻る性質がある。したがって、カメラレンズに近接した光源から光を照射すれば、戻った光の一部はカメラに入り、瞳孔は明るく光る。逆にカメラレンズから離れた光源から光を照射すると、瞳孔は暗く写る。これら2つの光源を交互に点灯させ、明瞳孔画像と暗瞳孔画像を交互に得て、それらを差分すると、瞳孔以外の部分が相殺しあい、瞳孔のみが浮き彫りになる。このように瞳孔検出を容易にして瞳孔座標と瞳孔の有無を正確に検出し、パソコンのカーソル移動とマウスのボタンの押下状態に対応させたのが「瞳孔マウス」である。瞳孔マウスは室内のみで使用することを前提としていたが、車載機器として使用する場合は、周囲の明るさ環境が大きく変化するため、特に太陽光に打ち勝つための工夫が必要であった。これらの課題を解決するため、光源である近赤外線LEDは連続的に強い電流を流すと壊れてしまうが、カメラのシャッタースピードを短くして、シャッターの開いている瞬間だけLEDを点灯させることにより、さらに大きな電流を流し、太陽光に対するLEDによる光量を相対的に強くした。これまでの予備走行実験により、西日で顔面照度が数万ルクスに達する場合でも、瞳孔検出が可能であることが明らかになっている。また、瞳孔検出のための画像処理についても改善し、斜め前方から差し込む太陽光やサンバイザーの使用により、ドライバーの顔画像に強い明暗差ができた場合や、振動がある場合にも瞳孔検出ができるように対策をとった。
 瞳孔は目を閉じることで非検出となるため、目の開閉が判断できる。そのため、当面は数秒間にわたって両瞳孔ともに検出できなかったときに居眠りをしていると判断をすることにより居眠り検出をできるようにする予定である。さらに、瞬きの占める時間の割合が長くなった場合には覚醒度等が低下していると判断したり、視線方向検出を実現したりすることにより漫然運転等も検出できるようになると考えられる。
 図2は、初めて長距離走行実験(栃木~京都)を行ったときの、夜間走行中の前方画像(右下)、眠気検出装置のカメラ画像(左上)、画像解析画像(右上)の1シーンである。

 これまで、他機関等においては、まぶたの開閉を画像処理により検出するタイプの眠気検出用装置を用いた実験等が行われているが、これらはドライビングシミュレータやテストコース等での実験は行われているものの、今回のように、一般道路や高速道路等を走行中の大型トラック等に実際に眠気検出用装置を搭載するような実験までには至っていない。

本研究の特徴】
 今回開発した眠気検出装置は、顔の中でも特殊な光学系を有する瞳孔をロバストに検出する。画像差分を行って背景を相殺してから瞳孔を検出するため、周囲の光環境変化に強いことが特徴である。特に、眠気を生じやすい夜間は瞳孔が大きく、瞳孔検出はより正確になり、夕刻から夜間の実験結果では、瞬きが起こっている時間を除外して片方の瞳孔だけでも検出できているという条件の中で、約95パーセントもの高確度の瞳孔検出率を得ている。

応用の可能性】
 今回開発した眠気検出装置では、瞳孔以外にも鼻孔や光源の角膜反射像が容易に検出できる。これらの技術を発展させることで、視線検出やわき見運転検出等への応用可能性が広がる。まずはトラックやバス等、業務用大型車両への搭載を目指していく。なお、将来的には自動車すべてを対象として様々な展開を図っていきたい。


本研究の共同研究企業》
矢崎計器株式会社、株式会社日立物流、株式会社日立製作所 生産技術研究所


なお、今回発表した「車載用眠気検出装置」は、11月14日(火曜日)にオークラアクトシティホテル浜松で開催される「オプトロニクスはままつ産学官連携フォーラム2006」に出展するとともに、12月6日(水曜日)から8日(金曜日)にパシフィコ横浜において開催される世界最大規模の画像関連技術・機器展示会「’06国際画像機器展」に出展を予定しています。

写真1 眠気検出装置ヘッダー部

写真2 眠気検出装置の取付状況

図1 高速道路トンネル内走行中の瞳孔検出状態

写真3 眠気検出装置を設置した10トントラック

図2 一般道路走行中の瞳孔検出状態

【本件に関する問合先】
財団法人浜松地域テクノポリス推進機構
知的クラスター本部 電話053-431-0008
静岡大学工学部
教授 海老澤 嘉伸 電話053-478-1244


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