「安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会」(第9回)議事要旨

1. 日   時: 平成15年   10月20日(月)10:00〜13:00
2. 場   所: 社会技術研究システム・第1会議室
3. 出席者:
(委   員) 中島尚正座長、井上孝太郎委員、大野浩之委員、吉川肇子委員、たか取健彦委員、竹内勤委員、柘植綾夫委員、堀井秀之委員、御厨貴委員
(講   師) 千葉和義お茶の水女子大学助教授
(事務局) 林科学技術・学術政策局長、井上科学技術・学術政策局次長、 川端計画官、土橋調査調整課長、吉村国際交流官付研究交流官

4. 議   題
(1) 各分野における現状と課題について
(2) その他

5. 議事概要
(1) 各分野における現状と課題について
a. 安全・安心と教育について
     安全・安心と教育について、理科教育が果たす役割を中心に、お茶の水女子大学ライフワールド・ウオッチセンターにおける取組みについて、千葉和義お茶の水女子大学助教授からご講演いただいた。
   主な講演内容は以下のとおり。
ライフワールド・ウオッチセンターの対象は、1「安全性」調査・研究2ハザード試験・リスク評価試験3科学教育・環境教育プログラムの開発。
安心を得るためには、安全というものを定義づけて学び、自分の中に確立する必要がある。
初等・中等教育において、理科教育に安全の視点を組み込むことにより、安全を理解できるような人材を育てていくことが、今後重要となってくるのではないか。
科学教育・環境教育プログラムの開発への取組みとして、遺伝子組換えに関し、簡単に理解できるような教材を作成し、実際に安全・安心の教育にこの教材が役立てられるかを検討。なお教材には、本実験に用いる大腸菌が安全であるという記載はあるが、「遺伝子組換え」に関するその他の技術的、応用的な問題についての安全・安心に関する記載は一切無く、それらについて講義もあえて行わなかった。
DNAに関する教育をうけていない高校1年生に対し、事前アンケート→実習授業→事後アンケートを行い、実習授業が安全・安心に関しどのような影響を与えたか検証。
事前と事後のアンケートを比較すると、遺伝子組換え技術に関し安全な技術だと思う学生が増えた。また、基礎的な遺伝子組換え技術しか講義していないのに、遺伝子組換え技術は農業・食品分野にとって役立つ技術だと思う学生が増えた。さらに、遺伝子組換え食品を食べることに不安を感じている学生が減り、不安を感じる理由として、「安全性への確認が不十分だと思うから」が増え、「テレビや新聞で危険だと言っているから」が減った。このことから、学生が自分自身で遺伝子組換え食品の安全性について考えられる基盤ができたのではないか。
自分で手を動かし体験することで、高校1年生には難易度が高いテーマにおいても、自分で理解できるという印象をもたせることができたのではないか。また、実験によって判断するという、理学的立場を理解させることができたのではないか。
 委員からの主な意見は以下のとおり。
【委員】
授業を受けたことにより遺伝子組換えに対してどういう気持ちを持ち、それがどういうふうにその後の行動に結びついていったのか、1年後に調査してみてはどうか。
今回の結果をどう一般化していくのか。他の学校で同じ講義をした場合でも、同じような結果になるのか興味がある。
遺伝子組換え技術そのものは安全だが、その技術により非常に危険なもの(高毒性の病原菌等)ができることも、子供たちに教えて欲しい。
今までわからなかった技術を、自分なりに理解していくことで、不安感を感じなくなっており、また遺伝子組換え技術を学ぶことにより、その技術によって作られる遺伝子組換え食品に関しても一部不安感が取り除かれていくのは面白い。
安心への至り方は様々であり、何らかの形で専門家を信頼するということが介在せざるを得ないが、その際に科学技術リテラシーのようなものがどのような役割を果たすかを明らかにし、安心に至る過程や理念を構築していただけると良いのではないか。
安全・安心を、理科教育等の各論ではなく、総論として取り上げるべきではないか。

(2) その他
次回開催は、11月4日(火)10時〜12時を予定。


(科学技術・学術政策局  計画官付)

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