「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」(第14回)議事要旨


1. 日   時: 平成16年1月20日(火)16:00〜19:00
2. 場   所: 社会技術研究システム・第1会議室
3. 出席者:
(委   員) 中島尚正座長、井上孝太郎委員、吉川肇子委員、高取健彦委員、竹内勤委員、柘植綾夫委員、堀井秀之委員、村山裕三委員
(講   師) 臼井律郎   国境なき医師団日本副会長
札野順   金沢工業大学教授
関根和喜   横浜国立大学教授
(事務局) 有本科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、河村政策課長、川端計画官、倉持基盤政策課長、土橋調査調整課長、内丸計画官付企画官

4. 議   題
(1) 各分野の現状と課題について
(2) その他

5. 議事概要
(1) 各分野の現状と課題について
a. 感染症におけるNGO活動について
   感染症におけるNGO活動について、国境なき医師団日本   臼井副会長からご講演いただいた。主な講演内容は以下のとおり。
【内容】
   ・ 世界各地で、様々な感染症が発生している。移動手段等の発達により、感染症は海を越え広がる時代となっている。日本は四方を海に囲まれた国だが、いつまでも例外ではいられない。
多くの感染症や病気において、薬剤耐性等のレベルに応じた治療法や使用する薬に関するナショナルプロトコルが決まっている。国によっては、一度決めた治療法や薬に関し変更するのが難しく、NGOの活動だけでは感染症や病気の治療が困難な場合もある。
NGOは、全体を見渡し、国家やWHO・赤十字等の国際機関による対策が十分に行われていないことを、迅速に行うことができる。また、実際に現地で見たことを報告し、今何が必要なのかを社会に訴えることも行っている。
   委員からの主意見は以下のとおり。
【委員】
   ・ 感染症に対しては、発生した地域に薬を届け治療すること及びその地域において人材を育成し教育制度を整備し国の基盤整備を行うことの両面からの対策が必要である。
日本の医学生のボランティアに対するモチベーションは高いが、それを生かすキャリアパスがないのが問題である。

b. 技術者倫理について
   技術者倫理について、金沢工業大学   札野教授からご講演いただいた。主な講演内容は以下のとおり。
【内容】
   ・ 科学技術が人類社会に大きな影響を与える時代になった。その中で個人、特に科学技術の専門家の意思決定が、社会に非常に大きな影響力を与える可能性を持つ時代になった。
技術者倫理とは、人類の利益(=価値)のために自然の力を経済的に活用する上で必要な行為の善悪、正不正や、その他の関連する価値に対する判断を下すための規範体系の総体である。
技術者には、技術的あるいは科学的な価値だけを考えるのではなく、それ以外の社会的、経済的、宗教的な価値を考慮しながら、最適なバランスを作り出す能力が求められている。
   委員からの主意見は以下のとおり。
【委員】
   ・ 一般的な倫理と、技術者倫理は分けて考える必要がある。
一般的な倫理は、家庭教育から初等・中等教育、高等教育の中で教育していくことが必要である。一方技術者に関しては、技術者として行動を起こす際や、何かを設計・運用する際に、どのようなことに注意しなければいけないかのノウハウを徹底的に教える必要がある。

c. 安全技術者教育について
   安全技術者教育について、横浜国立大学   関根教授からご講演いただいた。主な講演内容は以下のとおり。
【内容】
   ・ 安全技術者の養成には、社会人技術者の再教育(リカレント教育)が非常に効率的である。
社会を重視するような安全技術者教育は、従来の工学だけでなく、人文科学や社会科学等の広い学問分野をカバーする教育が必要になる。
今後、リスク概念の国民的普及や、リスクコミュニケータ等のリスクマネジメントに関わる専門的な技術者の養成が必要となってくる。
大学においては、社会とのつながりを重視した物の考え方を養うことを目的とし、リスクコミュニケーション等をキーワードにした教育体制を組まなければならない。
   委員からの主な意見は以下のとおり。
【委員】
   ・ 日本では、安全に対する国民のコンセンサス作りが非常に難しい。したがって、一般人向けのリスクや安全に対する教育が必要ではないか。
技術者教育において、ディスクロージャーの仕方や、コミュニケーションの取り方等を教える必要がある。

(2) その他
次回開催は、2月6日(金)15時〜18時を予定。


(科学技術・学術政策局  計画官付)

-- 登録:平成21年以前 --