安全・安心な社会の構築に資する科学技術政策に関する懇談会(第6回)議事要旨

1. 日   時: 平成15年7月1日(火)   16:00〜19:00
2. 場   所: 社会技術研究システム・第1会議室
3. 出席者:
(委   員) 中島尚正座長、井上孝太郎委員、大野浩之委員、吉川肇子委員、
たか取健彦委員、竹内勤委員、中西寛委員、堀井秀之委員
(事務局) 井上科学技術・学術政策局次長、有本大臣官房審議官、
尾山政策課長、倉持基盤政策課長、伊藤計画官、内丸計画官付企画官

4. 議   題
(1) 各分野における現状と課題について
(2) 懇談会の中間とりまとめについて
(3) その他

5. 議事概要
(1) 各分野における現状と課題について
a. リスク・コミュニケーションおよび「危機管理とメディア」国際会議について
   「危機管理とメディア」国際会議の概要およびリスク・コミュニケーションとはどういったものかということについて、委員からプレゼンテーション。
   主な内容は以下のとおり。
リスク・コミュニケーションが信頼構築のために非常に重要であり、ethic communication(倫理的なコミュニケーション)が今後の科学の発展に必須。
キー・ワードは透明性とアカウンタビリティー。
リスク・コミュニケーションの定義:リスクについての、個人、機関、集団間での情報や意見のやりとりの相互作用的過程。
論点として、リスク論で扱えるものはあくまで定量的にとらえるものに限定すべきという立場と、定量化できないものも広義のリスクとして扱う立場の両極がある。
リスク対応として、(議論はあるが特にEUで)予防原則の観点が重要視されてきている。
リスク対応として、被害の重大性と被害の生起確率で定義されるようなものはrisk、hazardはわかるが生起確率がわからないものはuncertainty、hazardがわからなければ確率もわからないので、どちらもわからないものはignoranceと分類し、それぞれに対してprevention、precautionary prevention、precautionという個別の対応をするという考え方になりつつある。
アメリカは科学的(定量的)なリスク評価を政策決定の基礎するが、それに対してEUは科学的なリスク評価に加えリスク・コミュニケーション、社会価値を要素とする立場で違いがある。
EUにおける科学的関心事:1温暖化、2原子力と環境、3生物多様性、4SARS、5MMRワクチン、6遺伝子組み換え食品、7口蹄疫、8動物実験

b. 文明論から見た安心・安全社会
   文明論、国際政治学の観点からの安心・安全の近代以降の歴史的変遷や日本における課題等について、委員からプレゼンテーション。
   主な内容は以下のとおり。
今日の国際政治の観点からの安全・安全保障問題は、1ネットワーク型高度技術によるシステム統合リスク、人間のミスによるダメージ増大化ストレス社会、分節化された大衆社会、社会的階層化の問題、2工業文明の途上国への移転による大量破壊兵器の拡散、資源枯渇、環境破壊等の地球的問題化、3テロ、新しい病原菌・ウイルスなどの非対称的な脅威・リスクの顕在化。
様々なリスク、不安要因、安全保障上の脅威に対抗するため、グローバルな秩序が必要だというのが現在の世界的な流れ。従来の縦型規制からグローバルなものと地域、友好国、友好同盟関係、国家、地方、集団、個人のレベルで横型の重層的秩序でリスク分散・コントロールしていくというものになりつつある。
生活習慣教育の体系化、個人、社会、政府の関係を整理して、各々の責任範囲についての国民的コンセンサス・協働体系の再構築、一国主義的安全の基本的不可能性を前提とした重層的国際協力の意識が必要。
日本の21世紀的課題は、科学技術と自己制約的原理の間の関係をどうするかということ。従来は自然や環境が制約要因になっていたが、今後は人間自身が制約要因をどこに置くかということ考える必要がある。

(2) 懇談会の中間とりまとめについて
本懇談会の『中間取りまとめ』の作成に向けて、中間取りまとめのイメージについて事務局から説明後、議論を行った。その結果、各委員の意見を踏まえ、今後の中間取りまとめに反映していくこととした。
安全・安心への関心度に係るデータとして、「国民生活選好度調査」に見る安全・安心の位置付けについて、事務局から説明。
委員からの主な意見は以下のとおり。
【委員】
国民生活選好度調査を分析する上で、主要なイベントや普及度のような基礎データがあるとよい。
『中間取りまとめ』について、“信頼”が重要なキーワードであり、安全・安心な社会のイメージをどう描くか、信頼に基づく社会運営の姿、信頼をどう得るかが課題。本懇談会のとりまとめも、単に懇談会でまとめたというものではなくて、プロセスのアカウンタビリティー・透明性確保が重要で、然るべき方法論に基づき導かれる普遍的なものであることが望ましい。可能であればアンケート調査等により、専門家以外の一般の意識もとりまとめの中に盛り込めればさらによいものになるのでは。
安全・安心の科学技術分野について、大学の研究への期待も大きいと思うが、特に防衛・治安に係る研究開発は従来タブー視されてきたところがあるが現状はどうか。
→大学等での軍事研究は従来タブー視されてきたところがあるが、対人地雷探知・除去技術開発の例や安全・安心の新しい考え方もあり、整理したい。
議論のアカウンタビリティー、透明性確保が非常に重要である。

(3) その他
次回開催は、7月18日10〜13時を予定。




(科学技術・学術政策局  計画官付)

-- 登録:平成21年以前 --