研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について(2017-01)

【基本情報】

番号

2017-01

不正行為の種別

捏造、改ざん

不正事案名

研究活動上の不正行為(捏造・改ざん)の認定について

不正事案の研究分野

分子細胞生物学

調査委員会を設置した機関

大学

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名

教授、元助教

不正行為と認定された研究が行われた機関

大学

不正行為と認定された研究が行われた研究期間

告発受理日

平成28年9月1日

本調査の期間

平成28年10月13日~平成29年5月31日

不服申立てに対する再調査の期間

報告受理日

平成29年6月5日

不正行為が行われた経費名称

科学研究費補助金、グローバルCOEプログラム※、若手研究者の独立的研究環境整備促進※

※捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出はなかった

 

 

【不正事案の概要等】

◆不正事案の概要

1.告発内容の概要

   本件は、大学教授を責任著者とする7報の論文について、捏造及び改ざんの疑いがあるとして匿名による申立てがあったものである。この申立てを受け、大学規則に基づき、調査委員会を設置のもと部局調査を依頼し、その結果を踏まえ、対象研究者の聞き取り調査及び書面調査により事実関係の調査を行った。  

 

2.本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)調査委員会による調査体制
  10名(内部委員4名、外部委員6名)

 

(2)調査の方法等
 1)調査対象
  ア)対象研究者:教授、元助教
  イ)対象論文
    申立者から不正行為の疑いがあるとの指摘があった論文7報
 2)調査方法
  申立者から指摘があった論文7報について、部局調査で収集した資料、論文の共著者から提出を受けた資料での書面調査及び対象研究者からの聞き取り調査を行った。

 

(3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
  申立者から研究活動における不正行為の疑いがあると指摘があった7報の論文に関し、調査委員会が実施した調査結果を踏まえた結論は以下のとおりである。

(結論)
 調査対象論文7報のうち5報16図について、研究活動上の不正行為である「捏造」及び「改ざん」があったと認められた。

(認定理由)
 認定した不正行為は、次のとおりである。

 1) 図に含まれる12のグラフのうち、2つのグラフについて、実験が行われていなかったにもかかわらず、実験を行ったかのような結果を示すグラフが作成され論文に投稿されたもの 1件(「捏造」と認定)
 2) 例示写真(画像)に用いた酵母株が、定量に用いた株と異なっているもの(論文にはその旨の記載はなく、同一株による結果であるかのように読める。) 2件(「捏造」と認定)
 3) 異なる標本処理及び画像取得条件で取得された画像が比較されているもの 3件(「捏造」と認定)
 4) 比較対象となるバンドやスポット等が消去されているもの 7件(「改ざん」と認定)
 5) 比較した2つの画像のシグナル強度について、論文の図作成時に意図的に片方の群のみシグナル強度を操作したもの 3件(「改ざん」と認定)

 

(4)その他
  今回申立てがあった教授を責任著者とする7報の論文について調査を行ったが、同教授の7報以外の論文についても、今後追加調査を実施していく。
  なお、 5教授15報の論文についても申立てがあり調査を行ったが、不正行為はなかった。

 

3.認定した不正行為に直接関連する経費の支出について

   捏造及び改ざんを認定した5報の論文は、文部科学省及び日本学術振興会からの科学研究費補助金(特別推進研究)より論文投稿料が支出されていた。それ以外の論文の作成過程において、当該補助金を含め、その他の経費においても、直接の因果関係が認められる経費の支出はなかった。

 

◆研究機関が行った措置

論文の取り下げ・訂正

   研究活動の不正行為が認定された論文5報について、取下げ又は訂正の措置を適切に講じるよう勧告を行った。

 

◆発生要因及び再発防止策

1.発生要因
   今回の不正行為については、以下の要因が挙げられる。
  (1)研究室において、実験ノートの作成や保存がほとんど教育されておらず、実験の記録としては不十分な実態があった。
  (2)論文のメーセージ性を高めるために加工は積極的に行わなければならないという誤った認識のもと指導・教育を行っており、不適切な加工が常態化していた。
  (3)倫理セミナーにおいて、過度の加工についての一般的な問題点が何度も指導・教育されていたが、倫理セミナーでの指摘を真摯に受け止めていなかった。

2.再発防止策
   過去の研究不正事案発生を受け、大学では平成26年3月に「研究倫理アクションプラン」を策定し、研究倫理意識の醸成、研究倫理環境の整備のための取組を大学として実施してきた。
   また、平成25年2月に研究所のサーバーにおいて投稿した論文データの一括管理等の取組を開始してきた。
   こうした取組にも関わらず、再び不正事案が発生してしまったことについては、真摯に受け止め、今後、教職員・学生など大学の全構成員に対して、あらためて研究倫理についての研修・教育を徹底し、今後このような事態が生じることのないよう、全学を挙げて取り組む所存である。
 さらに、今回の事案の徹底した検証と、組織の在り方、大学としての新たな再発防止策について検討していく。

 

 

 

 

 

◆配分機関が行った措置

  科学研究費補助金について、捏造・改ざんと直接的に因果関係が認められる経費の支出があったため、資金配分機関である文部科学省及び日本学術振興会において、経費の返還を求めた。

 また、不正が認められた論文は、科学研究費補助金、グローバルCOEプログラム及び若手研究者の独立的研究環境整備促進の成果として作成された論文であることから、当該資金への申請及び参加資格の制限の対象となる。このため、資金配分機関である文部科学省及び日本学術振興会において、資格制限の措置(教授:平成30年度~平成36年度(7年間)、元助教:平成30年度~平成33年度(4年間))を講じた。

 

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)