研究活動上の不正行為(盗用)の認定について(2015-05)

【基本情報】

番号

2015-05

不正行為の種別 

盗用 

不正事案名 

研究活動上の不正行為(盗用)の認定について 

不正事案の研究分野 

経営学

調査委員会を設置した機関 

大学 

不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名 

准教授 

不正行為と認定された研究が行われた機関 

大学 

不正行為と認定された研究が行われた研究期間 

 -

告発受理日 

平成26年9月19日  

本調査の期間 

平成26年11月19日~平成27年2月19日 

不服申立てに対する再調査の期間 

なし 

報告受理日 

平成27年11月12日

不正行為が行われた経費名称 

なし 

 

【不正事案の概要等】 

◆不正事案の概要 

  1. 通報内容及び調査結果の概要
       本件は、平成26年7月に准教授(以下、「被通報者」という。)の論文4編が専門職課程修了生(以下、「修了生」という。)3名の専門職学位論文等の著作権を侵害している旨の通報を受け、予備調査(同年8月~9月)の後、学術研究倫理委員会(以下、「倫理委員会」という。)に調査委員会を設置し、専門職学位論文との比較調査、被通報者及び修了生からの聞き取り調査等により事実関係の調査を行ったものである。調査等の結果、著作権の侵害(盗用)が行われたものと認定した。

    【通報者から申立てのあった不正の様態及び特定不正行為であるとする理由】
    (1)不正の態様
       被通報者が執筆・公表した論文4編について、修了生3名の専門職学位論文及び共著論文3編(うち2編は未公表)の著作権を侵害(盗用)した疑い。
    (2)研究活動における不正行為であるとする理由
       被通報者が執筆した論文と修了生の専門職学位論文及び共著論文との間に同一ないし類似する箇所が存在し、かつ、その出典を明示していないこと。
     
  2. 調査の体制、調査方法、調査結果等について
    (1)調査委員会における調査体制
       5名(内部委員4名、外部委員1名)
    (2)調査の方法等
       1)調査対象
         ア)対象研究者:准教授
         イ)対象論文:通報者から著作権の侵害(盗用)の疑いがあるとの指摘があった論文4編
    ※『日本経営学会誌』2編、他2編
    2)調査方法
       被通報者が執筆・公表した論文4編と被通報者が指導した修了生3名の専門職学位論文及び共著論文3編(うち2編は未公表)とを比較調査するとともに、被通報者及び修了生3名からの聞き取り調査、被通報者から提出された上申書及び被通報者代理人である弁護士から提出された意見書の検討を行った。
    (3)本事案に対する調査委員会の調査結果を踏まえた結論
       通報者から著作権の侵害(盗用)の疑いがあると指摘があった被通報者が執筆・公表した論文4編に関し、調査委員会が実施した調査結果を踏まえた大学の結論は以下のとおり。

    (結論)
       大学の「研究活動に係る不正防止に関する規程」で定義する研究活動における不正行為である「著作権の侵害」(出典を明示又は明確にしないで、他人の作成したデータや文章を引用し、又は、要約を作成することその他他人が発表した試資料等を盗用すること)が行われたものと認定した。

    (認定理由)
      1)被通報者は、専門職学位論文及び共著論文の著者である修了生の許諾を得ずに、自己の単著論文として執筆し公表していること。
      2)被通報者が執筆・公表した単著論文には、修了生の専門職学位論文及び共著論文における図表(各論文につき複数箇所)・記述(各論文につき複数箇所)と同一ないし類似する箇所が存在し、かつ、その出典が明示されていないこと。
     
  3. 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
       「著作権侵害(盗用)」を認定した論文に関する研究過程において、競争的資金等の経費の支出はなかった。

◆研究機関が行った措置 

  1.  競争的資金等の執行停止等の措置
       競争的資金等の経費の支出はなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。
     
  2. 被通報者に対する大学の対応(処分等)
    調査委員会による不正行為に関する調査報告書を受け、平成27年9月に教員の表彰及び懲戒に関する規程に基づき査問委員会を設置し、被通報者の懲戒事由の該当性等について審議し、同年11月13日付で被通報者に停職4か月の懲戒処分を課した。

◆発生要因及び再発防止策 

  被通報者が論文の執筆に際して、他の研究者や学生の成果に対する使用許諾や適切な引用手続等に関する被通報者の認識不足から生じたことによる。
   大学においては、平成27年度より「学術研究倫理に係るガイドライン」及び「研究活動に係る不正防止に関する規程」に基づき、所属するすべての教員・研究者に対して「研究倫理に関する教育プログラム」を実施しており、独自に作成した動画コンテンツやe-ラーニング講座の受講を義務づけ、理解度確認のためのテストを課すとともに、「研究倫理に関するセミナー」を実施しているところである。
   大学は今回の事案を真摯に受け止め、研究倫理教育を専門とする教員の増員を含めたプログラムの充実を図るとともに、具体的なケースに即した実践的な研究倫理教育、例えば、教員が指導をした学生の研究業績を自己の研究の一部として使用する際に厳守すべき研究倫理上の原則を徹底するなど、教員・研究者及び学生に向けた研究不正防止への取り組みを更に強化していく。また、これらの大学全体の取組に加え、被通報者の所属部局では、所属教員全員に対して研究不正防止の特別プログラムを企画し実施する。 

 

◆配分機関が行った措置 

  本件は競争的資金による経費の支出がなく、かつ平成25年、平成26年に不正が行われた事案であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金の返還並びに研究者に対する競争的資金への申請及び参加資格の制限を行わない。  

 

お問合せ先

科学技術・学術政策局研究環境課

研究公正推進室
電話番号:03-6734-3874
メールアドレス:jinken@mext.go.jp

(科学技術・学術政策局研究環境課研究公正推進室)