研究活動上の不正行為(盗用)について(2015-06)
【基本情報】
番号
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2015-06
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不正行為の種別
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盗用
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不正事案名
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研究活動上の不正行為(盗用)について
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不正事案の研究分野
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環境学
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調査委員会を設置した機関
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大学
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不正行為に関与した者等の所属機関、部局等、職名
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准教授
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不正行為と認定された研究が行われた機関
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大学
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不正行為と認定された研究が行われた研究期間
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平成16年4月30日(論文投稿日)
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告発受理日
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平成27年3月30日(発覚日)
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本調査の期間
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平成27年4月13日~平成27年5月22日
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不服申立てに対する再調査の期間
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なし
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報告受理日
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平成27年12月1日
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不正行為が行われた経費名称
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なし
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【不正事案の概要等】
◆不正事案の概要
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- 研究不正の発覚と調査結果の概要
准教授を第1著者とする「環境システム計測制御学会誌」掲載論文に、他者の論文3編から論文内容を盗用した疑いがあることが、大学の教員昇格審査の過程で発覚し、大学の調査委員会及び研究倫理委員会において、関係する研究者への聞き取り調査等により事実関係の調査を行った。
調査の結果、研究活動における特定不正行為である「盗用」が行われたものと認定した。
【発覚した研究不正の態様及び特定不正行為であるとする理由】
(1) 不正の態様
准教授を第1著者とする「環境システム計測制御学会誌」掲載論文が、他者の論文3編から論文内容を盗用した疑い。
(2) 研究活動における特定不正行為であるとする理由
調査対象論文において、3編の他者の論文から適切な引用表示なく、32箇所にわたって本文及び図表をそのまま、又は一部を修正し盗用していること。
- 本調査の体制、調査方法、調査結果等について
(1)「調査委員会」における調査体制
5名(内部委員5名※)
※文部科学省の作成した「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」に基づく学内規程が未整備であったため、学長から准教授の所属学部長に対して学内有識者で組織する調査委員会の設置を指示。
(2)調査の方法等
1)調査対象
ア)対象研究者:准教授(第1著者)
非常勤講師(第2著者)
その他著者2名
イ)対象論文等:「環境システム計測制御学会誌」掲載論文1報
2)調査方法
教員昇格審査過程で盗用の疑いが発覚した論文について、盗用された疑いがある論文との比較による調査を行うとともに、盗用の疑いが発覚した論文の著者について、ヒアリング調査等を実施した。
(3)本事案に対する調査委員会及び研究倫理委員会の調査結果を踏まえた結論
教員昇格審査過程で盗用の疑いが発覚した調査対象論文に関し、大学の結論は以下のとおりである。
(結論)
調査の結果、調査対象論文について、「盗用」(他の研究者のアイディア、分析・解析方法、データ、研究成果又は用語を当該研究者の了解若しくは適切な表示なく流用すること)が行われたものと認定した。
(認定理由)
・調査対象論文において、3編の他者の論文から適切な引用表示なく、32箇所にわたって本文及び図表をそのまま、又は一部を修正し流用していること。
・第1著者の准教授については、当該論文を第2著者に任せて本人は作成に関与せず取りまとめだけを行ったと主張していること、当該論文に係る研究記録等が存在しないことから、論文盗用に直接関与したとする確証には至らなかった。しかしながら、論文の盗用に関与していないとしても、研究記録等が存在せず、内容を確認できていない論文の第1著者として論文投稿をする行為が問題であり、さらに、論文に関係のない者を著者に加えたことを含め、盗用が行われた論文の第1著者として責任があると判断する。
(第1著者以外の著者の関与について)
・第2著者の非常勤講師については、本人は論文の作成に関与していないとの主張を行ったが、第1著者との査読審査における電子メールのやり取りから、当該論文の作成及び論文盗用に関わった疑いがあり、調査委員会及び研究倫理委員会ではヒアリング時に主張した内容に疑念はあるが、盗用を行った確証を得ることができず、盗用に関与したと判断するに至らなかった。
その他の著者2名については、論文盗用に関与していないと判断した。
- 認定した不正行為に直接関連する経費の支出について
当該不正行為に関連する競争的資金の支出はなく、また、大学の基盤的経費についても当該不正行為に関連する支出はなかった。
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◆研究機関が行った措置
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- 競争的資金等の執行停止処分等の措置
競争的資金等直接の因果関係が認められる経費の支出はなかったことから、執行停止等の措置は講じていない。
- 第1著者に対する大学の対応(処分等)
調査委員会及び研究倫理委員会の不正行為に関する調査報告書を受け、就業規則に基づく懲戒委員会を設置し、当該論文の第1著者である准教授に対する不利益処分事由の該当性について審議した結果及び大学としての対応は以下のとおりである。
審議の結果を踏まえ、大学は、当該論文の第1著者である准教授を「降格」相当とすることとした。
なお、懲戒委員会の審査途中において、第1著者である准教授から、退職願が提出されたため、大学としてこれを受理した。
また、盗用が認定された論文の第2著者である非常勤講師については、当該不正行為への関与とは別に、調査過程において履歴事項及び研究実績に詐称の疑いが生じ、別途、経歴詐称について調査を行ったところ履歴事項及び研究業績に詐称が判明した。その後、当該人から退職届が提出されたため、大学としてこれを受理した。
- 論文の取下げ
不正行為が認定された1編の論文について、既に第1著者である准教授の申出により既に取り下げられたことを確認した。また、盗用元の3編の論文の著者及び機関に対して、発覚した研究活動における不正行為について説明し、謝罪を行った
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◆発生要因及び再発防止策
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大学においては、研究倫理規程は平成24年4月に施行されたが、それまでの研究活動における不正行為については、研究者個々の良識に任せ、大学として学内における研究倫理に対する取り組みが行われていなかったことが要因である。
また、研究データの保存について学内の取決めがなかったことが、調査における細部にわたる原因の究明ができなかった要因であると考える。
大学は、平成27年度より、競争的資金による研究費の配分を受けている研究者及び競争的資金の管理を行う事務職員に対して説明会を実施するとともに、学内研究者全員と競争的資金の管理を行う事務職員に研究倫理に係るEラーニング教育の受講を義務付けた。
さらに、今回の研究活動における不正行為があったことを真摯に受け止め、「研究活動における不正行為への対応に関するガイドライン」(平成26年8月26日、文部科学大臣決定)に基づき、学生を含む学内研究者全てに対する研究倫理教育の実施や研究データの保存についての取決めを含む、更なる学内規程の整備を行い、新たに研究活動における不正行為防止を含む業務を行う研究推進部署の設置を検討し、規程に定めた研究活動における不正行為を起こさない取組を着実に実施していく。
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◆配分機関が行った措置
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本件は競争的資金による経費の支出がなく、かつ、平成15年に不正が行われた事案であることから、研究機関及び研究者に対する競争的資金の返還並びに研究者に対する競争的資金への申請及び参加資格の制限を行わない。
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科学技術・学術政策局研究環境課
研究公正推進室
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