研究活動上の不正行為(捏造・盗用)の認定について

【基本情報】

番号

2019-01

不正行為の種別

捏造・盗用

不正事案名

研究活動上の不正行為(捏造・盗用)の認定について

不正事案の研究分野

ドイツ政治文化思想史

調査委員会を設置した機関

A大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

教授

不正行為と認定された研究が行われた機関

B大学
C大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成30年10月4日

本調査の期間

平成30年10月17日~平成31年3月15日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

平成31年4月26日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費助成事業

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容及び調査結果の概要
  本件は、平成30年10月掲載のWeb新聞記事により、教授が、A大学着任以前の研究活動・成果発表である著書及び論考に、資料捏造の疑いがあると示されたことに起端する。A大学はこの記事を、A大学への告発があった場合に準じて取り扱うこととし、予備調査を経て調査委員会を設置した。調査委員会において、関係者への聞き取り調査及び書面調査により不正行為の有無を確認した。調査の結果、研究活動における特定不正行為である「捏造」「盗用」が行われたものと認定した。

 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果について
(1)調査委員会による調査体制

   6名(内部委員3名、外部委員3名)


(2)調査の方法等
  1)調査対象
  ア)対象研究者:教授
  イ)対象研究活動:同教授がC大学在職中に執筆し、B大学に在職期間中の平成24年に発表した著書及び平成27年に発表した論考


  2)調査方法
  A大学調査委員会において、関係者への聞き取り調査及び書面調査を行った。具体的には、捏造が疑われている資料(本件の著書に登場する人物及びその者が著したとする論文、本件の論考に記述してある一次資料)の実在性について検証した。さらに、同教授が提出した資料に基づいて、書面調査及び同教授と関係者へのヒアリングを実施した。


(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
 1)結論
  当該著書・論考において、研究活動上の不正行為である「捏造」・「盗用」が行われたものと認定した。
 2)認定理由
  同教授の著書に登場する人物(及びその者が著したとする論文)は、実在を確認できず、同教授が捏造したものである。本件著書は実在しない人物及びその者が著したとする論文を基に書かれたものであることに加え、他者の文献の記述とほぼ同一の内容、同様の表現・記述が適切な表示のなく引用部分が10か所あることが明らかになった。
  また、本件論考については、被告発者が提出した資料は論証すべき事実と全く関連性がないものであった。同教授は、無関係の資料を基に想像で本件論考を著した。
  以上により、調査委員会は、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務の著しい懈怠(けたい)があったとして、特定不正行為(捏造・盗用)が行われたものと認定した。

 

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
 同教授の研究・成果発表当時に所属していた二大学の協力を得て科研費の執行状況を確認した結果、特定不正行為を認定した著書及び論考の捏造、盗用について、直接因果関係が認められる経費の支出はなかった。

◆研究機関が行った措置

1.競争的資金等の執行停止等の措置
 学長より平成30年11月21日に同教授に対し、科研費継続課題に係る研究費の執行停止を命じた。

 

2.出版社に対する勧告
 学長より平成31年3月13日付で、本件の著書及び論考を出版した出版社に対し、書籍の回収、論考についての訂正・おわびの掲載の措置を求める勧告を行った。

 

3.同教授に対する対応(処分等)
 令和元年5月10日に臨時理事会を開催し、同教授を懲戒解雇処分とすることを決定した。

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因

  同教授は、所属していた学会の学会誌の書評において、複数の著作についてこれまでにも学会員により出典不明の引用や不正確な注などの指摘を度々受けていた。度重なる指摘を受けていたということは、その研究姿勢を正す機会があったことを意味する。しかしながら、本件のような重大な不正の発生は、その機会が生かされることもなく、ひとえに同教授の研究者倫理の著しい欠如と研究不正に対する認識の甘さによるものである。

 

2.再発防止策

(1)本件に関する調査報告会を全学的に開催し、全専任教職員に対し調査結果の説明と質疑応答の機会を設けることとする。具体的で重大な不正行為の事例を理解することによって、研究倫理と研究不正に対する認識を更に深める。
(2)平成30年度より研究倫理e-ラーニング(eLCoRE)を専任教員に必修化し、受講した全員に修了証の提出を求めているが、少数の未受講者がいることを鑑み、これを徹底する。
以下は、令和元年度より段階的に行うことを予定している。
(3)学内の紀要、論集、年報等の査読、編集の厳格化を進め、不適切な行為の早期発見につとめる。
(4)研究データの保存と開示に関する学内ガイドラインの遵守を徹底する。
(5)学生に対する研究倫理教育及び指導を徹底する。

 

 

 

 

 

◆配分機関が行った措置

 科学研究費助成事業について、捏造・盗用と直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかったため、返還を求めるものではないが、捏造・盗用が認定された書籍は科学研究費助成事業の成果として執筆された書籍である。このため、資金配分機関である日本学術振興会において、資格制限の措置(令和2年度~令和8年度(7年間))を講じた。

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)