「理数学生育成支援事業」(平成23年度採択大学)中間評価結果

 理数学生育成支援事業では、専門家や有識者により、事業の進捗状況や成果等を確認し、適切な助言や改善点の指摘を行うことで、事業の効果的な実施を図り、その目的が十分達成できるよう事業実施大学の体制・運営の適正を図ることを目的として、事業開始2年目である大学を対象に、中間評価を行うこととしています。
 このたび、平成23年度に採択された6大学を対象として、「優秀な理系学生の養成に関する事業」企画評価委員会において中間評価を行い、以下のとおり評価結果を取りまとめました。

1.中間評価方法

 「優秀な理系学生の養成に関する事業」企画評価委員会において、中間評価対象大学(平成23年度採択6大学)から提出のあった中間評価資料による書面評価及び面接を実施し、以下の4区分における評価(絶対評価)を行いました。

[評価の区分]

A 優れた成果が期待できる取組であり、計画通り推進すべき
B 一定の成果が期待できる取組であり、中間評価の所見に留意し計画を推進すべき
C 十分な成果が期待できない取組であり、計画の工夫や改善が必要
D 現状のままでは十分な成果が得られない取組であり、計画の大幅な見直し、又は終了が必要

2.中間評価結果

中間評価の結果は下表のとおり。

 

 大学数

 総数

 6

 A評価

 3

 B評価

 2

 C評価

 1

 D評価

 0

中間評価結果詳細

 実施大学

 評価

 企画評価委員会からの所見

 総評

 各大学の取組は、一部改善が望まれる部分があるものの、おおむね着実に実施されているものと判断できる。

 秋田大学

 C

  • 計画通りに実施できていない部分が散見される。
  • 国際的意識の向上の努力は評価できる一方で、学部2,3年次の学生にとっては要求が多い場面も見受けられる。個々の学生の状況をよく把握し、それぞれの学生に合った活動となることが望まれる。
  • 学科によってそれぞれの取組に温度差があり、教員間で目的意識の共有がなされていない。参加学生数が計画を下回っているなど計画から大幅に後退した印象を受けるが、基準に達しない学生からの申請は断るなど、プログラム参加への学生の選抜が機能していることは評価できる。今後は、早急に学内の意思統一を図り、多くの教員の協力を得ることで計画通りに実行していくことを求める。

 埼玉大学

 B

  • おおむね計画に基づいて取組が進められており、以下の点に留意しつつ、更に計画が推進されることを期待する。
  • 入門セミナー、基礎セミナーからはじまり、多くの対話型セミナーが用意され、そこから、アドバンスト実験・実習特別研究につながるようなシステムが設計されている。学生が無理なく学ぶことができるようなプログラムが設計されていることは評価できる。今後は、他の大学のモデルとなることを期待する。
  • アウトリーチ活動として高校への指導機会をつくっている点は学生の理解力を育成する上で効果的である。
  • 一方、本プログラムに参加している学生の様子が分かりにくく、参加学生の選抜も含めて検討することが望まれる。
  • スタディールームを開設し、4年生や大学院生を学習コンシェルジュとして配置していることは評価できるが、90分間という開設時間は短く、開設時間の検討が望まれる。
  • プログラムの立ち上がりが遅かったため、現段階では、今後の展開が分かりにくい。計画通りの今後の展開が望まれる。

 電気通信大学

 B

  • 当初計画はおおむね着実に実施されている。
  • UECパスポートセミナー、UECパスポートプログラム1、UECパスポートプログラム2が1年次から3年次まで体系的に組み立てられており評価できる。
  • 東京農工大学と協同で3・4年次学部学生を相互に交換して研究室でのトレーニングを実施する交流計画は魅力的な取組である。参加学生も関心を示しており、今後の取組が進展することを期待する。
  • 一方、「UECパスポート推薦入試」を新設したものの、受験者がおらず、他の大学の推薦入試に埋もれてしまっている。広報等の改善をすることにより、推薦入試の応募者の増加を求める。
  • 学生オープンラボを準備し、特任教員を滞在させているのは良い試みであり、支援期間を終えた後も継続されることが望ましい。
  • 一方、グローバルな能力育成に関する記述が申請時の所見にはあるが、実施されておらず、大学による自主的な取組の強化も含め、今後の更なる検討が望まれる。

 大阪大学

 A

  • 参加者数もほぼ計画通りであり、計画は順調に実施されている。
  • 自主研究の単位化、e-learningの立ち上げなど、学生の自主活動を促すような体制が整備されていることは高く評価できる一方で、参加学生の選び方には検討する余地がある。
  • 学生の行動や意向を踏まえ適度な自由度を与え、学生の力を引き出すことで教員側も過負荷にならないような効果を上げている。デルタシグマルームはその一例であり、今後更なるリーダーシップ人材の育成につながることを期待する。
  • フラタニティー組織の日本版をつくるという取組は他大学にとっても有効な取組となり得る。フラタニティー組織やオナープログラムは全国の大学に先駆けたモデルプログラムとして、更なる実績を積み上げることを期待する。
  • 一方、英語研修はあるものの、海外研修が実施されていない。海外研修の更なる検討が望まれる。

 岡山大学

 A

  • 計画はおおむね着実に実施されており、意欲的に取り組んでいる。
  • 特に、各学年からパイロット学生を選抜した積極性は高く評価できる。
  • プログラムの柱である「先取りプロジェクト研究」の中に、ステップアップ合宿などの宿泊型集中実験実習を組み込んだり、サイエンス・インカレ等での発表を原則としたりするなど、他のプログラムや国の政策とうまくリンクさせ効果が出ていることは期待できる。
  • 一方、「先取りプロジェクト研究」の5単位を卒業要件単位に含めなかったことなど、計画通りに進んでいない部分があり、今後の更なる取組の検討が望まれる。
  • 科学コミュニケーションや英語キャンプの開催など英語教育が成功しているように思われる。今後は、参加枠の拡大、海外研修の検討、海外研修と他プログラムとのリンクといった更なる取組が望まれる。

 広島大学

 A

  • おおむね計画通りに実施されており、成果を上げていることは高く評価できる。
  • プログラム実施担当教員が熱心に取り組んでおり、中でも研究エグゼクティブセミナーは、学生間及び教員との充実したやり取りをした上でレポートが作成されていること、講演会の企画を学生にさせるなど、学生の学習意欲や能力を伸ばそうとするための工夫やきめ細やかな指導がなされていることは評価できる。一方で、一部の教員への負担が過重になることが懸念される。
  • オックスフォード大学での海外実習は、単なる訪問だけでなく、合同セミナーも実施されており期待できる。
  • 1年次の研究導入型PBL、2年次の発展テーマ型PBL、研究エグゼクティブセミナー、3年次の特別コース専門実験実習というようにプログラムが体系的に組み立てられており、学生が自分の学習成果を見ながら学んでいくことができる優れたシステムであると思われる。一方で、学生が行う自主研究に対する取組が弱く、今後、学生がより早い時期から自主研究を開始しやすくなるような更なる取組が望まれる。

3.「優秀な理系学生の養成に関する事業」企画評価委員会委員

 (座長)

 坂口 謙吾

 東京理科大学総合研究機構教授

 

 今井 勝

 明治大学農学部農学科教授

 

 植田 利久

 慶應義塾大学理工学部機械工学科教授

 

 大澤 寛

 木更津工業高等専門学校電気電子工学科教授

 

 田口 哲男

 高崎市立高崎経済大学附属高等学校校長

 

 立川 仁典

 横浜市立大学大学院生命ナノシステム科学研究科教授

 

 中村 健蔵

 東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構特任教授

 

 東島 清

 大阪大学理事・副学長

 

 森田 康夫

 東北大学教養教育院総長特命教授

 

 渡邉 賢一

 一般社団法人元気ジャパン代表理事

 

 渡辺 美代子

 株式会社東芝イノベーション推進本部イノベーション推進部参事

 

 

(敬称略)

お問合せ先

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(科学技術・学術政策局基盤政策課)

-- 登録:平成25年05月 --